平成28年2月29日気仙沼プラザホテルにて、年々増加するイスラム圏からの訪日観光客向けのインバウンドマーケットを販売機会と捉えた、販路拡大のノウハウに関するセミナーが開催されましたので、その内容をレポートいたします。
非イスラム国で提供されるものは食べられないという基準を持った方もいれば、「酒」と「豚」を使用していなければ良いという考え方を持った方もいる。絶対にこうでなくてはいけないという基準はない模様。
「ムスリムフレンドリー」とは「完全ではないができる限りイスラムの教えに従った対応」 → ムスリムが自分で受け入れるかどうか判断するための「情報開示」が必要 例えば、レストランでいえば キッチンで、豚を調理する場所を分ける。 包丁、まな板を分けて使用する。 自社で基準を決め、従業員に徹底。(レストラン)
水産加工品等で言えば、「あじの開き」などはムスリムの方も原材料表示を見ればハラルであると分かるそう。ただし、高次加工品となると判断がしにくくなるため、選ばれにくくなる。そのため、「ノンアニマル・ノンアルコール」をパッケージ上でしっかり謳い、ムスリムの方に判断・納得して商品を購入いただく取り組みを行っているところがある。先行事例として石巻の「一般社団法人石巻元気復興センター」では、原料や調味料において全て3段階まで原料追跡をし、豚も牛も鶏もアルコールも使用していない“ノンアニマル・ノンアルコール”の水産加工品を作り、販売を行っている。
ハラル対応の商品を新しく開発する場合、イスラム圏でどういった日本食が受けているか、海外進出企業などの動向や先行事例の研究を行い、さらに市場調査を重ね商品開発を行う。
国内ではムスリムの人口は決して多くないが、大学に来ている留学生やモスクなど、ムスリムの方が集まる場で試食を行い、意見を聞くことも有効である。
01~14年 年平均+8.3%10~14年 年平均+11.7% と、ここ5年は増加が著しい。
10年~14年 年平均22.6% 日本政府観光局「訪日外客数2014年」より
アセアンからの訪日客は急増しており、すでに無視できない存在となっている。 アセアンの約半分はムスリム。イスラムの知識はこれから必要となる。
シンガポール 53,604ドル 日本 46,661ドル
他のアセアン諸国はマレーシアを除くと日本の1960年代並。
つまり経済の伸び率も高く、今後消費拡大が期待される国の内、イスラム圏の国が多く存在する。 彼らに向けたサービス提供や商品作りはブルーオーシャンの市場であり、益々の発展が予想される。
また、販売には、パッケージのデザインも大切。その国の感性に合うパッケージが手に取ってもらうための大きな要素のひとつである。日本製品で最近人気なのは鹿児島発の「侍ラーメン」(ノンアニマル・ノンアルコール)。認証はとっていないが、ラーメンは保存用にアルコールを使うことが多い生麺を避けて、乾麺とし、売り場で目立つ華美な金色のパッケージでムスリムの方の支持を集めている。
どういう商品が人気があるのか ムスリムにとって日本食は食べてみたいが、ハラムなものが多く警戒してしまう。 中近東のイスラム教徒は、お酒が飲めないからお茶に人気がある。 中近東では、中国産、インド産のお茶を輸出しているが日本産のグリーンティーとは異なり、こげ茶色。日本のお茶は、甘くて美味しいと評判。 一昨年、JA鹿児島のお茶(グリーンティー)でハラル認定をとり、アブダビ展示会へ出展した。この展示会に出展した870社のうち日本企業は3社だった。
ハラルと聞くとハードルが高く感じますが、「ノンアニマル、ノンアルコール」の提示でうまくいっている例もあり、必ずしもハラル認証を取らなくてもいいということが分かりました。イスラム圏の経済的な成長も勢いが増している今、ハラル向けのビジネスを始めてみようという方の参考になったのではないかと思います。
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。