令和6年2月21日、「第21回シーフードショー大阪」において、「関西人が知らないムラサキイカの世界」、「売れてますムラサキイカ!!」、「アカイカ研究前線」と題した3つのセミナーが開催されました。 本セミナーでは、近年漁獲量が減少したスルメイカに代わり、流通が拡大しているムラサキイカ(アカイカ)などの特徴と需要、現状と展望等について講演いただきました。
全国いか釣り漁業協会は、いか釣り漁業に従事する漁業者の団体で、いか釣り漁業に関する調査研究、知識の普及及び技術の向上に努めております。 いか釣り漁業は、夜間に自動いか釣り機で漁獲することから、混獲がなく、生態系にも優しい漁法です。また、捕獲後は魚体を船内で急速凍結するため、鮮度の良い状態で保存されます。近年はスルメイカの不漁が続くなか、ムラサキイカの漁獲が増加傾向にありますが、北海道・東北地方以外ではまだ馴染みが薄いため、関西の皆様にもぜひ知っていただきたい食材です。
ムラサキイカの大きさは、スルメイカ(30㎝)の倍程度で、釣り上げた段階では紫色ですが、皮を剥くと白色になります。ムラサキイカの標準和名はアカイカですが、南米で獲れて、生食に適さないアメリカオオアカイカと区別するため、ムラサキイカと呼んでいます。 ムラサキイカには冬~春生まれ群と、秋生まれ群があります。前者は、三陸沖あたりで12〜3月頃に漁獲され、後者は、太平洋の真ん中あたりで夏に漁獲されます。ムラサキイカは、資源としては豊富であると考えられていますが、漁場を見つけるのが困難なため、漁船間で連絡を取りながら、漁獲場所を探って漁をおこなっています。
夏漁場と冬漁場があり、主流である夏漁場は5月~7月までが1航海で、漁場次第では8〜9月に2航海目を行います。最近は、スルメイカが不漁のため、2航海するムラサキイカ船も増加傾向にあります。 操業パターンは主に、ムラサキイカ・スルメイカ兼業とスルメイカ専業で分かれ、兼業の場合は、5月頃にムラサキイカ漁、9~10月頃に日本海沖でスルメイカ漁を行います。一方、スルメイカ専業は、6〜12月まで操業しています。現在は、兼業の割合が増えつつあります。
今年(2023年)の漁獲量は、スルメイカ1,400〜1,500tに対し、ムラサキイカは3,000トンとなりました。 数年前の価格は、300〜400円/kgで、主に珍味加工原料として使用されていましたが、国産スルメイカの不漁に加え、外国産生食用イカが減少していることを受けて、主に回転寿司店からの需要が高まったことで、価格が倍以上に上昇しています。 ムラサキイカは、日本の漁船が漁獲し、船内で高鮮度のまま部位ごとに分けて加工処理~凍結を行っているので無駄なく利用できます。国内での漁獲地域としては、八戸86%、函館14%の割合と、北方のみで漁獲されているため、なじみのない地域の方も多くいらっしゃると思いますが、今後は、特にこれまで流通の少なかった関西を中心に、ムラサキイカを食べていただきたいと考えております。
2013年は大〜中型のイカ釣り漁船92隻のうち、ムラサキイカ漁船は約31%(29隻)しかいませんでしたが、2023年度には大〜中型38隻のうち、約65%(25隻)がムラサキイカ漁船となり、全体の登録船数は減少しながらも、ムラサキイカ漁の割合は高まっており、漁業資源としての重要度が分かります。
漁獲は、8月の水揚げ1回が大部分を占めていますが、2019~2020年は2回の水揚げがあり、年によっては冬漁(3月)に水揚げされるケースもあります。漁獲量は、約3,000~4,000トンで、総じて安定しています。
ムラサキイカの胴部分は、これまで乾燥珍味に利用されてきましたが、近年は生食や回転寿司のネタとしても流通されています。耳部分は、イカそうめん等の生食用、足部分はタコの代用品としても利用されています。
ムラサキイカの単価は、例年400〜500円/kgで推移していますが、2022年度は漁獲が少なく、例年の倍以上となる900円で取引されました。特に、胴部分開き耳取り製品は、ほとんどが刺身原料になったと見られ、価格は1,000円/kgを超えました。 2023年度は夏漁2回と冬漁を合わせて2,900t以上の水揚げ量が見込まれます。2024年度は、北海道や石川県でも出漁すると見られ、計30隻以上の出漁が想定されます。ムラサキイカは、資源としての潜在力が大きく、またスルメイカの動向も不透明なため今後も需要の増大が見込まれます。
