開催期間の2日間、会場内のプレゼンステージで行われたセミナーについて少しずつですがご紹介いたします。
「この商談会も3年目を向かえ益々賑わいを見せ元気になってきていますが、水産加工業の復興に向けては、短期的な取組みだけでなく中長期の取組みが重要となります。是非、本セミナーを通じ意見交換や情報収集を行い、水産加工業の皆様の販路回復に役立てていただきたい。」という(一社)大日本水産会専務理事重義行氏の挨拶により、セミナーが始まりました。
司会:東北大学大学院教授 片山知史氏(以下、片山氏)
パネリスト: 株式会社ヤマヨ 代表取締役社長 町田健司氏(以下、町田氏) 株式会社國洋 代表取締役社長 濱田浩司氏(以下、濱田氏) 株式会社八葉水産 代表取締役社長 清水敏也氏(以下、清水氏) 福島県漁業協同組合連合会 代表理事会長 野﨑哲氏(以下、野﨑氏)
片山氏:震災から 6 年が経過し、資源・生産手段・労働等徐々に整う一方で、人口流出の問題や町をどのように維持していくか等の課題がある中、ご出席の各パネリストより、ここに至る経緯、現状、取組み、将来展望についてご報告いただきたい。
町田氏:八戸は全国特三13漁港のひとつで、H.20年に「八戸漁港流通構造改革拠点漁港整備事業」を水産庁より承認を受け、機能集約と衛生の高度化をすすめている。H.23年の震災の後、H.25年から八戸市と業界で「水産業復興ビジョン」を策定し、平成25年~27年が再生期、平成28年~32年が創造期とし現在、創造的復興に計画的に取組んでいるのが、八戸の現状である。 水産加工業の6年目の現状としては、八戸は、銚子、茨城地区と同様に震災の被害を受けたが修繕対応で回復は早く国内販路もそれほど失わなかった。
一方、三陸(岩手、宮城、福島)の水産加工業者は甚大な被害を受けたが、その後冷蔵庫や最新の設備増強により、結果として生産能力はあがり高次加工も可能になった。全体として共通していることは、設備は復旧となったが、働き手(労働力と頭脳を含め)がいなくなった。又、水産食料品製造業は食品業界の中でも、他の畜産食料品製造業などと比べても小規模業者が多く苦労しているのが現状である。 水産業は水揚げ高が減っている中で、打開するために国の成長戦略の一環として輸出に着目している。ユネスコの世界無形文化遺産に和食が登録されてから、海外の日本食ブームも継続しているが、海外では日本の原料に頼らない日本食が増えている為、水産物については、日本産の原料を使用せず現地調達しているものが88%であり、日本からの輸出はまだ6%弱となっている。逆に言えば、日本産の伸びしろは、90%以上あるということである。
今後の水産業の課題として、
このような状況下、青森県・八戸地域の可能性としては、次の3点をあげることができる。
濱田氏:私の会社は岩手県大船渡市にあり、震災の時は会社が壊滅状態で工場を建て直さなければならなかった。ガレキ撤去や後片付けをしながら、新しい工場のレイアウトを作り、主要取引先の生協さんや大手水産会社へ確認を取り、 グループ補助金を使って再建した。7月末には会社をオープンできたが、工場審査等で実際の販売は翌年の1月となった。 工場再建の後は、人材の問題。海外からの実習生の次の課題としては就労ビザで人を雇うことである。そのためには一定の基準があり、ワーカーとしては雇えない。現在品質管理ということで、ミャンマーから2名受け入れている。
