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セミナーレポート 「東北復興水産加工品展示商談会2024事前セミナーレポート」

セミナーレポート② 売れるものづくりの考え方

 令和6年7月9日(大船渡市)、7月10日(気仙沼市)、7月11日(石巻市)において、「東北復興水産加工品展示商談会2024」の出展に向けた事前セミナーとして、「売れるものづくりの考え方」と題した講演が開催されました。
 本セミナーでは、現在の小売業(百貨店)を取り巻く状況と消費動向の変化と、百貨店バイヤーを長年勤められた立場から見た売れる商品・ほしい商品とは何か等についてご講演いただきました。

講師
FプラスHDK
代表
日髙 博昭

<はじめに>

 私は45年間百貨店に勤務し、うち25年は食品の仕入れを担当しておりました。今回は「売れるもの」をテーマに掲げておりますが、確信をもって「売れるもの」は存在しません。世の中の動きを分析しつつ、百貨店で仕入れを担当していた立場から見た、百貨店バイヤーが求めるもの、消費者が欲しいもの等をお伝えし、少しでも販路拡大のお役に立てできればと考えております。

<時代の変化~昭和・平成・令和におけるお客様(消費)の変化~>

 全国の百貨店の総売上は、ピーク時(平成3年)で約9兆7,000億円、店舗数も310店舗ほどありましたが、現在はどちらも半数ほどに減少。これまで売上の6割を占めていた“衣類”が不調となり、現在では“食品”が上回るなど売上構成比も変化しています。これに対し、スーパーは全国に約1万7,000店舗、コンビニも全国に約5万7,000店舗もあり増加傾向で、近年はドラッグストアやネット通販等の台頭も目立っております。こういった時代による変化を項目ごとにみていきたいと思います。

1.小売業(百貨店)を取り巻く社会環境と売り上げ低迷の要因と対応

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  • 顧客(お客様)の変化

     以前まで「お客様は神様」と言われていましたが、現在、「お客様はわがまま」と表現されるほど、クレームは年々増加し、社会問題になっています。しかし、クレームをつけるお客様こそ、何が悪いのか(原因)をしっかり教えていただける重要なお客様となることは覚えておきたいポイントです。

  • 贈答習慣(お中元・お歳暮)の変化

     百貨店の店頭販売におけるお歳暮の売上シェアは、ピーク時(団塊世代)に60%もあったものが、現在では20%以下にまで縮小しています。主な原因はネット通販の利用者が増したことです。購入の手軽さだけでなく、ポイント制が主流となったことで、購入するメリットが大きいことが起因しており、百貨店もネット通販の導入が進んでいます。また、贈答習慣が減少した一方で、自分へのご褒美としてギフトを購入するケースも増えています。

  • 魚離れ

     最近では、“魚離れ”という言葉よく耳にします。ただし、単に魚を食べなくなった訳ではなく、骨がある・臭いがする・ごみが出る等の理由で丸の魚や切身が売れなくなっただけで、骨が取ってある魚や調理済みの魚は売れ行きが好調です。数年前の回転寿司ブームによって、サーモンやマグロ等もかなり消費されています。

  • 惣菜の売上好調

     専業主婦の割合が減り、共働き世帯が7割を超えていますが、百貨店でもデパ地下が盛況であるように、手軽に食べられる惣菜が売れています。ただし「目で見て美味しそう」だけでなく、「食べて美味しい」商品こそリピートに繋がりますので、ものづくりにおいて非常に重要なポイントです。

  • 便利で近いコンビニの普及

     昔は冷凍食品=安いというイメージであったものが、現在は電子レンジで簡単に調理できる商品が増えています。前途のとおり、今や約5万7,000店舗にまで普及しているコンビニでは、新しい商品がどんどん登場しており、魅力的な冷凍食品も増えています。

  • インバウンドによる経済効果

     コロナの収束と共に、海外からのお客様が戻ってきて、主要都市ではインバウンド効果が非常に高くなっています。ただし、地方はそれほどではありませんので、今後は地域の特色を生かしながら獲得していく必要があります。

  • 商品値上げなどによる消費低迷

     昨年〜今年にかけて約4万点もの商品が値上げされています。値上げの時は、趣向品(お菓子・果物)といった、食べなくてもよい商品は売れ行きが一時的に鈍くなるといわれています。

<売れるもの・欲しいもの>

 いわゆる「希少価値の高いもの」を除き、絶対に売れる商品というのは存在しませんが、バイヤー経験のある私が最も欲しい商品とは、その会社が歴史と共に歩んできたド定番商品です。このような商品はこだわりをしっかり伝えることがポイントです。これこそ百貨店が得意とすることで、物の良さを伝えるには対面販売が一番効果の高い手法となります。
 また、食品ロスの観点から、賞味期限が長く、鮮度管理された商品がこれからもっと求められるようになります。特に海外向けに販売するのであれば、賞味期限が1年以上の商品が望まれます。これらは商品全体に言えることですが、もう少し細かく説明していきたいと思います。

  • 物つくりについて

     「どこで」「誰に」「どういった特徴」で販売するかが重要です。特に「どういった特徴」という点について、加工品はある程度鮮度が求められるものの、例えば、高価格帯(800~1,000円)のさば味噌煮が飛ぶように売れない訳で、刺身でない限りは味の違いはそこまでわかりませんので、ターゲットにしている消費者層の適正価格をしっかり考慮してものづくりに取り組むことが必要です。

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  • ブランド・口コミ・マスコミ

     ブランド=信用です。信用を増やす手段は大きく分けて「マスコミ」と「口コミ」があります。「マスコミ」はお金を払えば払っただけ宣伝してくれますが、効果は一時的な場合もあります。一方で「口コミ」はお金がかからずに徐々に広がっていくものです。うまく使い分けることが重要です。

  • 販売責任と適正価格

     過剰な利益は長続きしませんので、適正価格であることが重要です。長く続いていく商品とは、ブランド力であり、お客様の楽しみにつながるものであり、その企業の顔となる商品です。だからこそ、コンプライアンス(産地表示、アレルギー表示、過大・強調表示等)は正確であることが求められますので、特に注意しましょう。

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<お客様に喜んでいただく事で 売上、集客に繋がる(物産催事・売り出し等)>

 「売上」=「客数」×「単価」です。但し、人口は減少する一方で客数増加は見込めません。だからといって単価を上げるのではなく、例えば、期間限定や数量限定で増量してお買い得感を作る等の仕掛けをしつつ、客数を獲得していくことも方法のひとつと考えます。

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 展示商談会に出展する時も同じです。わざわざ足を運ぶバイヤーも何かしらのメリットを求めているものです。だからこそ「展示会期間中に購入してくれれば特別価格で販売」(数量限定でも可)と提示すれば、その日・その場で売り上げを確保できる可能性がグッと高まります。
 これら私の経験談を踏まえた内容を参考にしていただき、販路開拓に繋がることを期待しております。