アカイカの英名は光って飛ぶイカが由来となり、「Neon Flying Squid」と呼ばれます。ツツイカ目アカイカ科でスルメイカと同じ分類です。表示名はアカイカですが、流通名はムラサキイカです。 亜熱帯~亜寒帯域に広く分布し、秋と冬春の2つの季節発生群があると言われています。南北に大きく回遊し、二つの産卵域と索餌域を1年で回遊して移動しますが、秋生まれ群の雄は回遊せずとどまります。大きさは、雌が80cm、雄が60cmとイカの中でも大きい方で、基本的には50cm程度のものが漁獲されています。 我が国のイカ釣り漁業は、以前はスルメイカ漁が主流でしたが、この数年間で0.6万〜4.6万tも漁獲量が減少し、漁船数も減ったことで、供給が大幅に不足しています。これを受けて、当センターでも本格的な研究に乗り出しました。
平成30年〜令和2年までの調査の結果、亜寒帯前線付近で8月以降も漁獲が得られる大きな漁場を発見。これにより、5〜7月だった出漁期間を9月末まで延長する船が増え、これまで東経海域だった漁場も、西経海域まで拡大しました。
さらに、漁場を発見すべく、現在取り組んでいるのが水温の壁構造です。イカは水温適性が狭く、敏感であるとされているため、一定の水温差の範囲を超えて北上できないのではという仮説のもと、水温が南北に急勾配となる壁構造が漁場になる可能性を調査し、データ解析を進めています。 また、まだ実証段階前ですが、ドローグ付きの衛星ブイでアカイカを追跡することで、漁場を推定する調査もおこなっています。
2021年以前のイカの需要は、乾燥珍味、短冊、ボイル、塩辛、刺身でした。価格帯は、スルメイカのラウンドを参考にすると、全体で350〜700円/kg。一方、アカイカは、国産・中国産共に350〜400円/kgでした。 現在は、スルメイカの価格が大幅に上昇し、1,000円~1,500円/kg以上で取り引きされています。アカイカにいたっては、調味焙焼の他、短冊・リングや軟骨は唐揚げ等に、胴体は刺身として回転寿司チェーン等でも利用され、単価も上がっています。
当センターでは、実際に乗船して得たサンプルを基に、加工業者の皆様へのヒアリングも実施しています。 価格が見合わない乾燥珍味以外は、すべて使えるという結果が出ました。他にも数量、販路開拓、製品企画等の課題点はありますが、2航海体制が定着して漁獲量が増えたことや、出漁期間・船内加工方法により、活用に有効であるとのヒアリング結果がでています。
アカイカは現在、寿司ネタとして回転寿司チェーン等の市場への供給が行われています。日本に流通されるイカは、タイやベトナム等の海外加工と、三陸地区の国内加工があります。刺身の市場参入は始まったばかりで、北海道や青森県、そして最近では東京のスーパーでも見られるようになってきました。ただ、一夜干し等はまだ開拓されていません。
生鮮売場全体の構成を見ると、お造りと刺身の盛り合せは、国産(北海道、東北、日本海沿岸県、長崎、沖縄等)のスルメイカ、ケンサキイカ、アオリイカ、ヤリイカ、ソデイカが主体で、海外産モンゴウイカ、アオリイカが盛り合わせに利用されています。 とあるスーパーでは、鮮魚と刺身柵は、長崎県産ケンサキイカや、モロッコ産モンゴウイカが販売されており、冷凍加工品は中国産のアメリカオオアカイカやスルメイカ等が利用されていました。また、他のスーパーでは、刺身柵がマレーシアとモロッコ産のコウイカ、刺身は海外産のモンゴウイカが販売されており、長崎県産ケンサキイカは高級品として扱われています。