優秀な人材で、現在日本のパソコンを使って商品カルテを作るまでになっている。 次の手として、労働者不足の中、当社では海外の合弁企業による人材集めを進めている。海外企業に20%出資するか、出資を受け入れるかすると海外の企業と合弁企業ができ、海外の企業の社員を企業内転勤として、受け入れることができると聞いている。ミャンマーには国にその法律が無くできず、ベトナムで検討しているが出資金の問題等もあり、今後幅広く調査を進めて行く予定である。 3番目の問題として、昨年の原料不足の問題がある。当社はイカ加工がメインであるが、昨年は不漁でイカが3倍に値上がりした。このため、今年の1月より生協さんのイカ製品は全部休売となってしまった。このような状況に対応するため、一昨年から、本社工場に油調ラインを入れ徐々に野菜の天ぷらの生産を始めていたが、この事業を拡充する。ベトナムのオクラ・カボチャの天ぷらから、岩手県産のゴボウ、又今年から国産カボチャをすすめる。野菜の方は物が見え、水産物は数量が読めないこともあり、引き続き野菜の方にも注力していきたい。又、加熱調理品について、コンタミの問題に対応し、肉・野菜・魚の加工を進めていきたい。 今後は、一部野菜の自家栽培や魚の陸上養殖等にも取組んでみたい。又、新規事業として、国のコンソーシアム事業の補助金を受けて、大量に取れ価格の安いイサダを活用し油をとる事業などにも取組んでいく計画である。
清水氏:私の会社のある気仙沼市は、なんといってもカツオの水揚げが21年間連続日本一で現在22年連続に向け頑張っているところ。その他、めかじき、生鮮カツオ、サメ等のほか、カキ・ホタテの養殖等も盛んです。気仙沼市の水産は、次の点から「日本一発達した水産クラスター」といえる。 ・世界の海で活躍する漁船漁業の基地 ・四季折々の沿岸漁業と無給餌養殖 ・漁業を支える関連産業群 ・付加価値を高める水産加工業
気仙沼市の産業の特徴としては、水産加工品の割合が、8割強(震災前)であることで、震災の被害が 大きく(被災事業所で約80.7%)、主力産業である水産加工業の創造的再興が必要となった。 産業再生として、
気仙沼の水産業の問題点として、資源の減少、就業者の減少、消費者の魚離れ、人手不足、販売先喪失などをあげることができる。 これらの課題に対し、気仙沼市では、
当社の取組みとしては、キリンビールさんの絆プロジェクトの中で協同組合と一緒になって、次のようなリアスフードの取組を進めている。①リアスフード発信の取組・・・三陸・リアス・気仙沼から、リアスフードという新しい食のブランドを発信、②高校生リアスフードグランプリ・・都内と気仙沼の高校生による、気仙沼の食材を使った新たなレシピ開発コンテストと商品化など。③拠点活動・・・東京と気仙沼で採用した人材を相互に2拠点で働いてもらい、人材交流を進めている。 又、「おいしい東北」で、当社の「みちのく塩辛」が最優秀賞をとり量販店等へ販売している。海外展開の取組としては、マレーシア・ベトナム・米国・台湾等に出かけ、食に対する違いを調査し日本の食を海外マーケットへ展開する取組も行っている。これらの取組をしながら、さらに気仙沼を震災前よりもっと良くしてゆきたいと思う。
野﨑氏:福島の震災前の漁業は、16地区の魚市場を動かしながら形成されていた。沿岸業を中心に200種にのぼる多彩な魚介類の水揚げがあった。これが震災により、すべての魚市場が休業となり、現在は小名浜、相馬の魚市場と、磯部の共同加工施設の3ヶ所しか復旧していないが、これは、原発事故にともなう試験操業・生産能力にあわせて徐々に復旧を進めているためである。各行政等との協力を得ながら他県と比べると回復は比較にならないが、着実な歩みを進めたいと思っている。
現在、国の緊急時モニタリングにおける厚生労働省からの出荷制限指示については、右の11種である。海洋の汚染の安定から徐々に制限品目は減少し、現在の11種の状況になった。福島は、この放射能汚染による影響で漁業の停止をして、どのように再開してゆくかということを考えて来た。 試験操業の計画は、県が行う緊急時モニタリング検査で対象魚種の安全性を確認し、多くの段階を経て慎重に協議され、決定される。水産庁や福島県等の協力を得ながら、漁業者の企画のもとに③福島県地域漁業復興協議会において、漁業者代表、消費・流通代表、有識者、行政機関により協議し福島県の海の状況を論理的に考えて、試験操業計画を検討し④県下漁業協同組合長会議に諮問し最終決定を行う。 これが、現在行われている福島県の沿岸漁業の根本である。
