令和2年9月30日に第22回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「復興水産加工業等販路回復促進事業の取組状況について」というテーマでセミナーが行われました。
提坂氏より令和元年度復興水産加工業等販路回復促進事業の取組内容について説明がありました。概要についてはこちら(令和元年度復興水産加工業等販路回復促進事業の取組状況について)を参照ください。
令和2年9月30日に第22回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「水産物の放射能調査について理解を深めるために」というテーマでセミナーが行われました。放射能についての基礎知識や、最新の水産物のモニタリング結果を交え、放射線リスク等について説明を行っていただきました。
放射性物質とは、放射線を出す能力(放射能)を持つ物質のことです。放射性物質には、自然由来のものと人工由来のものがありますが、同じ種類の放射性物質であれば、性質に違いはありません。つまり、人工由来であるから危険だというような考えは間違いと言えます。
放射性物質に対する単位として、「ベクレル(Bq)」や「シーベルト(Sv)」があります。食品等に含まれる放射性物質の量をベクレルで表し、人体が受ける放射線の影響(被ばく量)は、シーベルトで表します。同じ量(Bq)の放射線物質であっても、その種類が異なると、被ばく量(Sv)も異なります。
なお、放射線による人体影響は、被ばく量100mSv以下であれば喫煙、飲酒、肥満などの要因に隠れるほど影響が小さいとされています。
私たちは、日常生活においてある程度の放射線を受けており、日本人1人が1年間に受ける平均被ばく線量は、合計5.97mSvと言われています。
●自然放射線由来:2.1mSv ●人口放射線由来:3.87mSv
食品の国際規格を定めるコーデックス委員会では、食品より追加的に受ける被ばく線量の上限を年間 1 mSv以内と定めており、日本やEU等でその考えが採用されています。
飲料水の基準値は、世界保健機関(WHO)の指標に沿って、10Bq/kgに設定されています。2Lの水を365日飲むとして計算すると、飲料水由来の線量は年間約0.1mSvとなります。 よって、食品の線量の上限値は、飲料水の上限の約0.1mSvを差し引いた約0.9mSvとなります。 基準値を定めるにあたり、対象とした放射性物質は、福島第一原発事故で放出されたもののうち、半減期が1年以上のもの8種類です。このうち、セシウム以外の放射性核種は検査に長い時間を要すため、放射性セシウム以外の放射性物質を考慮した上で、比率が高く、測定の容易なセシウムを指標として基準値が設定されています。 また、被ばく量と放射性物質濃度の関係式は以下のとおりです。
飲料水を除く食品の線量の上限値(約0.9mSv)を超えないよう、以下の考え方を前提として放射性物質濃度の限度値を算出し、基準値を設定しています。
最も線量の影響を受けやすい世代・性別(13~18歳・男性)において、上記の条件を踏まえ、限度値を120Bq/kgと算出し、これをさらに安全側に切り下げ、基準値を100Bq/kgに設定しています。すなわち、食品の基準値(100 Bq/kg)は、放射性セシウム以外の放射性物質の影響も含め、すべての世代の計算結果を考慮して設定されています。
厚生労働省では、平成23年度から、実際に流通する食品で作った平均的な食事に含まれる放射性物質の量を調査・推定しています。 直近では、令和元年9~10月に、福島県内3地域を含む全国15地域で調査が実施されており、その結果、食品中の放射性セシウムから人が1年間に受ける線量は、0.0005~0.0010mSvと推定され、線量上限とした1mSvの1%程度と極めて小さいことを確認しています。
水産物の放射性物質調査は、自治体が中心となって作成した調査計画に従って実施されております。そして、その調査結果に応じた対応策が取られることとなっています。 以下にその実施状況と対応策を記載いたします。
魚類は、カリウムや放射性セシウムなどの塩類を、環境水(淡水・海水)や餌から体内に取り込み、その一部は自然に大概へ排出されます。つまり、環境水中の放射性セシウム濃度が低下すれば、魚類の体内の放射性セシウム濃度も低下します。
表層海底土における放射性セシウム濃度の低下は2015年以降鈍化しています。しかし、放射性セシウムに汚染された海底土を用いた飼育試験の結果から、底魚類が海底土や底生生物から放射性セシウムを取り込み、基準値を上回る濃度に汚染される可能性は極めて低いことが分かりました。
令和2年9月30日に第22回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「チーム化による水産加工業の再生 『未来を変える、新たな取り組み』」というテーマでセミナーが開催されました。 このセミナーでは、被災地の持続的な発展に資するチーム化モデル事業について、その取り組み成果や事業後の状況、事業から生まれた商品等を紹介し、チーム化によるメリットやチーム化するためのポイント等について講師の方からご説明いただきました。
被災地の基幹産業である「水産業」について支援を続けていましたが、震災から間もなく10年が経とうとする中で、販路喪失や人材不足、水産環境の変化による漁獲量の減少など新たな問題が山積しています。 これらの課題の解決に向け「チーム化モデル事業」では、企業間や地域が連携して、将来を見据えた事業を計画、推進してまいりました。 これからご紹介するその取り組みの成果の数々が、被災地だけではなく、水産業に関係する方々の今後の事業の糧になることを期待しております。
震災後は、国内の販路を失った水産加工業者が多く、海外へ新たな販路を求める動きが活発となっていました。海外展開には商品力・営業力・訴求力・対応力・持続力が必要となります。これらの対応を1社で行うには限界があり、継続性が低いと考えられたため、平成28年度に青森、岩手、宮城の3県の水産加工業者7社が連携して、水産物、水産加工品(サバ、サンマ、カツオ、イカ、イクラ、カキ等)の東南アジアの量販店の市場開拓と販促活動を展開することとなりました。
ロゴは、日本のイメージである「日の丸」と「三陸の海岸線」をモチーフにしたもの。 この“SANRIKU”ブランドの基準として、「三陸地域で水揚げされた水産物やそれらを主原料とした水産加工品、または三陸地域で加工・製造された水産加工品である」などの条件を定めました。 また、三陸産水産物の輸出窓口、およびインバウンド需要に対応した販売を行うためとして、参画企業7社で「株式会社三陸コーポレーション」を設立しました。