刺身では、国産スルメイカとケンサキイカが主流で使われていますが、海外産のモンゴウイカ等のシェアも大きいです。しかし、モンゴウイカの輸入量は、30年前まで67,000tだったのが、近年では7,100tまで減少し、単価は571円だったものが1,441円まで高騰しています。また、令和4年の水産物流通適正化法の施行に伴い、UAE、イエメン、ソマリアからの輸入が禁止され、産地のタイ、ベトナムでは漁獲量が減少し、さらに円安で輸入量減少に拍車がかかっています。 今後、モンゴウイカの漁獲が不安定になるとその代替品として、アカイカがスーパー・量販店で売れる可能性はあると考えています。加工業者の皆様から望まれているのは、安定した漁獲量です。これについて、開発調査センターとして貢献できればと考えています。
令和6年2月21日、「第21回シーフードショー大阪」において、「流通と店舗の取扱いを改革することで味が変わる・新ブランド『ほやの極み』の事例」と題したセミナーが開催されました。 本セミナーでは、「ほやの極み」ブランド化の取り組みや、その後の展開等についてお話しをいただきました。
「ほやほや学会」は、SNSを通じてほやの活用例やレシピなど情報発信をしたり、ほやに関するイベントを企画するなど東北産ほやの認知度向上・販路拡大をミッションに掲げて活動をしています。また、宮城県内には、ほやを扱う事業者様が沢山おり、以前から皆で力を合わせてほやを広めなければといった課題認識があったことから、2021年9月に「宮城ほや協議会」を発足し、ほやの品質向上やブランド化を図るべく、24社の加工事業者様と共に、ほやの品質向上や、ブランド化、活用方法の提案などをチームで取り組んでおります。
ほやは、世界に2,300種類以上もあるとされていますが、日本で食用されているのは、「まぼや」と「赤ほや」が主流です。生物学的には貝でもなく、魚でもなく、動物に近い脊索動物の一種として分類されています。 流通されているほとんどが養殖されたもので、宮城県では、“みやぎのさかな10選”に選出されており、全国一位の生産量を誇ります。但し、売上ベースで見ると、令和3年度生産額実績で、ホタテ22億円、牡蠣24億円に対し、ほやは4億円と、まだまだ低い状況にあります。 また、日本の11倍もの量のほやを消費する韓国が2011年の震災によって、禁輸政策を敷いたことで、宮城県の生産量は2010年に8,663トンだったものが、2021年は4,355トンに減少し、逆に新たな輸出地となった北海道は、生産量が大幅に伸びています。しかし、ALPS処理水放出による風評問題により、現在は北海道も厳しい状況におかれています。 さらに、海水温が約1.5〜2℃上昇したことで、例年1月ごろだった産卵時期も2月までずれ込んでおり、 “夏腐れ”や病気等が不安視され、今年の生産量は減少となると予測されています。これによって価格高騰の恐れもありますが、それでも消費者に食べたいといわれる食材とすべく、10年後、20年後を見据えて取り組む必要があると考えております。
一般的にほやは臭いと思われがちで、食わず嫌いの方もいらっしゃいます。しかし、水揚げ直後や、すぐに冷凍加工された鮮度のいいほやに臭みはありません。ほや特有の味こそありますが、アレンジしやすくて食べやすい食材です。生産地である宮城県では鮮度のよいほやが流通されていますが、関東以西では時間が経過して劣化したほやが多く流通されていることから、臭いというイメージが定着してしまいました。よく生の丸のままが最も美味しくて鮮度がいいと思われていますが、実はそうではありません。 そこで、2018年頃より、劣化の原因となる時間、温度、殻汚れ等に様々な仮説を立てながら、調査と検証を実施しました。 まずは、水揚げ後すぐにむき身加工したもの、殻付きのまま時間を経過させたもの、殻が汚れているもの等、様々な条件のほやを味覚センサーで検査したところ、水揚げ後すぐにむき身して冷凍したほやが最も渋みや苦みが無く、劣化が抑えられたという結果になりました。
2019年からは栄養面の調査も実施。8〜10月に収穫されたほやがもっとも栄養価が高いことがわかりました。 また、宮城大学に依頼して臭気成分を調べたところ、冷却したほやは2日目まで変化が見られなかったものの、30℃で保管したほやは7時間後に急激な劣化が見られ、温度は重要であることが再認識できました。