安心して食べていただく為に、水揚げ日毎に各市場で漁協の自主検査を実施。福島県漁連では、自主基準を50Bq/kgに設定し、市場の検査で半分の25Bq/kgを超えた場合には、水産試験場の検査機器で精密検査を行う体制をとっている。尚、H.24年7月から始まった試験操業でこの基準にかかったもの は1魚種のみで、あとは順調に 25Bq/kg未満となっている。厳重に検査しているので、基準外のものが市場に出ることはない。当初3種類から開始した試験操業対象魚種は、H.29年3月末現在では97種まで増加して、現在では出荷方針を今までの追加方式から、「出荷制限魚種を除く全てを対象にする」に変更した。
現在の沿岸漁業の試験操業の海域も、当初の海域から順次漁場を拡大し、原発半径10km内を除く福島全域までとなった。又、試験操業の漁獲量は着実に増加しているが、操業日や操業回数等制約された中で進めているため、H.27年とH.28年の漁獲量は、震災前10年平均の6%、8%とまだ低い水準にある。この辺を、なんとか級数的に延ばしていきたいと思っている。流通の方々とお付き合いする中で、安定供給という重要な部分になると思うので、H.29 年度は16%に伸ばしたいというのが私どもの目標。現実的な風評被害は、これから数量が増えた中で見えてくると思う。今後、漁業の確立とともに流通関係の再構築が我々の課題だと考える。尚、本日のお話しは沿岸漁業の話なので、福島を利用される沖合漁業についてはどの魚種も異常がなく、福島の約3割を占める他府県からの漁業者の福島への水揚げ等を進めていく中で、福島の魚を今後とも宜しくお願いしたい。
片山氏:私から、まとめにかえて、3点お話をしたい。
①共通したことだが、輸出について海外市場の評価とどのような戦略ですすめていくか。今日は話が出なかったが、イスラム圏のハラル対応もHACCPのみならず、大きな道具となってくる。これは被災地のみならず日本全体の戦略となってくる。 ②被災地に関連するが、魚が取れなくなってきた。魚種が変化してきたこと。去年一昨年くらいから、サンマ、スルメイカが不漁で、片口イワシも取れない。すぐには、もどってこない。その代わり、マイワシがとれるようになった。被災地の流通加工業者はこのマイワシをどう生かしていくかが、喫緊の課題といえる。 ③海外での日本食ブームですが、現状は海外産地の食品で海外加工しているケースが多いということだが、是非地元の東北の原料を東北で加工し、世界へ輸出し拡大して欲しいと思う。
平成29年6月6日、東北復興水産加工品展示商談会2017のプレゼンステージにおいて「水産物輸出に求められる認証~HACCP/MEL」と題したセミナーが開催されました。ここではHACCPについてのレポートをまとめます。山口講師より、「水産物輸出のパスポート」とされ、昨年厚生労働省が義務化に踏み切ったHACCP認証制度についての現状と展望について、お話頂きました。
大日本水産会の左記連絡先までお問い合わせください。
平成29年6月6日、東北復興水産加工品展示商談会2017 のプレゼンステージにおいて「水産物輸出に求められる認証~HACCP/MEL」と題したセミナーが開催されました。ここではMELに焦点を当てます。垣添講師より、資源の持続的利用の観点から、東京オリンピック・パラリンピックの選手村で供給される水産物の調達基準として選定されている「マリン・エコラベル・ジャパン」についてお話を伺いました。
水産エコラベルは資源を守りながら漁業は共存できることを示した。
①水産エコラベルに対する日本の認識
②日本および日本周辺の水産資源状況
③持続可能な水産物とは?