物流体制としては、チームに参加している各社からの商品を仙台市内の指定倉庫に集約し、仙台港を起点に東南アジア諸国へ輸出します。また、輸出窓口として設立した株式会社三陸コーポレーションと参画企業各社が仙台港納品で代金決済し、さらに海外の輸入業者から代金回収を行うという商流になっています。
フィリピン、シンガポール、インドネシアの現地に赴き、日本食レストランやホテルの会議室で試食商談会を開催。この他、日本の産地にフィリピン、タイ、シンガポールのバイヤーを招聘し商品のPRを行いました。 また、フィリピン、タイにある高級スーパーや百貨店の水産売場など計7店舗で店頭試食販売や”SANRIKU”ブランドブックの配布などを行い、販促活動に努めました。
日本国内で販売していたパッケージをそのまま海外向けにも流用していましたが、より一層のブランド化のため、海外向けにパッケージデザインを統一化しました。
フィリピン、マレーシア、シンガポールで行われた展示会に出展したほか、東南アジア計7か国における個別商談会に参加しました。
株式会社三陸コーポレーションと海外輸入業者の2社共同で、現地で販促活動を行う人員を採用し、実際に産地を視察してもらうなど研修を行いました。
輸出先国の放射能関連の輸入規制緩和に伴い、福島県内の企業の商品の取り扱いを開始。 三陸の水産物以外にも現地ニーズに応えるため、「ずんだ餅」や「仙台牛」など取扱品目の幅を広げています。 また、東南アジア諸国以外にもアメリカやロシア、ヨーロッパにも輸出地域を拡大中です。
主要輸出先であるフィリピンにて、現地輸入卸売会社と大阪の輸出商社、および株式会社三陸コーポレーションとの三社合弁により、2020年に日本食品の輸入卸売販売を行う現地法人を設立。製造加工~輸出・輸入~現地での卸売販売まで一貫して行えるようになりました。
本事業は、コンピュータソフトやプログラムの作成等を行うデジタルブックプリント株式会社を中心に、岩手県産農林水産物を全国に販売する事業を行っている有限会社秀吉、低温食品の集荷配送を専門としている株式会社日配運輸、注文などでのデータ処理やデザイン、印刷業務を行う株式会社コーポレートインパクトや近隣の水産加工業者など異業種がそれぞれの得意分野を持ち寄り、被災地の活性化のため、様々なアプローチをしていくという取り組みです。
2014年に復興庁が開催した被災地の新たなビジネスプランを応援するための「リバイブジャパンカップ」にて大賞を受賞した「大槌復興絆便」の取り組みにより、保冷剤や保冷箱を使って、氷なしでも産直で鮮魚を品質保持しながら消費地へ届ける取り組みを行ってきました。 この事業を行う中で、漁場では何が獲れているのか、価格はいくらなのかなど、現地からの発信が足りないこと、また飲食店まで届けるための輸送経費などはどうするのかなど、新たに問題が出てきました。これらを解決すべく取り組んだのが「南部沿岸産直ライン便」です。
「南部沿岸産直ライン便」とは、魚市場等から漁獲された魚介類の情報をスマートフォンにて発信、そのデータは飲食店などの利用者に配信されます。飲食店は買いたい魚種、加工方法を注文。この注文が加工場へ配信され、希望の商品が飲食店に届けられるという仕組みです。 このように、ICTの活用により、消費地に対して、産地や加工場の発信力を強化することができるようになったほか、注文がまとまり出荷数量も確保でき、且つ内陸部から沿岸部に来たトラックの配送後の帰り荷を活用することで配送費を抑えられるようになりました。
しかし、海洋環境の変化等による予測のできない漁獲量の変動や漁獲される魚種の変化により、産地だけでは飲食店の希望に添えない場合も出てきました。 そこで、新たに「南部沿岸産直ライン便」のシステムを拡大。飲食店から注文をいただく際に、「刺身用の白身魚」「赤身の刺身」「サーモン」など広いキーワードにてご注文をいただき、産地とマッチングするものがあれば産地から、産地に無ければ豊洲市場などから三陸産の魚介類を取り寄せて、新たに用意した都内の施設にて加工を行い、各飲食店にお届けする仕組みを追加しました。このことでサービスを受ける側も提供する側も安心して利用できるようになりました。
また、なじみの無い魚介類などは事前に食材を利用者に発送したうえで、リモート料理教室を行うなど、認知度を高める試みも併せて行っています。 現在は豊洲市場への直行便の利用とその先の配送システムを構築中。時間指定の配達ができないため、「大槌復興絆便」で使用している保冷剤や保冷箱を改良した「置き配ボックス」を配置し、送られた鮮魚の鮮度を損なうことなく提供できるようにするなどの検討を行っています。
「南部沿岸産直ライン便」で配送する目的で商品づくりを行っています。特におすすめなのは解凍するだけでフレッシュな食感を味わえる「恵海(めぐみ)ほや」。 また、小型のイカは比較的安定的に獲れるため、イカに3種類の味付けをしたイカメシ風リゾット「イカリゾ」などを商品化し、「岩手うんめぇ~もん!!グランプリ2019」ではアイデア賞も受賞しました。
コロナ禍で川上も川下も大変な状況ではありますが、チームでアイデア、技術を持ち寄って、乗り越えていきたいと思います。
東日本大震災をきっかけに、石巻の食に携わる10社が、会社の枠を超え、石巻ならではの本物の味を作りたいと2016年に「石巻うまいもの株式会社」を設立。 日本はもちろん、世界中の人々に石巻の美味しい食べ物を知っていただきたいという思いで、各社の得意分野やノウハウを活かした商品開発やアンテナショップの運営など販路拡大に取り組んでいます。
参画企業それぞれの強みを活かし、バーチャルな工場群として製造ラインを共同化。10社を一つの工場と見立て、複数社で一つの製品を仕上げるシステムを構築しました。
この成果として新商品が9点完成し、このうち魚醤、パスタソースなど4点が商品化されました。 チームで商品化することで、製造できる商品のバリエーションが広がるなど、商品開発時の制約が少なくなり、自由なアイデアで製作できるようになりました。 また、製造のノウハウやキャパシティが向上するほか、パッケージデザイン、広告費などのコストの負担軽減にも繋がっています。