つぎに官能調査として、殻のついたままのほやを水揚げ後それぞれ1日から3日経過したもの、殻のついたまま糞を除去した糞抜きのほやで水揚げ後3日目のもの、そして殻のついたまま真水氷に1日さらしたもの、また水揚げの日にむき身加工をし、3日経過したむき身加工のほや6種の官能調査を行いました。結果、殻のついたまま水揚げ経過後3日目のほやと、同じく水揚げ後殻のついたまま真水氷にさらして1日経過のほやが低い評価となりました。鮮度が良いにも関わらず、真水氷にさらしたほやの評価が低いことに関係者も非常に驚きました。
これらの結果から、「宮城ほや協議会」では、本当に美味しくて品質のよいほやの流通のために、①温度(冷やした状態)を一定に保つ、②真水を吸わせない、③時間(水揚げ2日以内)を経過して消費させない、の3点をクリアしたほやに対して「ほやの極み」というブランドの認定をおこなうことにしました。
これには、「宮城ほや協議会」の会員と関係者30社以上の方々に関わっていただき、2022年5月より認証を開始。「ほやの極み」ブランドは、消費者が食べるまでが重要であることを認識し、出荷後にどのように管理・処理がされているのか、水揚げ〜加工〜市場〜店舗までの全てにチェックリストを設けることとしています。
現在認定している「ほやの極み」商品は、殻つき、むき身生、むき身冷凍ですが、仮に大阪まで流通させる場合は、むき身冷凍に限り認証対象としています。出荷後の扱い方も市場にあまり知られていなかったので、適切な扱い方法も基準を設け、情報を共有しやすくする取り組みも行っています。
がってん寿司様(回転寿司チェーン/関東) 管理は容易ではないものの、他社に真似できないことに意義があるとの理由から導入いただきました。2022年6〜8月で2万3000個分のほやをメニューとしてご提供いただきました。
バロー様(スーパーマーケット/東海) 宮城県庁からサポートをいただき、2022年6〜7月にフェアを開催したところ、地域にほやの根強いファンがいて、期間中に30ケースが完売する店舗や、近隣店舗から商品を譲ってもらう店舗も見られました。昨年の売上結果では、前年比140%程度増と、一定以上の消費者数がいることを確認できたとのことでした。
スーパー島田様(スーパーマーケット/関東) 他店との差別化を図った商品構成が特徴のスーパーマーケットですが、朝どれのほやを新幹線で配送し、2年ほど取り扱っていただいております。説明会を開催しながら取り扱い方法をレクチャーした結果、理解度が高く、ブランド展開を支えていただいた企業です。
その他 宮城県のサポートで、昨年度〜今年度まで茨城、栃木でもフェアを実施しています。ほや専門店等にも導入していただき、水揚げ時期や認定までのストーリー等が書かれた独自のポップを展示していただき、好評です。 ・「お客様からの品質に対する評価が高く、ブランド定義がしっかりしているのでPRしやすい」 ・「ブランド認定期間が水揚げ後1日と短いことが課題と思っていたが、売れ残った場合でも、通常のほやとして塩辛や蒸しほやに加工できるので問題なく、値段が高くてもそれ以上の価値がある」 ・「認知度がまだ低いので、もっと広めて欲しい」 といった声も聞かれています。ただ、「興味はあるものの、、、」という企業様もまだあります。
スタート時は鮮度管理基準の浸透に力を入れており、ターゲットを考えずにPRを行っていた時期もありますが、これからはターゲットを定めつつ、美味しいほやのPRに取り組んでいきたいと考えております。 「ほやの極み」ブランドは、値段や管理等の条件が加わり、「殻付きほや」認定のほや関しては導入が容易にできないものの、「冷凍・冷蔵ほや」の認定品については比較的容易に鮮度管理できるので、大阪、沖縄、海外でも展開できます。 消費者に対しては、ブランドの背景や“映え”感等も求められるので、「ほやの極み」ブランドはこのようなニーズにも十分通用するものと考えます。今後はさらに認証取得商品を増やしつつ、消費拡大を目指していきます。 現在はパッケージにシールを貼るだけのものですが、パッケージの強化にも取り組む予定です。ブランド展開は道半ばですが、認知度を向上させつつ、持続可能な仕組み作りも目指して参ります。