④マリンエコラベル協会の考え方
以上により、マリン・エコラベル・ジャパン協議会では、生産者・流通・外食・国民・消費者を巻き込み、日本の水産業の新たな発展に資する水産エコラベルを目指す。
① マリンエコラベル協会のイメージ図
② 認証の種類
③マリンエコラベル協会の認証フロー
④今後のスケジュール
⑤詳細はこちらまで
平成29年6月6日、東北復興水産加工品展示商談会2017 のプレゼンステージにおいて「魚と放射能 水産物の放射能調査について理解を深めるために」と題したセミナーが開催されました。本セミナーは、「東日本大震災から6年が経過し、海産物中の放射性物質は基準値を超えるものは検出されない状況にあります。一方で、見えない放射線への不安感は払拭されず、風評被害も終結に至っておりません。今回は、6年間の調査結果と基準値や放射線リスク等の説明を通じて、水産物の安全性について理解を深めること」を目的に開催されました。
司会:東京大学教授 八木信行氏(以下、八木氏)
パネリスト: 女川水産加工研究会 会長(株式会社高政 社長室長) 髙橋正樹氏 日本海洋資源開発株式会社 6次産業推進部部長 原山徹夫氏 株式会社阿部長商店 代表取締役社長 阿部泰浩氏 ほやほや学会 会長 田山圭子氏 株式会社シーフーズあかま 代表取締役社長 赤間俊介氏
八木氏:水産物・水産加工品の販路回復・開拓は大変重要な課題だと感じている。被災地の状況調査をして感じたのは、水産はトータルな産業、すなわち漁船・加工場や市場・販路の全てが揃っていないと回らないということをあらためて気がついた。皆様からは、6年間の取組みや感じたことを発言して頂きたい。
塩竃市でアカモクをはじめとする海藻を扱っている。復興のための取り組みとしては、大きく下記の5つ。
総括:行政区画を超えた横の繋がりが大切だと思っている。
水産加工を主とした水産事業・観光事業を行っている。震災によってほぼすべての水産事業所が壊滅的な被害を受け、工場は再開したものの販路喪失などの大きな課題に直面した。そこで震災前は従来の生鮮・冷凍品が中心だったが現在は1,2次加工品にも取り組んでいる。 取組みは大きく3つのステップになっている 自社営業体制の確立⇒高付加価値商品の開発⇒海外への販路拡大
女川は現在人口が震災前の3分の2 になるなどの厳しい現状の中、復旧期間中の販路崩壊などで基幹産業である水産業が壊滅的な被害を受けた。 髙政としては4月に営業稼働を再開、震災前から計画していた万石工場を9月に稼働し、地域支援として以下のようなプレスリリースを発表した。
また、地域一体で女川の水産加工品をブランド化することで、協業の意識を持って「女川を売る」という意識で街全体をハッピーにし、自社製品も売るということをやっている。
今回は、岩手での鮎の養殖の取組み経験を踏まえて2015 年から取り組んでいる岸和田支店で浜の機能再編広域プランによる大阪・泉州の取組みを説明する。岩手では、高品質な商品を作ることに成功したが、販路の獲得は不十分であった。そこで、産地からブランドが出来るのではなく、商品を預かって消費者・市場が認め、リピートがついて初めて「ブランド」に近づくのではないかという観点で販売に務めた。「泉州鮮魚」のブランド作り・スラリーアイスや航空物流を利用した「環境漁業の付加価値化による差別化」だけでなく学校給食などと絡めた「魚食普及プログラム」を通して地域貢献・販路拡大に取り組んでいる。 震災後の取組みで学んだことを活かして、今後も邁進していきたい。
ほやほや学会というホヤの認知度向上・消費拡大を目指すネットワークで、以下のような3段階のアプローチを行っている。
八木氏によるまとめ様々な肯定的取組みの話を聞くことが出来た。成功要素は大きく3 つになると考えられる。
「復興庁は水産加工品の輸出8つの先進的なプロジェクトを支援してきました。被災地の水産には国際的な競争力がありますが、輸出にはいろいろなハードルがあります。それを突破するきっかけとしてモデル事業が有効に機能することは大変良いことだと思います。水産加工業の再生につながることを期待しております」という復興庁・西脇隆俊事務次官の挨拶によりセミナーが始まりました。
司会:小谷あゆみ氏 エッセイスト/フリーアナウンサー 復興水産販路回復アドバイザー