協力して製造した商品は拡販すべく、パンフレット等の販促ツールの作成や共同販売の統一ルール(卸値などを統一)を設定するなどして、展示会へ出展や、それぞれの持つ得意先へシリーズ全商品の営業を行いました。 その結果、代表企業の石巻うまいもの株式会社だけで20社33店舗。参画企業は、これ以外に約30社の新規取引先を獲得。 看板商品である「石巻金華シリーズ」の年間販売数は目標の15万食を大きく上回る25万食を達成しました。
東日本大震災前であれば、同業者で協力するのは考えられませんでしたが、復活のための共同復興活動から得られた信頼関係が、現在、チームでうまくやっていけるポイント。 また、石巻は様々な海産物が獲れることから、参画企業の取扱っている商材も各社それぞれバラエティーに富んでいます。そのことも得意分野の住み分けに繋がり、うまく行っている理由かもしれません。
震災や津波の影響で石巻市内は甚大な被害を受け、市場も水産加工業者も復旧まで休業を余儀なくされました。 復旧後も少子高齢化等により、国内の水産を取り巻くマーケットの縮小が見込まれ、販路喪失や、売上が落ち込む企業が多く出てきていたのです。 この状況を打破するため、「石巻食品輸出振興協議会」を平成28年5月に設立。 日本食ブームなど海外で国産の食品の需要が拡大していることに着目し、14団体で協力しながら石巻の食品の輸出拡大に向けて取り組みを行っています。
共同輸出を行うにあたり、その窓口機能の一元化および体制の構築を行いました。また、シンガポール在住の日本人医師や商品開発アドバイザーの協力を得て、現地での病院食や介護食向けの商品開発のための勉強会や試食会を実施しました。
参画企業が共同で利用できる販促ツールやパッケージを作成し、ブランドとしての統一イメージを作り上げました。また、石巻にタイのバイヤーやシェフを招聘し、石巻の市場や加工施設等の紹介を行ったほか、海外ではタイ、シンガポールにて商談会を開催しました。
前年度に取り組んだシンガポールの病院食や介護職向けのサバフレークを試作したほか、石巻の特産品である「ホヤ」を使ったメニュー開発を香港の料理人とともに行いました。
シンガポールでは、サバフレークのPRや試食商談会を開催。タイでは、現地飲食店で「アンコウ」の調理実演や石巻の食材を使った「石巻丼」を格安で提供しました。このほか、香港では「ホヤ」の市場拡大を目指し、高級中華料理店でのメニュー化に向けた取り組みを行いました。
平成28年度、平成29年度に引き続き、高齢者食・介護食としてサバ関連商品7品、ホヤ関連商品2品の開発を行いました。
開発したメディケアシーフーズのPR活動を国内外で実施。 シンガポールでは医療関係者等を招いた試食商談会を開催。国内では石巻市内の医療関係施設で商品の利用に向けた意見交換を行ったほか、フード見本市にてバイヤーへ商品説明を行いました。 この取り組みにおいては、バイヤーのニーズに幅広く対応するため、水産物以外にも農産加工品も含め、輸出に取り組んできました。 今後の課題として、石巻における共同輸出体制を整えるには、地域商社的な機能の充実を図る必要があることがわかりました。
北三陸(岩手県宮古市~青森県八戸市)の食材を使った加工食品の開発・製造・販売を通じて国内外にその魅力をアピールしていく目的で、株式会社ひろの屋が100%子会社である株式会社北三陸ファクトリーを設立しました。 エリアの魅力を最大限に発信できるよう、様々な企業や行政と連携して活動を行っています。
通常、ウニは「うに栽培漁業センター」において育った「稚うに」を沖へ放流し、2年ほど経って6㎝ほどに育ったところでむき身にするなど加工を行っていましたが、さらにもう1年、沿岸に広がる「うに牧場」にて天然昆布を飼料に飼育を続け、一番の食べ頃に加工、出荷を行っています。 また、2021年の2月には高度な衛生管理に対応した「FSSC2200認証」を取得したむき身工場が竣工します。
ウニを中心に販売するにあたり、事業拡大のボトルネックになるのは、漁期が5~8月に限られてしまうこと。また、日本全国で「磯焼け」という海藻がなくなってしまう現象の影響で、海藻を餌としているウニやアワビの身入りが悪くなることも課題でありました。 そこで、北海道大学、愛媛大学と連携して、ウニ養殖事業の研究開発を行い、より安定的な資源確保に向けて取り組みを行っています。
前述の新工場では、ただ生産を行うだけではなく、生産現場の様子がお客様に見えるような形にし、直売所や飲食施設も設置することで、観光にもつなげ、生産現場を主役に置きながら、地域の活性化を図れるような仕組みづくりを計画しています。
今後は、ウニ以外にもたくさんある魅力的な水産物に光を当てながら地域の魅力を引き続き発信していきたいと思います。また、沿岸部は人口減少や高齢化による人手不足など様々な課題を抱えています。さらにサンマ、アワビ、ウニ、サケなども水揚げ量が減少し苦しい状況にあります。 このような苦境も様々な企業等と連携しながら、問題を少しずつ解決していくことで、新たな水産業を構築していきたいと考えています。
第1部でも大きなテーマとなっていた「チーム化による水産加工業の再生」について、株式会社流通研究所 常務取締役 有山 公崇 氏から個別に質問を行い、さらに詳しく掘り下げていきます。
チーム化したことでメリットを感じたことなどはありますか?
現在、フィリピン向けに仙台港から1コンテナ10トンほどの商品の輸出を行っています。毎回、7~8社で20~30品目を混載するのですが、1社では数トンにしかならないので、共同で輸出を行うことで荷物をまとめられるのはメリットだと思います。
「南部沿岸産直ライン便」の取り組みで苦労した点はありますか?
注文をもらっても時化だと商品を発送できず、逆に頼んでないのに商品が届いてしまったなどの問題もありました。 その日獲れたものを発送する「お任せ便」では注文者が想像していたより大きいものが届いたり、調理方法が分からないような珍しい魚が届いたり、いいものだけど今欲しいものではないものが届いてしまうことがあり、このミスマッチがリピート利用に結び付かず一番苦労しました。 そこで、産地で水揚げがなかったものについては、品揃えが多い豊洲市場から補助的に出荷するようにし、サービス向上に努めながら、事業の継続を行っています。
共同で商品を作る際に、ノウハウの開示など抵抗はなかったですか?
震災で工場が被災し、しばらくは県外のメーカーにレシピや工程などすべてを開示してOEMの生産を依頼していましたが、自分たちが作っていたものと全く同じものはできませんでした。 作り方ではなく、人や環境など真似できないところに企業秘密があると思うので、ノウハウの開示には大きな抵抗は感じていません。
病院食に目を付けたのはなぜですか?
