震災後11年間の調査結果と基準値や放射線リスク等の説明を通じて、水産物の安全性について理解を深めることを目的に、オンラインセミナーが開催されました。
「ベクレル」と「シーベルト」は、食品からの被ばく量を計算する際によく用いられますが、「ベクレル」は放射能の単位で、数値が大きいほど多くの放射線が出ていることを意味しています。一方で「シーベルト」は人が受ける被ばく線量の単位で、数値が大きいほど体に受ける影響が大きいことを意味しています。 キャッチボールに例えると、「ベクレル」がボールを受けた回数、「シーベルト」がボールを受けた体の影響に値します。「シーベルト=体の影響」は、ボールのスピードや硬さで異なるため、値(被ばく線量)を割り出す際は係数が必要で、体内に取り込んだ「ベクレル」に「実効線量係数」をかけることで、「シーベルト」が算出されます。
世界各国の自然放射線量の年間被ばく量を比較すると、日本(約2.1ミリシーベルト)に比べて、ヨーロッパ各国の年間被ばく量が高いことが分かります。 日本政府は2012年に、食品からの年間被ばく量を年間1ミリシーベルト以下に抑える目標を立てました。これは、放射線に関する専門家の集まりであるICRP(国際放射線防護委員会)が、だれもが受入可能な追加被ばく量の目安として設定されたものです。 食品からの年間被ばく量を1ミリシーベルト以下に抑えるために、100ベクレル/kgが基準値として設定されました。これを超過した食品は、回収および状況に応じた出荷制限を行い、基準値が安定的に下回るまで出荷を再開できません。
厚生労働省、コープふくしま、福島県で、食事に含まれる放射性セシウムの調査が行われ、年間被ばく量は、いずれも目標の1パーセントである0.01ミリシーベルト未満であることが確認されています。
福島県産魚介類に含まれる放射性セシウムの検査は、「福島県による公的検査」と「漁協による自主検査」が行われています。 福島県による公的検査では、出荷制限魚種を含めた定期的な検査を実施し、万が一国の基準値100ベクレル/kgを超過した場合は、国から出荷制限が指示され、基準値を安定的に下回るまで出荷制限が継続されます。 漁協による自主検査では、出荷予定の全魚種を対象に水揚げ日毎に検査を実施し、国の基準値よりもさらに厳しい50ベクレル/kgを超過した場合は、出荷自粛をして基準値を安定的に下回るまで出荷自粛が継続されます。このように行政と漁協が協力しあい、基準値を超過した魚介類を流通させない体制がとられています。
福島県産魚介類の放射線セシウム濃度に関する検査は、2014~2017年度で9,000件近く、直近の2022年でも1,062件の検査を実施しております。 基準値を超過した件数は、2011年度は全体の3分の2程度でしたが、2015年度以降は4件で、放射性セシウム濃度と共に減少しています。これにより検出限界未満の全体割合は、事故直後の2011年で全体の2割程度だったのに対し、2017年以降は全体の99パーセントで基準値の1割以下となりました。 なお2018年に行われた、全国漁業協同組合連合会で詳細検査では、全体の約8割が5ベクレル/kg以下の数値となっています。漁協の自主検査でも2021年度は年間2万件近く、今年度も既に1万件程度の検査がされていますが、ほとんどが50ベクレル/kg以下です。 これまでの説明を踏まえ、福島県の魚介類を食べても問題がないことをご理解いただけたかと思います。福島県産の魚介類は美味しいものがたくさんありますので、機会があればご賞味ください。
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。