講評者:佐野雅昭氏(以下、佐野氏) 鹿児島大学 教授(鹿児島県水産物等輸出促進協議会 会長) 豊田哲也氏(以下、豊田氏) 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)農林水産・食品部 水産品支援課 課長 大島 肇氏(以下、大島氏) 株式会社RPI 執行役員(復興水産販路回復アドバイザー)
新しい水産業を作るという意識を持った三陸地域の仲間達と連携三陸ブランドを世界に広める活動をしている。 本プロジェクトではブランドストーリーをしっかり作るために、三陸ブランドのアイデンティティとシンボル(カキ・ワカメ)を決め、輸出事業に取り組んでいる。三陸ブランドをタイ・バンコク・香港などの商談会参加・商社ツアーを通してアピールし、カキ・ワカメだけでなくホタテ・アカモクなども合わせて成約をした。 商流は出来たが「三陸」というブランドの海外での認知度はほとんどゼロ。 今後ともしっかりとブランドを打ち出していきたい。 (団体のホームページはこちら)http://fml.or.jp/
豊田氏:様々な特産品がある中でカキ・ワカメに絞ったことは勇気のある決断だったと思うが、海外に向けては有効な方法だろう。カキは衛生面での輸入規制が厳しいところだが、タイの輸入統計は仏・韓・オーストラリア。日本食材への理解は深いのでブランドを続けて打ち出してほしい。ワカメはアメリカでのHACCPの対象になってないなど輸出しやすいので、アピールして欲しい。
海外ECサイト「楽天グローバルマーケット」において特設ページを開設し、BtoC の商流を拡げ輸出拡大を図った。主な取組内容は以下の通り。
結果として、平成29年1月10 日~3/15の間に4,158,403円が流通した。
大島氏:EC サイトを活用しての輸出は手続きが難しそうなどの課題感があったが、企業によっては大量一括の輸出よりも使い出があるのではないか。また、クッキングスタジオの活用のようなローカルにあわせたメニュー提案は、今後必須になってくると思っている。
三陸の水産加工会社7 社共同の共同輸出体制を構築し”SANRIKU”ブランドを作りプロジェクトにあたった。共通ブランドの検討に始まり、海外商談・バイヤーの産地招、物流・商流の調整、海外での販促展開、そしてプロジェクト会議といった取組を通して、フィリピン・シンガポール・タイに向け約20トン、25百万円の売上をあげることが出来た。 今後の継続的かつ安定的な事業経営に向けては、①海外市場で売れる商品への改善と新たな商品の開発、②海外市場のさらなる販路開拓と安定的な売上高の確保、③海外市場における認知度及び理解度向上とブランドロイヤリティの獲得、④海外市場へ三陸産商品を売り込む営業マンの確保・育成に重点的に取り組む必要がある。 海外展開には商品力・営業力・訴求力・対応力・持続力がポイントであるが、特に相応の時間とコストがかかる覚悟が出来るかの「持続力」が最重要ポイントだと思う。
佐野氏:まずは地域としてまとまったということが大事であると思う。そして、品揃えのある事、持続していくための予算効率をよくするための規模が大事だと思う。その点で優れた活動であるといえる。海外展開ポイントとして、顧客マネジメントにおいて、顧客は誰か、誰がマネジメントするのかが大事。また、顧客のコスト感に即した営業も大事である。国内でも同じようにブランディングをしていって欲しい。
本プロジェクトは、石巻の食品の輸出拡大に向けて、ワンストップで幅広い需要に対応するために、地域ぐるみで複数の特産物の共同輸出を目指し、体制・戦略づくりを行うとともに輸出拡大に向けた取り組みを行う。 共同輸出に向けた体制・戦略づくりとしては輸出モデルに関する検討会、商品データベースの作成、農水産物等の輸出可能性調査の実施、輸出に向けた講習会の実施、商品開発を行った。また、輸出拡大に関しては大きく以下の3つに取り組んだ。 a.販促ツールの作成、b.国内でのPR活動、c.海外でのPR活動 c.については香港・タイ・シンガポールにて、商談会への出店のほか、レストランでのキャンペーンや、現地ニーズのあるサバを使った病院・介護食の開発などに取り組み、複数企業との商談が成立した。 今後も輸出拡大に向け取り組んでいく。
豊田氏:こうした活動は継続が大事で、3年目くらいになってようやく成果が出るものなので引き続き取り組んでもらいたい。官民で行うことによる意思決定・意思疎通およびフットワークの強みを活かすことを期待する。また現地の同業者から得られる情報も活用して貰えればと思う。