輸出をするにあたり、どう進めていくか考えたときに、海外向けの病院食は今までにあまりない取り組みだったため、ブルーオーシャンになり得る可能性があると考え、取り組みを始めました。
海外向けにブランド化をするにあたりポイントとなる点はありますか?
海外で流通する三陸産の商品のほとんどが一次加工品であり、パッケージがないものが多く、どこで漁獲されたものであるかなどの情報は全く伝わっていません。 そのため、産地としてブランド化していくためには、きちんとパッケージがあり、産地についても情報を載せられる加工品の流通量を増やしていくことが急務だと判断し、今後は、高度な衛生管理に対応した新工場で商品開発に努め、三陸ブランドのアピールを強化していきます。
今回、5つの取り組みの報告を受けて、決して最初からすぐにうまく行っているところは無く、何か動き出すことでネットワークが広がり、新しい共同事業や共同開発が生まれているということが良く分かりました。 また、課題に対しての共通の意識を持つことが事業や技術を発展させていっているのだと感じました。
令和2年10月1日に第22回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「イスラム市場水産ハラルセミナー」というテーマで東南アジアや中東のイスラム市場での水産加工品のハラル認証の現状、食文化、好まれる商材など、現地レポートを含め6組の講師の方からご説明いただきました。
ハラル(HALAL)とは、イスラムの教え(シャリーア法とイスラム原理)で許された「健全な活動」の全般を意味します。
食べ物に関しては、土の中、水の中のもの(野菜、果物、穀物、水産物そのものなど)や、生きている動物から採れるもの(卵、牛乳 など)は基本的にハラルです。 よって「魚」はハラルなのですが、現代においては、水産品も加工方法が高度になり多様化しています。また、海外など遠方から入ってくるものに関しては、調理の際もハラル性が担保されているかどうかなど、パッと見ただけでは判断がつかないものが多くなってきました。そのため、水産品にもハラル認証が求められる場合が増えてきています。
こういった流れもあり、海外マーケット、在日のイスラム教徒向けなどに販路を広げるため、日本の企業も、水産品や加工品に対してハラル認証を受ける企業が増えてきており、2020年9月末現在では18社が取得しています。(ハラル・ジャパン調べ、塩業は除く)
これまでハラル認証の話をしてきましたが、必ずしも認証を受けることが必要であるというわけではありません。下図のように、まずは「どこで作ってどの国へ輸出したいのか」をきちんと整理し、その輸出したい先のマーケットではハラルに対してどの程度まで配慮が必要であるかの確認が大切です。
ハラルか否かの国際的な基準は無いため、「この点だけ注意すれば大丈夫」ということはありません。そのため、かなり厳格なハラル性が求められる東南アジアでのビジネスを考えているのであれば、ハラル認証の取得が必須に近いと思われますが、そこまで敏感ではない国もあるため、まずは、「ポークフリー」「アルコールフリー」「植物由来の原材料に未使用」など成分ハラルを目指すということから始めてみるのが良いと思います。
一般社団法人ハラル・ジャパン協会 [本部事務局] 〒171-0022 東京都豊島区南池袋2-49-7 池袋パークビル1F TEL:03-4540-7564 Mail:info@jhba.jp HPはこちら
私たちが見慣れない海外製品を購入するとき、口に入るもの、肌につけるものは特に念入りに成分や原材料の表示を確認するのではないでしょうか? ムスリムの方の心理もまさしく同じです。これはハラールなものなのか、一つ一つ確認しなくてはいけません。しかし、そこにハラール認証のマークがあれば、専門機関によって安全が保障された証になり、確認せずとも安心して購入できるのです。
ハラール認証制度は、1960年頃にマレーシアが国として制度化したのが始まりです。それがだんだんと広がり、今では世界中で300以上もの認証団体(民間認証)があると言われています。特にマレーシア、インドネシア、シンガポールは、国が認証を発行し、法律で規定、管理しているため、他国からも非常に高い信頼を得ています。
2019年10月にインドネシアにおいて、法律が改正され、従来は任意だったハラール認証を、全ての製品に義務化。それに伴い、世界各国にハラール認証の出先機関、補助組織を設置しました。 日本では、弊社の「株式会社トレードエージェント」が国内の民間企業として唯一正式に業務任命を受けるとともに、インドネシア政府のハラール製品保証組織団体から手続の正規代行も許可されています。
この法改正後、特に実感しているのは「製品輸出 = ハラール認証」の結びつきがより一層強くなってきたということ。政府側から取得を促されるケースも増えてきています。 では、このハラールの認証を取得するまでの流れはどういうものなのか、以下に図とともに示します。
上にある「ハラール認証制度」について簡単に説明します。 「審査」の過程では製品に使用するすべての原材料の成分などをハラール製品保証機関が書類でチェック。また、「監査」の過程では、インドネシアの監査機関が実際に現地に出向き、製造メーカーの工場に直接チェックに行き、原料の保管状況、製造工程、包装状況までを確認します。(新型コロナウイルスの影響で、オンライン監査に切り替わっているが、現在は一時中断中。)このほか、「追跡」については、「審査」「監査」のときにどこへどのように販売しているかを確認されます。
「ハラール認証プロセス」は上図を見ていただくと分かるように非常に複雑です。また、インドネシアのMUIは監査機関である為、相談や問い合わせに対し、具体的な回答を一切行いません。
申請や登録について、「聞きたくても教えてもらう事が難しい」、「取得のイロハや制度自体が分からない」という方は、ぜひ一度「株式会社トレンドエージェント」へお問い合わせください。
インドネシア人スタッフも含め全て日本語で相談可能です。各種申請についてもトレーニングを受けています。申請書類も一部を除き日本語で書類を準備すれば良いようにサンプル、フォーマットもご用意しております。継続的なサポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。
株式会社トレンドエージェント 東京本社 東京都港区芝大門2-7-9 森川ビル2F TEL:03-6882-5092 Mail:info@trend-agent.co.jp HPはこちら
