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セミナーレポート 「第21回 シーフードショー大阪 セミナーレポート」

セミナーレポート③ 福島第一原発事故後の水産物の検査について

 令和6年2月22日、「第21回シーフードショー大阪」において、「福島第一原発事故後の水産物の検査について」と題したセミナーが開催されました。本セミナーでは、放射線に関係する基礎知識や最新の水産物のモニタリング結果等についてお話しをいただきました。

講師
水産庁 研究指導課
係員
稲田 圭佑

<本格操業に向けた取り組み>

 平成23年の東京電力福島第一原子力発電所の事故直後、福島県沖の沿岸漁業は操業自粛を余儀なくされましたが、翌年6月からは、出荷制限のない魚種に限り、試験操業(※)を開始しました。はじめは、浸透圧調整機能により水質からの影響を受けにくく、セシウムが排出されやすい魚種として、沖合の無脊椎動物及び貝類等を対象としており、以降は徐々に漁獲魚種・海域を広げてまいりました。令和3年4月からは本格操業への移行期間に入りました。令和5年度の水揚量は6,530tで震災前に比べて25%程度と、水揚量回復が課題となっています。
※「試験操業」とは、出荷できる魚種を選定しながら検査して販売までの状況を見るものであり、モニタリングのためのサンプリングではありません。

<福島県産魚介類の放射セシウムの検査体制>

  • 福島県の公的検査  2011年から開始し、現在までに7万件以上の検査を実施しています。最初は基準値を超えるものが1/3程度ありましたが、2017年以降は全体の99%が基準値の1割以下となり、非常に低いレベルであることから、最近ではごく稀に検出される程度となっています。
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  • 漁協による自主検査  水揚日ごとに出荷予定の全魚種に対して検査を実施しています。漁協では、国の基準値である100ベクレル/kgの半分となる50ベクレル/kgを自主規制値としてより厳しく設定しています。50ベクレル/kgを上回った場合は出荷を自粛し、国の基準値100ベクレル/kgを上回った場合は、水産庁へ報告がなされ、出荷停止となります。
     操業海域拡大や魚種の増加に伴い、検査数は年々増加し、これまで合計10万件以上の検査を実施しました。現在は、そのほとんどが50ベクレル/kg以下となっていて、2018年以降では99%が検出限界値未満という結果が出ています。
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  • 出荷制限魚種の推移  このような検査結果に基づき、震災直後は基準値以上となった40種類以上(最大42種類)の魚が出荷制限となりましたが、セシウムの検出が減少したことで、出荷制限が段階的に解除されています。2020年に出荷制限魚種数が0となりましたが、2021年にクロソイが基準値を超えたため、引き続き出荷制限を行っております。
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<食品中の放射性物質に関する基準値について>

 食品からの被ばく量を年間1ミリシーベルトに抑えるため、食品の放射性セシウムの基準値は100ベクレル/kgに設定されております。但し、100ベクレル以下なら安全で、これを少しでも超えたら危険というわけではなく、目標の年間1ミリシーベルトの被ばくは非常に保守的な計算方法で基準値が設定されています。
 年間1ミリシーベルトという値も安全と危険の境目ではありません。これは国際放射線防護委員会から提示されたもので、自然放射線からの被ばく量の範囲内で受け入れ可能なレベルを示しております。

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<目標は達成されているのか>

  • 厚生労働省の調査結果  平成23年度から、実際に流通する食品を購入して、食品中に含まれる放射性セシウムから受ける年間放射線量を推定するマーケットバスケット調査を行っています。令和5年度の調査では、年間放射線量は最大0.0011ミリシーベルト程度で、目標の約1000分の1程度であることがわかりました。
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  • コープふくしまの調査結果  平成23年度から陰膳方式による調査を実施し、実際の食品に含まれる放射性物質の測定を行っていますが、これまで全てのサンプルにおいて、検出限界値である1ベクレル/kg未満となる結果となっています。
  • 福島県の調査  避難指示が解除された区域を中心に、県内の一般家庭の日々の食事に含まれる放射性物質の濃度の調査(=福島県における日常食の放射性物質モニタリング調査)を実施しています。ここでも、1年間食べ続けた場合の年間内部被ばく量については、放射性セシウムによる最大値が0.0026ミリシーベルトと推計されており、十分低い値であることがわかっています。
     これらの結果から、福島第一原発事故の影響が少しずつ緩和され、放射性物質の濃度も低くなっていることがわかります。

<トリチウムのモニタリングの概要>

 令和4年6月から、検出限界値が0.4ベクレル/kg程度に設定されている精密分析を開始しました。また、令和5年8月からはできるだけ早くモニタリングの結果を公表し、風評を抑制するため、検体採取の翌日または翌々日には結果を得られる迅速分析を合わせて実施しております。
 迅速分析については、福島第1原発の放出口から、北側4kmと南側5km程度離れた2地点でサンプリングを行っております。ALPS処理水の海洋放出のある期間は週に4回の分析を、海洋放出のない期間は週に1回の分析を行うこととしています(※)。
 ※令和6年2月時点

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 精密分析では、令和6年2月5日時点までに、35魚種(ヒラメを中心とした魚類、貝類、頭足類等)377検体を分析しましたが、すべて検出限界値未満でした。迅速分析もすべて検出限界値未満となり、ALPS処理水の海洋放出前後で変化が見られておりません。これらの検査結果は、全て水産庁のホームページで公表しております。これらをご確認いただくことで、少しでも不安を解消できればと考えています。