岩手県洋野町は岩手県の約3割の水揚げを誇る「ウニ牧場」があるが、町内に大規模化工場がないためブランドを付けることが難しかった。 まず、支援財団の協力で加工場を開所し、輸出用商品の開発拠点とした。 商品開発の結果、築地市場の協力もあり水揚げ後約30時間で香港の店頭で販売できる流通システムを構築した。さらに、中華圏向けのチラシを作成し消費者に商品を教えていくとともに、個別商談や展示会参加を通して、香港にある2社と取引をすることに成功した。 今後は、アメリカの加工業者、台湾・シンガポールの商社やタイの日本料亭と提携し展開をしていく予定である。
大島氏:地方から世界への水産ブランドの発信、少ロット対応型の物流、消費者に商品を教えていくこと、また賞味期限・鮮度について技術開発で乗り越えることなど、スタンダードで大変参考になる事例。様々な事業者に参考として貰いたい。提案として、SNS や地元メディアももっと使って地域全体での拡販をされたら良いと思う。
北米及び欧州のスーパーに並ぶマグロ加工品(冷凍)は、通常の冷凍温度帯(-20℃)で流通されるなど安価で品質が悪いため、高品質な福島加工のマグロ加工品を販売するチャンスと捉え取組を行った。 問題点として、海外の既存取引先がほぼないため商品のPRの場(展示会・見本市)への参加が必要なこと、超低温冷凍温度帯(-38℃以下)での流通が不可欠であるためコールドチェーンの構築が必要なことが挙げられる。そこで、国内外の海外向け展示会に参加すると同時に、超低温冷凍温度帯での海上物流に耐えうる包材を開発し、家庭で解凍するための分かりやすいパッケージを作った。結果として、COSTCO CANADAへの販売を開始し、2本のコンテナを出荷するに至った。
佐野氏:日本にしかない超低温のマグロを直接消費者に持っていこうという大胆な取り組みである。鮮度に対する評価を海外で築いてほしい。 安くはない価格帯で一般消費者にどのように訴求していくか、MEL・MSCのような環境認証をどのように取っていくのか、流通および解凍時の温度管理問題をどのように克服するかなど多くの課題があると思うが、今後も頑張ってもらいたい。
取組として、海外での直接商談および商談会参加に加え、レストランでフェアを行ってもらうことも行った。香港のフェアは現地の方が食べている様子を日本の漁師に見てもらうことで、やり甲斐や誇りを持ってもらうことにもつながった。またバイヤーを招いての工場視察などを行い、これはほとんどの商談が決まった。 製品開発においては5漁師生産者を含む12社者で「SUN Oyster(カキ)」「SUN Scallop(ホタテ)」などのブランドをつけた生鮮品や加工品を製販一体で開発し、香港、台湾、タイ、ベトナムに輸出をした。また米国にはホヤの輸出をしており、これはコリアンタウンに販路があったために実現した。 これからもレストラン等を中心に輸出を増やしていきたい。
豊田氏:事業者をまとめることで大きな顧客へのプロモーションや商談が出来、世界が拡がるうえ、物流の件でも効率化が出来るなどメリットが大きい。米国にホヤを持って行ったところコリアンマーケットに売れたという話は大変興味深かった。今後も先駆者として頑張って頂きたい。
もともと気仙沼との長い友好関係があることもあり、本取組での輸出先はインドネシアとした。インドネシアへの一般向け商品の輸出にはML番号というが必要なのだが、この認証に申請から6~10ヵ月かかり、その間に商品企画を確定させなければならないため、現地末端までのコミュニケーションが必須である。また2016年10月からHACCP取得も必須になったため、会社としてHACCP取得に取り組んでいる。 取組としては、インドネシアに行き、食文化などの調査をした。また現地のシェフを迎え、気仙沼牡蠣を利用した料理コンテストも開催した。また、気仙沼へシェフ・バイヤー・メディアを招聘し、意見交換も行った。 ML番号を取得できていない状態だが、3社と取引が決まっている。
大島氏:成長幅の大きな発展国であるインドネシアへの輸出ということで、大変注目している。また、姉妹都市のような地縁形成に基づくマーケットを狙うことは、PRを比較的容易に地域の人へ届けることが出来るので皆様の活用してもらいたい。また、各国のトップシェフの人脈があれば、シェフ自身の人脈によってさらに販路拡大することもあるので、これも活用できれば良いと思う。新しい食材や使い慣れていない食材の使い方を伝えることは大きな課題である。