『PT Klik Eat Indonesia』は2011年設立。出前館株式会社が一部株主として参画しています。 本社はインドネシアのジャカルタで、主力事業は、お弁当のデリバリーサイト「foodspot」の運営です。その規模は法人向けとしてはインドネシア最大であり、約2,000社の法人顧客から、月間15万食ものご注文をいただいています。
お客様の98%はインドネシア人であるため、インドネシアにおける食品に関する味覚志向、価格帯、パッケージング、マーケティング等の様々なノウハウを所有。この知識や顧客基盤を活かし、中間層のインドネシア人を対象とした、テストマーケティングイベント「Klikspot Matsuri」を開催しています。
前述のテストマーケティングイベントでは、製品のサンプリング、テスト販売、アンケート調査を実施。現地市場における味覚嗜好、価格感覚を実際に体験すると共に、より長期的なテスト販売をオンライン経由で実施することも可能です。インドネシアへの本格進出やハラル認証取得の前に自社製品が現地の方々のニーズに合うのかを実際に試す場として活用されています。
また、コロナ禍においては、従来のイベント形式ではなく、越境EC(国境を超えて行われるインターネット通販サイトを使った取引)を通してオンライン上で実施する方式を提案しています。
『PT Klik Eat Indonesia』では、商品選定・価格設定・マーケティングを行い、テスト販売対象商品の現地への輸送、現地 EC サイトへの登録、受注、集金、発送まで全てを代行します。 商品単価や種類等に応じて、越境ECもしくは現地発送方式での販売が可能。ご要望に応じ、現地文化や嗜好を踏まえた商品説明文やInstagramを活用したマーケティング等も併せて実施できます。イベントは今後3ヶ月毎に開催予定ですので、お気軽にお問い合わせください。
PT Klik Eat Indonesia 東京事務所 TEL:050-5317-0383 担当:青柳
マレーシアの人口は約3,200万人で日本の25%ほど。水産品市場規模は、2020年(予定)で約1,217億円(昨対11%増)となっています。これは世界で25番目(日本は中国に次いで第2位)の市場規模であり日本の約7.5%の規模です。
マレーシア国内で食べられる魚料理としては以下のようなものがポピュラーです。
サンバルソース:トウガラシ、小粒の赤たまねぎ、ニンニクなどを主体に塩、コショウ、エビの発酵品やトマトなどを石臼で挽きペースト状にして、サラダ油で炒め、仕上げに酢やライムなどで香りをつけたもの
レストランでは、ひとつひとつメニューが決まっておらず、まずは、魚の種類を選んで、次に調理法を決めて注文します。魚の種類や調理法によって値段が変わります。また、鮮魚売り場は日本のような冷蔵ケースは無く、氷の上に魚が積まれています。切身ではなく丸の状態で販売されるのが一般的です。
日本の水産品は和食レストランなど外食産業向けに販売される例が多くあります。ちなみに、マレーシアの外食産業の市場規模は約1兆円と言われています。東南アジアにおいては、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンに次いで5番目の規模です。 また、もし、日本の水産物を海外への展開する場合、その方法は大きく分けて以下のようなパターンが考えられます。
「ふぁん・じゃぱん株式会社」は、日本の企業にとってブルーオーシャンであるハラル市場に着目し、2014年の創業以来、マレーシアを中心に、シンガポール、タイなどへの食品を中心とした輸出を行ってきました。 マレーシアでは、飲食店50店舗、小売店500店舗の顧客に対し日本の食品を販売。現地には子会社もあります。このような基盤を活かし、現地で実際に商品を販売する際のコンサルティングやテストマーケティングの企画運営も行っています。また、日本食販売のイベント等も実施していますので、自社製品の海外展開に興味のある方はぜひお問い合わせください。
ふぁん・じゃぱん株式会社 本社 東京都千代田区九段北 1 4 1 TEL:03 6261 5657 Mail:gokita@fanjapan.jp 担当:五木田(ごきた) HPはこちら
首都:ジャカルタ 人口:2億6千万人 平均年齢:29歳(日本は47歳) 非常に若い! 経済成長率:5.2%(日本は0.8%) 平均月収:約3万円(首都ジャカルタでは平均4.5万円)
インドネシアは大きく5つの島に分かれており、その中には1,300もの部族があります。それぞれ違った文化を形成しており、首都ジャカルタを有するジャワ島に住むジャワ人は甘いもの好き、ラウェシ島に住むマナド人は辛いもの好きなど、趣味趣向も部族ごとの偏りがあります。淡水魚や海水魚などの違いはありますが、魚介類はインドネシア国内で好まれて一般的によく食べられています。
日本では生食か加熱用かで価格が変わりますが、インドネシアの魚料理は火を通すものがほとんどであるため、「臭いか臭くないか」が品質の境目となります。市場では発泡スチロールに氷を入れて魚を販売していますが、気温が30度を超えるインドネシアでは、品質保持が困難であり、日本のような品質の水産物の安定供給はまだ難しいのが現状です。
このほか、自国の産業を守る政策の一環で、ほぼすべての水産物には「輸入枠」が必要であり、その申請~受理までの手続きは容易ではありません。そのため、日本よりも水産資源の価格が高価となる現象が起きることもあります。
インドネシアは外食文化ですが、最近は日本食ブームが起こっています。富裕層が寿司などを食べるようになったのが始まりで、現在は中間層まで日本食が認知されるようになり、需要も拡大。日本製の食品は「安心、安全、おいしい」と信頼度が高く、ある程度高価であっても受け入れられています。
富裕層の間では、脂のりの良い魚が好まれ、「キンキ」「ブリ」など和名が固有名詞として定着するほど。また、中間層には「サーモン」など、同じく脂がのったものが人気となっています。インドネシア国内で特に需要が高いものは「明太子」「カンパチ」「ハマチ」「ホタテ」「サバ」。調理方法としては「てりやき」が浸透しており、明太チーズをご飯にのせて食べるのが流行しています。
雷魚、タウナギ、ミルクフィッシュ、グラミー、ティラピア、パンガシウス、クララ系ナマズ など(価格の高い順) 養殖されたものが主流。鮮魚及び活魚で販売されており鮮度は良好。水揚げ ⇒ ブローカー ⇒ レストラン、小売り ⇒ 消費者
エビ類(バナメイ、ブラックタイガー、ホワイト)、蟹(ガザミ)、イカ類(ヤリイカ、アオリイカ、モンゴイカ、トビイカ)、バラムツ/アブラソコムツ(ギンダラという名称で販売)、コバンアジ、ハタ、フエダイ類、マグロ類、サワラ、カジキ、バラマンディー、サバ類、アジ類、カツオ類、ボラ(価格の高い順)