令和6年2月22日、「第21回シーフードショー大阪」において、「福島第一原発事故後の水産物の検査について」と題したセミナーが開催されました。本セミナーでは、放射線に関係する基礎知識や最新の水産物のモニタリング結果等についてお話しをいただきました。
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所の事故直後、福島県沖の沿岸漁業は操業自粛を余儀なくされましたが、翌年6月からは、出荷制限のない魚種に限り、試験操業(※)を開始しました。はじめは、浸透圧調整機能により水質からの影響を受けにくく、セシウムが排出されやすい魚種として、沖合の無脊椎動物及び貝類等を対象としており、以降は徐々に漁獲魚種・海域を広げてまいりました。令和3年4月からは本格操業への移行期間に入りました。令和5年度の水揚量は6,530tで震災前に比べて25%程度と、水揚量回復が課題となっています。 ※「試験操業」とは、出荷できる魚種を選定しながら検査して販売までの状況を見るものであり、モニタリングのためのサンプリングではありません。
食品からの被ばく量を年間1ミリシーベルトに抑えるため、食品の放射性セシウムの基準値は100ベクレル/kgに設定されております。但し、100ベクレル以下なら安全で、これを少しでも超えたら危険というわけではなく、目標の年間1ミリシーベルトの被ばくは非常に保守的な計算方法で基準値が設定されています。 年間1ミリシーベルトという値も安全と危険の境目ではありません。これは国際放射線防護委員会から提示されたもので、自然放射線からの被ばく量の範囲内で受け入れ可能なレベルを示しております。
令和4年6月から、検出限界値が0.4ベクレル/kg程度に設定されている精密分析を開始しました。また、令和5年8月からはできるだけ早くモニタリングの結果を公表し、風評を抑制するため、検体採取の翌日または翌々日には結果を得られる迅速分析を合わせて実施しております。 迅速分析については、福島第1原発の放出口から、北側4kmと南側5km程度離れた2地点でサンプリングを行っております。ALPS処理水の海洋放出のある期間は週に4回の分析を、海洋放出のない期間は週に1回の分析を行うこととしています(※)。 ※令和6年2月時点
精密分析では、令和6年2月5日時点までに、35魚種(ヒラメを中心とした魚類、貝類、頭足類等)377検体を分析しましたが、すべて検出限界値未満でした。迅速分析もすべて検出限界値未満となり、ALPS処理水の海洋放出前後で変化が見られておりません。これらの検査結果は、全て水産庁のホームページで公表しております。これらをご確認いただくことで、少しでも不安を解消できればと考えています。
令和6年2月22日、「第21回シーフードショー大阪」において、「日本の水産は東南アジア等イスラム市場で爆発!!2025大阪関西万博は大阪のWチャンス!!」と題したセミナーが開催されました。 本セミナーでは、海外営業のアウトソーシング、南西アジア・サウジアラビアの輸出の可能性、SNSマーケティング活用術、ハラルビジネスの戦略についお話いただきました。
株式会社ノーパットは、国際輸送手配、翻訳、商社機能等世界に目を向けた企業様へサービスを提供する会社です。日本、韓国、台湾、ベトナム、モンゴル、マダガスカル、マレーシアに拠点を構える強みを活かして、“海外営業部ドットコム”という無料で利用できる海外営業のアウトソーシング等も展開しています。
これから海外進出を目指す方々に共通して見られる課題は、以下の点が挙げられます。
1、商談における言語の問題 日本貿易振興機構(ジェトロ)、中小企業支援機構、各自治体等では、海外輸出支援の一環としてマッチング商談等の事業が行われており、海外バイヤーとの接点をもつには良い機会ですが、これらはあくまでも紹介であって、フォロー商談は自社で取り組む必要があります。このことから、海外言語に対応できる人材がいなければ、商談がそこで中断してしまうケースがよく見られます。