司会:日本貿易振興機構地域統括センター長(東北)兼仙台貿易情報センター所長 長谷部 雅也氏(以下、長谷部氏) 講評者:石井 裕之氏 (以下、石井氏) GOGO FOODS CO.,LTD(香港) Managing Director 本田 幌二氏(以下、本田氏)C & group(香港) Managing Director 石崎 靖典氏(以下、石崎氏)BANRAI VIETNAM TRADING Co.,LTD(ベトナム) General Manager 伊藤 幸治氏(以下、伊藤氏)Livlon Pte Ltd(シンガポール) Managing Director 梅田 博司氏(以下、梅田氏) Jun Pacific Corporation Pty LTD(オーストラリア)Director
石井氏:①香港では、日本食だけでなく中華料理で水産物を使うので、消費量は多い。日本産水産物は、輸入量が世界一の地域であるため、ほたてやなまこを中心にかなり流通している。日本食人気も高く、一過性の人気から定着してきた。以前は、サーモンやまぐろなど、刺身や寿司で使用する魚種の人気が高く、脂がのっているものを好む消費者が多かった。最近では、煮付や天ぷらも浸透し、日本の消費者と同じであっさりした旨味を好む消費者が増えた。そのため、日本産水産物は全般的に需要がある。今後5年間で、ミドル層まで日本食需要が拡大していくことが予想され、日本産水産加工品の輸出チャンスが今まで以上に拡大すると思われる。
②香港は、他国と比べて食品の輸入規制が厳しくないため、日本産水産物の輸出が比較的容易な市場である。HACCP 認証等に関しても、あまり重要視されない。ただ、欧米系のホテルやレストランへ販売を考えるのであれば、必要になる場合もある。規制が少ない分、競争が激しい市場である。そのため、他国産との比較も含めて差別化が重要となる。日本産水産物・水産加工品においては、「日本」というブランドが強いため、安心・安全を前面に打ち出していけば良いのでは。マーケティングの一例としては、人手不足で困っているミドル層向けレストランへ、手をかけずに美味しく提供できる水産加工品を提供・開発するといったことが挙げられる。
③日本食品全般に言えることだが、いかに商品の付加価値を付けて販売するかが大事であると思う。日本産はおいしいと消費者に連想させる仕掛けを作り、ブランディングを行うことにより、さらなる輸出拡大へつながると考える。
本田氏:①石井氏より、香港は輸出時規制が緩い分、差別化が必要であるとの話があった。この点に関して、消費者の観点から説明したい。現在、情報化社会の恩恵を受け、情報伝達速度が速い。そのため、香港の消費者は日本食に関して、現在の日本で主流のものを求めるようになった。また、水産物・水産加工品においては、ただ美味しいだけでなく、なぜ美味しいのかを産地や加工の情報を含め、知りたがっている。香港人は、まだまだ日本の水産物・水産加工品に興味を持っており、この差別化が上手くいけば今後も伸びしろがある。
②他国では、加工品でなく原料のみを求める声が大きいと聞くが、香港はそのようなことは無い。日本の水産加工品メーカーに対して伝えたいことは、次の2点である。1点目は、輸出を検討している国を訪問すること。海外においてもビジネスは「人対人」の側面が大きい。産地から、商品や素材、加工のこだわりを紹介することで、食材に対する価値を伝えることが出来れば、相手に取引をしたいと思ってもらえる確率が増える。また、売るためには、現地をよく見てほしい。2点目は、輸出の数量に関しては小ロットでも可能ということ。特に香港においては、大ロットで輸出すると価格競争に巻き込まれることもある。小ロット輸出で知名度がつき、希少性を高めることが出来れば、十分商業ベースにのせることは可能である。
③石井氏の話を補足する形になるが、ブランディングで大切なことは情報である。生産者と連携して、輸出先国の消費者・バイヤー向けに産地情報を素早く入手・提供することが課題であると思う。おいしい理由の「情報」をいかに加えていくかが、日本産水産物・水産加工品の輸出において重要である。