海水魚は基本的に天然(漁でとられたもの)が主体。ハタやバラマンディー、コバンアジ等は養殖も行っており、海老やカニ類と共に活でも出回っている。 漁船 ⇒ 工場、公設市場 ⇒ ブローカー ⇒ レストラン、小売り ⇒ 一般消費者
インドネシアにも「干物」がありますが、日本とは異なり「干物 = 調味料」として使用することが多いです。 インドネシアの干物は、「イカンアシン」(塩辛い魚)と呼ばれ、大量の塩をまぶした魚を天日でカラカラに乾燥させ、砕いて塩の代わりに利用します。 「イカンアシン」に加工される魚はカワハギ、フエダイ、アジなど多種多様です。
この他、エビやオキアミを発酵させた調味料「トゥラシ」や小型のサバやカツオを竹かごに入れ、茹でてた「なまり節」の状態にした「ピンダン」など独自の食文化があります。 また、「トゥラシ」には日本のサバがよく使用されます。そして、魚を使った料理はマレーシアなど東南アジアの国と似ており、「魚の丸揚げ」「焼き魚」「魚の頭のカレー風煮付」などがあります。
インドネシアでは今後も人口増加、所得の上昇が続き、日本の約2倍の人口、20代という平均年齢も併せて、食べ物への関心、需要が高く、国内水産原料の高騰が今後も続くと思われます。インドネシアで需要の多い高価格帯商品(明太子やハマチなど)以外にも、低所得者層への販売も視野に入れた、低価格帯の日本の水産物水産加工品の需要が今後も増え続ける見通しです。 日本の商品を販売する際には、商品の特色、現地にあった食べ方や情報を発信し、より広いターゲットへのアプローチが大切だと言えます。
CGC諸国とは中東の中でもペルシャ湾岸に位置する産油国でもある6か国の総称。 サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、バーレーン、オマーン、カタールがこれに含まれます。 所得ベースでも日本とほぼ変わらないかそれ以上であり、人口は少ないですが、潤沢な石油資源を背景に大規模な富裕層市場が存在しています。
中でも特に注目されているのが「サウジアラビア」。日本企業の進出も少なく、ムハンマド皇太子が経済改革を推進し、海外の企業が進出しやすくなっています。しかしながら、実際には法整備がまだ進んでいない関係で、サウジアラビアへ進出するのであれば、現地に拠点を構えなくてはいけません。
その場所としては二つ候補があり、バーレーン(サウジ大都市圏に隣接(1h以内)、域内最安値での拠点設立が可能)、もしくはアラブ首長国連邦(ドバイなどに多数のフリーゾーンがあり、5,000人規模ながらも在住日本人の市場が存在)がおすすめです。
最近では、ケイジャン風に味付けした甲殻類(バケツで提供される)やハワイのローカルフードPoke Bawl(海老フライ、 スパイシーマヨネーズ漬けのサーモン等のお好みの具材を1センチ角にしてご飯にのせたもの)が流行っています。
魚種としては、サーモン、マグロは富裕層を中心に好まれて食べられることが多いですが、もともと遊牧民のため、魚を食べる文化がなく、日本のように魚の種類をあまり重視していません。「サカナ臭い」ものは受けが悪く、さつま揚げなどは苦手な人が多いです。(カニカマは例外)
日本食は富裕層の中で健康的なイメージがあり人気です。そのため、おいしい魚は、ヘルシー路線で訴求できるもの、または、よく使われる調理法である「照り焼き」としであれば、受け入れられるかもしれません。
日本の水産品が浸透していない地域であるため、現地でテストマーケティングを行いながら、求められるニーズとのズレを確認・解消し、商品開発などを行っていくのが良いと思われます。 また、富裕層は知人などから口コミを聞き購買行動をとる人が多いのでストーリー性を重視した商品が好まれます。さらに、商品のPRを行う際には、テレビなどより地元のインフルエンサーを利用したほうが、効果があります。大量消費社会であるので、競争過程で埋もれない戦略が重要です。
中東はインドネシアやマレーシアなどの国々に比べ、ハラルに対して厳格ではありません。(ただし、 各国それぞれで成分表の提出が求められます。)
ハラル自体は「強み」ではなく「当たり前」。国内で販売されているものはハラルであると思っています。そのため、市場参入を検討する際は、ハラルであること以上にブランド開発へ注力をしなくてはいけません。
GCC諸国は今後期待される市場。「Prozone Bahrain」はバーレーン王国に拠点を置き、テストマーケティングや現地での拠点設立、出張コーディネートなど域内への進出サポートを行っています。継続的な支援も可能ですので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
Prozone Bahrain Mail:kento.fukuta@prozonebh.com 担当:福田
令和2年10月1日、第22回「ジャパンインターナショナルシーフードショー」において、「農林水産物・食品輸出(GFP)プロジェクトについて」と題して、その取組内容について、説明を行っていただきました。
「GFP」とは、輸出に意欲のある生産者や事業者をバックアップするための取組のこと。 平成30年8月31日に開始され、農林水産省のほかに経済産業省・国税庁・JETROなどオールジャパンで取り組むプロジェクトで、海外との取引の際に生じる細かな規制や商習慣の違い、産地での品質差、生産量が十分に確保できないなどの課題に対してサポートします。 2020年9月末時点でのGFP登録者数は3,709件。このうちの60%が農林水産物食品事業者、40%が流通や物流事業者関係です。水産の関係業者はおおよそ300社程度であり、全体の1割程度。この他、海外のバイヤーも登録しています。
農林水産省、JETRO、及び輸出の専門家とともに生産現場等に直接出向き、輸出の可能性を無料で診断しています。令和2年9月末時点で372件の訪問診断を実施しました。 訪問後のフォローアップとして、個別に課題解決のための助言や提案、輸出支援等を行います。
GFP登録者の皆様には、GFPコミュニティサイトのマイページで製品の写真や説明など、PRを行っていただいております。 また、商品を気に入った方バイヤーとのやり取りができるよう、掲示板の設置など、プラットフォームの整備を随時行っています。
GFPに登録する輸出商社や輸出の専門家等をお招きしてセミナーや商談会等を実施。 (コロナ禍の現在は、海外バイヤーとの交流、ビジネスマッチング、セミナー等をオンラインで実施しています。) 海外バイヤーとの交流の一例ですが、ある水産加工会社が魚を使ったオーガニックラーメンを海外向けに売り出そうとしていました。しかしながら、企業単独でのPRや商談ではなかなかうまくいかなかったそうです。そこで、同じ商品をGFPを通じてサンプルを送り、オンライン商談会を活用してPRを行ったところ、EUの輸入商社と話が進み、現在、商品のテスト販売にまで漕ぎつけることができました。