2、海外からの問い合わせメール よく外国からスパムメールが届くため、英語のメールは見過ごしてしまうこともありますが、そのなかには重要なビジネスチャンスが潜んでいることもあるため、注意が必要です。
3、海外バイヤーとの名刺交換した際の対応 海外バイヤーとせっかく名刺交換をする機会があっても、そのまま放置してしまうケースがよく見られます。しかし、日本のバイヤーと同様に適切な対応をすることで、商談が進むケースもありますので、対応を心掛ける必要があります。
4、多言語化対応、問い合わせフォームの設置 自社ホームページを外国語対応に作り直すのは大きな負担ですが、Google等の翻訳ツールでも十分に通用します。また、外国語のバナーを掲載するだけでも、海外バイヤーへの見え方が大きく変わります。
5、WEBカタログの利用 自社ホームページに外国語対応のカタログを掲載するだけで、海外からのアクセスも増えます。
以上の課題については、弊社も含めて、アウトソーシングすることも選択肢のひとつですので、ぜひ検討されてください。
弊社において、海外進出のサポートしている企業は多岐に渡ります。取引先の商社が小口案件を対応してくれないとのお悩みを抱える工業用ヒーターのメーカーや、海外対応スタッフ不足に悩んでいた富山の企業、大阪のペット用歯ブラシメーカー等の支援も行っています。 冒頭でご紹介した「海外営業部ドットコム」では、営業代行や通訳・翻訳等も無料で対応しております。さらに、輸送費用の見積書作成や取引リスクツールでもサポートが可能です。あくまでも、海外営業部門の子会社という立ち位置で対応しますので、直接貿易と間接貿易の両方の可能性を残したまま、取引を継続できます。 来年からは台湾、ベトナム、マレーシア向けの冷凍コンテナ便を開始予定で、主に台湾では個人向けサービスも展開する予定です。海外進出をお考えの皆様は、弊社のサポート等も活用しつつ、ぜひ積極的に取り組まれてください。
「Wasl Way Trading」は、2021年にサウジアラビア王国の首都リヤドに設立された食品流通・卸売会社で、日本の特産品を取り扱う輸入販売もおこなっています。 サウジアラビアは経済成長が著しく、約25万㎢の国土(日本の約5.7倍)を有し、人口は約3,200万人で、その内60%が自国民、40%が外国籍、中央年齢は29歳と、非常に若い国です。現在は石油依存を減らしつつ、経済の多様化を図る「ワークビジョン2030」が進行中で、経済、健康、教育、インフラ、観光等の整備が進んでいます。日本食レストランが入るホテルの建設等が含まれた「紅海プロジェクト」や、エンターテインメントの中心地となると見られている「キディア」等の大型プロジェクトが進んでいます。
サウジアラビアでは、メッカ、ジェッタ、リヤド、ダンマーム等の都市が物流の中心地となります。 特に水産物は、コンテナ船で運ばれたり、オマーンから供給されたりと輸入品の依存度が高い国です。なお、リヤドエア(航空会社)が2025年に日本便就航を計画しており、新たな輸送方法として期待が高まっています。
但し、水産物は規制があって手続きが複雑です。水産庁(日本)に登録された企業を除き、制限があります。弊社は、冷凍マグロ等の高級品を中心に扱っており、その他水産物も申請中ですが、登録に半年くらいかかる見込みで、粘り強さが必要です。しかし、日本産水産物の輸出に対しては、これからの可能性を秘めた国でもありますので、興味があればぜひ試してみてください。
私は現在、ハラル・ジャパン協会で商品プロモーションの支援を行いながら、約30カ国以上のイスラム教国に向けて、日本のハラル商品・情報を発信するインフルエンサーとしても活動しています。フォロワー数は約3.3万人で、その99%がイスラム教徒です。なかでもインドネシア、マレーシア、サウジアラビア、UAEの割合が高くなっています。インフルエンサーマーケティングの市場規模は2016年頃から成長を続け、2023年は210億ドルに達し、2030年には910億ドルまで拡大すると見られています。