石崎氏:①ベトナムでは、水産物は基本的に煮る、蒸す、揚げる、焼くといった調理で食べるため、あまり生で魚を食べることはなかった。ただ、日本食ブームの影響で、マグロやサーモンといった赤身を中心に刺身で食べるようにはなってきた。日本の魚種では、前述の他ではうなぎや穴子、帆立が人気。日本食が浸透しているのは、現在ではアッパー層が中心である。今後どのようにして、日本食および日本産水産物・水産加工品をミドルアッパー層まで広げていくかが、流通状況に影響していくと思われる。
②要望については以下の2点。1点目は、輸出規制について。ベトナムに水産加工品を輸出する際は、HACCPは重要視されないが、輸出施設登録を行う必要がある。これがないと、ベトナム向けに輸出・販売が出来ないので、輸出を検討している方は取得をお願いしたい。2点目は、価格について。香港やシンガポールと比較すると、ベトナムは所得が追い付いていない。そのため、手頃な価格の商品を大ロットで輸出して価格を抑えて販売したい。場合によっては、日本で取り扱わない規格外の原料をベトナム輸出して、加工するといったことも選択肢に入る。3点目は、ラベルについて。包装はそのままで良いが、商品概要が分かるようなフレーズをベトナム語で入れてほしい。そうすると、ベトナム人に商品内容が伝わって売りやすい。
③輸出拡大に向けての課題は、やはり価格面についてである。いかにコストを抑えて、現地になじむ商品にするかが重要である。
伊藤氏:①基本的な傾向は香港と似ているが、常夏の国のため濃い味を好む傾向がある。魚種は、キンキ・うなぎ・しらこ・ほたて・かきが人気。華人人口が多いため、日本産水産物は日本食レストランだけでなく、中華料理にも使われている。マーケットも勢いから成熟に変わりつつあり、高品質を求める消費者が増加。そのため、日本産水産物・水産加工品にとってはチャンスである。
②香港と同様に日本産水産物の輸出が比較的容易な市場であり、HACCP認証に関してもあまり重要視されない。高級店や中華料理店に納入する場合、現地で手を加えて味付するものが好まれるので、加工度が低い製品が好まれる傾向がある。ただ、小骨がある商品は嫌う傾向にあるので、その点は要注意。販売する際は、自社で営業開拓を行うよりは現地で商流を持っている企業と組むことがベスト。輸出時の数量に関しては、正確な商品価値を反映したいので、なるべく大ロットで輸出して輸送コストを抑えたい。③シンガポール向けの場合、安定的な商品提供が輸出拡大に向けての課題であると思う。高評価の日本産水産物は世界に誇れる一方、原料高や為替の影響等、販売側でコントロール出来ない問題もある。海外販売への意欲もとても大切だが、金額や数量面での安定供給もとても重要なことであることを申し上げたい。
梅田氏:①豪州は、日本と同じく四方を海に囲まれているので、水産物を食べる国である。サーモンやカニが1番人気のある魚種である。日本からの輸出は、帆立やたらが主力であるが、検疫が厳しいため低水準にとどまっている。食べ方としては、フライやスチームして食べることが主流である。また、フィッシュアンドチップスが人気で、日本のたらが使われているお店もある。日本食は、在住の日本人が多いことから、他国と同様に根付いている。多民族国家であることから、多種多様な食文化があり、受容性は他国と比べると高い。
②規制は以下が挙げられる。1 点目は、HACCP 認証について。水産物・水産加工品を豪州へ輸出する際、欧米同様にHACCP の取得を求められる。また、物流のHACCP 認証があるため、現地で商流を持っている会社と組むのがベスト。2点目は、輸入規制について。産業保護や生態系保護の観点から、水産物・水産加工品輸入に対して各種規制を設けている。代表的なものでは、有頭の水産加工品の輸入不可やヨウ素規制により昆布の輸入が出来ないといった点が挙げられる。
③日本のメーカーに対する要望としては、規制対応はもちろんのこと、豪州輸出用の規格製品を製造してほしい。例えば、有頭で輸出出来なくても、無頭であれば輸出可能な場合もある。また、賞味期限についても注意が必要。船便の場合、日本から豪州まで輸送だけで2週間かかるため、販売に必要な期間が足りなくなるものもある。その点も注意して商品を選んで頂きたい。可能性は広がっているので、どんどん輸出にトライしてほしい。
※レポートの内容および登場者の所属・役職等は記事公開当時のものです。