・GFPグローバル産地づくり推進事業 農林水産物・食品の輸出を更に拡大していくためには、海外から求められる品質・コスト・ロットに対応した生産や海外の規制等に対応した産地「グローバル産地」の形成が必要となります。 このため、本事業を活用し、海外市場のニーズ、需要に応じたロットの確保、相手国の求める農薬規制・衛生管理などに対応した生産・加工体制を構築するための「GFPグローバル産地計画」の策定及び計画の実施体制の構築、事業効果の検証・改善等の取組について支援を行います。 令和2年度は、水産加工や、製茶など多岐にわたる事業者が採択されています。
・商品リクエストサービス 本サービスは、「GFP」に登録している輸出商社や海外バイヤーから、こういった商品が欲しいとの要望を受けた場合、条件に合致する生産者を紹介することです。 逆に、生産者サイドからのこういった商品を輸出したいと希望があれば、その情報を商社に提供してマッチングを図ることもできます。
・デジタルカタログの作成 訪問診断を受けた生産者やメーカーを中心にデジタルカタログを作成しています。 実際の商談会で、紹介資料として活用にも活用できます。
・ビジネスパートナーマッチング 訪問診断フォローアップとして、GFP登録者に対し、訪問診断で明確になった課題等を踏まえ、輸出に係る基本的な質疑から通関を切るための実務、輸入規制等の制限など輸出に関わる相談を受けるサポートを始めました。 輸出実績のある商社や輸出コンサルの方がビジネスパートナーとして、国際認証を取得する際のアドバイスを行っています。本サポートは無料で受けられますので、ぜひご活用ください。(オンラインでもサポート可能)
・食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業 農林水産物・食品を海外へ販売する際、輸出先のニーズを満たすために必要な食品製造事業者等の施設の整備(新設及び改修)、機器の整備を支援する事業です。 そのほか、毀損した輸出商流の維持・拡大を図る補助事業などもあります。
輸出事業に関心がある方はぜひ「GFP」に登録をしてください。登録作業は簡単で5分程度で完了します。 紹介した様々なサービスを受けたり、輸出する国の規制の変化、補助事業など有用情報を知ることができます。
詳しくはこちらをご覧ください。
令和2年10月2日、第22回「ジャパンインターナショナルシーフードショー」において、「農林水産物・食品の輸出拡大に向けた輸出先国の規制対応について」と題して、その取組内容について、説明を行っていただきました。
国内の食品市場規模は人口の減少に伴い縮小していますが、世界の飲食料市場規模を見ると、2015年は890兆円、2030年には1,360兆円で約1.5倍増加すると予測されています。 特にアジアでの需要増加が顕著であり、これをいかに輸出につなげられるかが、日本の農林水産業及び食品産業が発展するための課題となっています。
直近では新型コロナウイルスに影響を受け、落ち込んでしまっているものの、昨年までは日本からの輸出は年々増加傾向にありました。 特に輸出金額の多い国・地域は、香港、中国、アメリカ、台湾であり、アジアが多くを占めます。 対前年同月(8月)比で輸出額の増加が大きい品目は、かつお・まぐろ類(主にタイ・ベトナム向け)、アルコール飲料(主に香港・中国・台湾向け)、インスタントコーヒー(主にロシア・アメリカ向け)であり、逆に輸出額の減少が大きい品目はホタテ貝(主に中国向け)、ぶり(主にアメリカ・中国・香港向け)、牛肉(主にカンボジア・香港・マカオ向け)です。
日本の農林水産物・食品の更なる輸出拡大のための課題として、「国内での輸出手続の煩雑さ」や今なお続く「原発事故後の輸出先国での日本産食品への規制」などが挙げられます。 これらに対する措置として、輸出促進に政府一体となって取り組むための体制整備を行うことを目的とした「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」が令和2年4月1日から施行されています。
もう少し詳しく説明すると・・・
農林水産大臣を本部長とする「農林水産物・食品輸出本部」を設置。 どの省庁がいつまでに何を行うのかを「実行計画」に取りまとめ、進捗管理を行っています。 この「実行計画」の中には、輸出先国の輸入に関する規制や障壁となるものを緩和・撤廃するなどの対応も含まれています。 水産物の関係では、「シンガポールへの活ガキ輸出のための衛生管理プログラム認定」などを進め、これまで三重県からしか輸出ができなかった「活ガキ」が宮城県、大分県を加えた3県から輸出可能になりました。また、福島原発事故後の日本産食品に対する輸入規制については、昨年6月以降でみると、4か国については規制が撤廃されています。 現状、これまでのアメリカやEU諸国と同様に、アジア諸国でも輸入基準が厳しくなってきています。 例えば、未実施ですが、中国向けの畜水産物、茶、加工食品、アルコール飲料の輸出について、公的証明書の提出を義務付ける方針が打ち出されています。 これについては、日本を含めて多くの国が異論を唱えている状況です。規制の中には、科学的根拠に基づかないものがあり、このような科学的根拠に基づかない規制に関して、日本政府は引き続き協議し、撤廃を求めていきます。
これまで農林水産省、厚生労働省、国税庁、都道府県等がそれぞれ法的根拠のない通知に基づいて行っていた、輸出に必要な「輸出証明書発行」、「生産区域指定」、「加工施設認定」を「輸出促進法」に基づく手続規程として法定化。 このことは、相手国にとっても法律に則った手続となるため、信頼性も増しました。 さらに、「施設認定」については、国や都道府県以外にも、専門的な知見を有する民間企業(一般社団法人日本食品認定機構、一般財団法人日本食品検査)でも認定することが可能となり、よりスムーズな対応を実現しています。 また、輸出促進法に基づく手続規程として、国・品目別に定められていた約180の輸出証明書発行、施設認定等の手続を分かりやすく一本化し、ホームページに公表することにより利便性を向上させました。 この他、様々な窓口において発行していた「原発事故関連証明書」、「自由販売証明書」、「衛生証明書」、「漁獲証明書」等をオンラインで発給するシステムや、輸出相談窓口の一元化については、現在整備中です。
対米、対EUへの輸出に当たっては、水産加工品はHACCP対応施設で製造されている必要があるため、HACCP対応施設数が増えるように努めております。