ハラル商品のプロモーションに最適と考えているのがInstagramです。Instagramは、写真と一緒に情報発信できるので、これを用いて情報収集するユーザーが活発化しています。「ハラル」なことを自分以外のイスラム教徒にシェアすることは善い行いとされており、SNSを活用した商品プロモーションは非常に有効です。 ちょっとしたテクニックとしては、日本語と英語を一緒に発信すると、アカウントが伸びにくくなるので、あえて投稿を分けながら、プロフィールやハッシュタグに「ハラル」や「ムスリムフレンドリー」と明記するようにしています。長い文章は必要ないですし、英語もAIを利用すれば非常に簡単です。 ハラル・ジャパン協会でも、インフルエンサーの紹介やプロモーションを代行するサービスも提供をしていますので、興味がある方はぜひご相談ください。
インドネシア、マレーシア、シンガポール等の東南アジアや、バングラデシュ、インド等の南西アジア、そしてサウジアラビア、イラン、アフリカ北部等は、人口のほとんどがイスラム教徒です。こういった国に、イスラム教国ではない日本から水産物を輸出する場合、製造過程が不透明なため、ハラル認証が求められます。また、ベトナムやタイ等の現地で加工する商品であっても、現地のバイヤーがハラル認証を要求するようになりました。 ハラル認証とは、イスラム教徒にとって安心できるマークであり、海外バイヤーも手に取りやすく、ここ数年は中東や欧州でも相談が増えているほどです。ハラル認証は国際認証ですが、世界統一基準がありません。認証機関は国もあれば民間もあります。さらに、ベジタリアン、HACCP、ISO等に対応した様々な認証が存在しています。 認証の重要性は高まっており、ハラル認証も付加価値としても活用する輸出事業者が増えています。例えば、明太マヨネーズ等は、ハラル認証を取得したことで、海外で人気が高まったケースも聞かれています。また、ハラル認証は切り替えも可能で、インドネシアで認証を取得してもUAEで販売ができます。施設に対しての認証なので、一度認証を取得してしまえば、原料さえハラル対象であれば、他の商品だって製造することができます。 但し、ハラル認証=輸出ではありません。国によっては、認証を取っても輸出できない等の事例もあるので、コストやマーケティングも含めて考慮し、認証機関にも注意してください。
ハラル認証はイスラム教徒専用という訳ではありません。あくまでもイスラム教徒も食べられれば、日本人も食べられる“共用”といった視点から、国内でもユニバーサルフードといった提案に切り替えることも有効です。ハラルとは離れますが、インド、台湾、欧米では、ベジタリアンやグルテンフリー市場もあるので、その国のスタイルによってアプローチ方法を変えるのもいいと思います。
南西アジアの可能性についても触れたいと思います。南西アジアはイスラム教徒の人口が多く、今後の成長が期待されている地域です。そのなかでもバングラデシュは輸出対象として大きな可能性がある国といって過言ではありません。バングラデシュは北海道の約2倍の面積に対して、約1億6,000万人もの人口が住んでおり、繊維、医薬品、IT産業の分野も年々充実し、インフラ面では2042年までに先進国に追いつくことを目指しています。 ハラル認証の規制も緩やかで親日国であり、中国や韓国よりも日本企業が進出しやすい環境にあります。すでにユニクロ等の日本企業が進出しており、高価格帯であっても和食や寿司が普及しています。 この他にも、日本食レストランやスーパーが増加傾向にあるイランや、日本との経済関係が深く、水産物や和牛等が輸出されるようになったサウジアラビア等もビジネスチャンスが広がっています。ぜひ南西アジアに向けた輸出の可能性もご検討ください。まずはテストマーケティングを行うことが重要です。現地で開催される展示会への出展も有効です。
本講演では、輸出に向けたサービスの活用方法、バングラデシュやサウジアラビアの輸出の可能性、SNSを活用した海外へのプロモーション方法、そしてハラルビジネスの活用方法に触れました。どれもハードルが高いものではありません。まずは方法を検討し、知識・情報を深め、そして様々な視点からハラル認証を検討することが必要です。ぜひ積極的に海外展開、そして国内展開の両方に活かしてみてください。