世界の食品市場はどんどん成長していきます。この商機を逃さず、いかに経済を活性化させていくのかが重要です。 日本の昨年度(令和元年度)の輸出額は9,121億円でしたが、政府としては2025年までにこれを2兆円、2030年には5兆円を目標としています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行が早期に終息し、一刻も早くインバウンド消費や輸出額の伸びが期待できる環境になって欲しいと考えています。 最後になりますが、引き続き、現場の声を反映していき輸出の拡大の一助になるよう努力していきます。
※本資料の情報は、セミナー実施時点のものとなります。最新の情報については、農林水産省ホームページからご確認ください。
令和2年10月2日、第22回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にてほやほや学会によるセミナーが行われ、ほやの魅力や、認知度向上・販路拡大の取り組みを紹介していただきました。
「ほや」は宮城県を代表する海産物で、震災前には、全国の生産量の80%を占めていました。その多くは韓国向けに販売されていましたが、震災後は原発事故の影響による禁輸措置が現在も続いており、輸出がすべてストップ。 そこで、苦境に立たされた「ほや」の販路を拡大するため、ほやほや学会を立ち上げ、Facebook、Instagram、Twitterを通じて「ほや」の活用例やレシピなど情報発信を行い、持続可能な食文化の醸成に寄与することを目指しております。
「ほや」のさらなるPRを行うべく、まずは「強み」「弱み」などその立ち位置について、考えてみました。
このように「ほや」を分析する中で、課題となる部分が見えてきました。この課題に対し、「活躍の場を広げる」「ブランド化」「ファンの育成」という3つの軸で、取り組みを行うことで、「弱み」を「強み」に変え、さらなる認知度向上、消費量拡大を図っていきます。
前述の3つの軸に対しての取組内容を説明します。
「ほや」は刺身で食べることが一般的で、それ以外の調理方法はあまり知られていません。 そのため、加熱、乾燥、殻からとった出汁など調理法によって生まれる様々な味わいについて料理人の方々に提案。その結果、料理のシェフに食品としての実力が評価され、新しいメニューが次々と生まれています。
「F1層と言われる20~34歳の女性やF2層と言われる35~49歳の女性を対象にほやの試食・アンケート会などで嗜好等調査し、8割の人が「ほやをまた食べたい」という結果になりました。 その結果をメーカーや飲食店にフィードバックし、まだあまり知られていない「ほや」が多くの女性に人気であることを理解してもらうことで消費の拡大を図っています。
どうしても「においがある」とのイメージが付いている「ほや」ですが、水揚げ後、素早く殻をむき、糞と内臓を取ればにおいを抑えることができます。糞を抜いた殻付ほやのブランド化。そして産地でむき身にすることで鮮度が保たれた「ほや加工品」が徐々に浸透していくことで、手軽に美味しい「ほや」を食べられる機会が増えてきています。
また、「ほや」は、カロリーが低くミネラル豊富。さらに「プラズマローゲン」という成分が、認知症予防に効果があると言われ注目を集めています。そのため、「ほや」を材料としたサプリメントも販売されています。
「ほや」の特徴として、ディープなファンの存在があります。 仙台駅近くの専門店に県外から通うファンや、ほやほや学会が主催する「ほやづくしツアー」に何度も参加するファンなど、マイナーな分「ほや」には根強い人気があります。 また、「ほや」に関するイベントは他に比べて客単価も高いそうです。
このように熱心なファンを持つ「ほや」ですが、飲食店・小売店が取り扱いを始めても、その情報を知らなければ購入することができず、店側も売れなかったから販売を中止するというお互いにとって悲しい結果になってしまいます。そのため、ただ「ほや」を勧めるだけでなく、「ほや」を取り扱えば反響があるという流れを作り、さらなる消費拡大を行うため、ほやほや学会はファンに向けたプロモーションを実施しています。
ほやほや学会では、イベントで獲得したファンの方向けに、「ほや」に対する興味が一過性のものにならないよう、HPやInstagram、Twitter等のSNSを通じて、常に最新の情報を届けることで、ファンの定着を図っています。
各SNSをフォローしているファンを「ほやほや学会員」と名付け、さらに検定試験に合格したコアなファンの方には「ほや伝道師」の称号と認定証が授与されます。 当面は、「ほやほや学会員」を1万人に、「ほや伝道師」を1,000人にまで増やすことを目標としています。
昨年に引き続き埼玉県で行われた「ほや」の販売イベントでは、同県で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したためイベントの告知を控えるよう要請がありました。 そのため、売上は昨年の1/3程度にとどまったものの、オンラインを活用し、リアルとオンライン上でイベントを同時開催することにより2方向から盛り上げることが出来ました。
これまで、「ほや」の写真をSNSに投稿すると「ほや」商品がもらえる「#ほやラブ」キャンペーンや、ファンからレシピを募った「ほやレシピコンテスト」、水揚げ時期の夏に限らず「ほや」を楽しむ「冬に食べよう ほやフェア」など、様々なイベントを開催してきました。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により、毎年開催されている「ほや祭り」が中止になったことを受け、「勝手にオンラインほや祭り」を開催。 メニュー提案やライブ、飲み会や「ほや」を使った商品の販売などをオンライン上で実施したことで、これまで宮城まで足を運べなかった地方のファンも参加が可能になりました。
これらのイベントはすべて、その時限りで終わらないようweb上に取り組み結果が残されています。このほか、新たな取り組みとして、ベトナムへ「ほや」を輸出するため宮城県やNPO法人等と加工業者が連携して活動を行っており、ベトナム語のメニューブックや動画を作成してオンライン商談を進めています。
「ほや」の消費拡大のためには、ほやほや学会だけでなく、自治体、漁協、卸、飲食店、マスコミなど関係者が一丸となって「ほや」の魅力を伝えることが必要です。このセミナーを通してファンとなった方も、是非その一員となっていただき、「ほや」の魅力を広げ、盛り上げていきたいとのことでした。
食品関係の事業者や個人の「ほや」ファンなどに広く情報提供するため、ほやほや学会では「ほや取扱指南書」や「ほやガイドブック」をHPで公開しています。こちらもぜひご覧ください。
「ほや」についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。