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セミナーレポート「水産加工品・食品 販路回復・販路拡大セミナー」

平成30年9月14日、いわき産業創造館において、「メイド in いわき食の商談会」に参加する企業の方々を対象に『「東北復興水産加工品展示商談会」フォローアップセミナー』が開催されました。サプライヤー・バイヤー双方の立場を知る専門家、そして商品のブランド構築から新製品開発、販売促進を手がけるプロフェッショナルを迎えて、商談会に臨む心得、準備することなどをレクチャーしていただきました。

1.商談会に臨む心得

講師
仙台商工会議所震災復興販路回復・拡大支援事業
コーディネータ
遠藤 光好

(1)バイヤーから成約をもらうコツ!

今回の「メイド in いわき食の商談会」は、初めて2日にわたって開催される商談会です。初日が展示商談会、2日目が個別商談会ということになりますので、メリハリをつけた取り組み方でご参加いただきたいと思います。
まず、商談成約の精度を上げるために気をつけたいことを2点、申し上げます。

1つ目は、バイヤーさんとの人間関係を大切にするということです。ブースにいても携帯電話を操作して下ばかり見ているとか、サンプルを並べるだけで試食を用意しないといったことでは、バイヤーさんの興味を引くことはできません。それどころか、そのような態度が会社の姿勢そのものとして評価されてしまうので、商談会にも「お客様主体で売場に立つようなイメージ」で参加してください。

2つ目は、お二人で参加されると思いますので、商品に詳しい方が席を外しても、残った人がきちんと説明できるよう、情報共有、教育・訓練を行っておいてください。また、2日目の個別商談会では、バイヤーさんの業態によって、提案する商品をある程度絞り込んでおくことをお勧めします。25分の持ち時間を有効に使うためです。

今、地産地消ということで、地元の材料を使った商品に注目が集まっています。例えば、地元福島の遺伝子組み換えでない大豆と麹、塩だけでつくった醤油で、余計なうまみ成分を入れずに味つけする…といったストーリーが語れるものをご用意いただくと、バイヤーさんも非常に喜ばれると思います。

次に量目のお話をいたします。2015年の国勢調査の数字を見ても、全国的に1世帯あたりの人数が減っていることが分かります。こうなりますと「食べ切れない」という理由だけで、魅力的な商品でも買っていただけないということです。全国的には1世帯当りの平均は2.33人という数字が出ておりますので、これくらいの家族が2回から3回で消費できるくらいの量目で商品を用意することを考えてみてください。

(2)「飲食業の推移」から見る今後の動向

1997年には29兆円あった外食市場規模が、2013年には24兆円まで縮小しています。それに比べて、デパ地下やコンビニ、スーパーなどで売っているお惣菜は、2013年が6.5兆円だったのが、今年はおおよそ10兆円規模になっています。いかにレンジアップですぐに食べられるかが勝負で、その上、副原料にいたるまで添加物不使用、シンプルな味つけで安心・安全ということであれば、注目度もアップすると思います。

(3)商談会で重要なのは“商談後のフォロー”

商談後は、バイヤーさんにお手紙やメールでお礼をしてください。約1週間後、個別商談会当日の評価とコメントを、いわき商工会議所さんを通じて生産者の皆様にフィードバックします。バイヤーさんから何かしらのご要望をいただいたら、2ヵ月くらいを目標に改善しましょう。これが商談会後の私どもの仕事でして、どうしたら、そのご要望に応えられるのかが分からない場合は、メールで問い合わせてください。それから当日、バイヤーさんは一泊されますので、サンプルを持ち帰ることができません。後日、お礼をした後に、改めてどのサンプルが必要かを確認して、運賃込みのお見積書と一緒にご希望のサンプルを送ってください。1週間ほど経ちましたら、「いかがでしょうか」と、問い合わせをしてみましょう。商談会の会場でも結構ですので、バイヤーさんとのお話の中で疑問が生じましたら、ぜひ、私たち(商工会議所)に声をかけていただき、その日のうちに解決してください。

遠藤 光好 氏

2.好い加減な商品開発のすすめ

講師
株式会社電通 ビジネスD&A局
Director
金井 毅氏

(1)自分を知る、商品を知る

商品開発というと、「1からやらなければならない」とか、「何かを新しくつくらなければならない」、「製法を変えなければならない」など、いろいろなことを考えがちですが、実はそうではないことが多いのです。では、どうすれば良いのか。結論から申しますと、商品開発は「好い加減」が大切です。肩肘張らずにやりましょうということです。

中国の古いことわざに、「彼を知りて己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」というものがあります。私は「己を知りて、客を知れば百戦して危うからず」と言い換えることができると思っています。一番のポイントは「お客様を知る」ということですが、その前に大切なのが、自分を知ることです。自分のことは自分が一番良く知っているつもりでも、実は足元が見えていないことも多いものです。世の中が変わってきました。売場も変わってきました。消費者が変わり、特にSNSが出てからマーケティングは劇的に変わっています。このような状況の中で戦うには、まず自分自身が誰なのか、自分の商品とはどんなものなのかを再評価することがとても大切です。

皆さんは、自分の会社や商品、サービスでも良いのですが、「強み」と「弱み」をすぐに言うことができますか。そして、今の消費者がどんなものを求めているのかを調べたり、考えたりしたことがあるでしょうか。先ほど触れた「SNS以降のマーケティング」についてですが、実はローカルなビジネスには非常に有効です。今、売れている商品は、SNSで誰かが「おもしろいね」と発信したことが拡散されて人気に火がつき、売れるという流れになっています。そう考えると、SNSで誰かが商品やサービスの良さに目をつけて拡散したように、自分たちも自分たちの良いところがきちんと分かっていないと、商品を売ることはできないということです。

資料1

(2)「変える」ことで成功した例

(3)100%を目指す必要はない

外国の方は、しばしば日本人の特性を「4L」と評します。4Lとは「Look・Listen・Learn・Leave」です。よく見て、聞いて、勉強するけれど、最後はほったらかしてしまうというのです。忙しいから仕方ないといえばそれだけのことなのですが、感じることがあったら、まずやってみることだと思います。走りながら考えるのです。

資料2

もう一つ、商品開発がうまくいっても、いかなくても、その経験を次にどう活かすのかも大切なポイントです。いつでもPDCAを意識して、Leave=ほったらかしにしないで、アクションを起こす。PDCAを繰り返すことで、皆さんの商品がどんどん磨かれていくと思います。ただし、「だめだ」と思ったときには、商品開発を止めることです。だめなものは、だめなのですから。

ところで皆さんは、栃木県日光東照宮陽明門にある「逆さ柱」をご存じですか。12本ある柱には、すべてにグリ紋が施されているのですが、そのうちの1本だけが、グリ紋の向きが逆さまなのです。これは「未完成であること」を表していて、日本古来の「満つれば欠ける」という考え方が基になっています。完成したものは欠けて、滅びていくから、100%を目指す必要はないということです。それよりも、進化させていくことが最も大切で、常に変えていくことがポイントだと思います。

最後に、会社の皆さんとやってみていただきたいことがあります。ホワイトボードなどに、自分たちの商品もしくは会社の強みと弱みを付箋に書いて貼り出してみてください。もちろん「無礼講」が前提です。そこに何らかのヒントが浮き彫りになる可能性が高いのですから、社長は社員が書き出したことに腹を立ててはいけません。強みと弱みを自覚して、自信を再認識しなければ、自分自身を売り込むことはできません。この作業のポイントはここにあります。

資料3

商談会までの1週間、固定概念に縛られず、さまざまな観点から自分たちの会社や商品を見直せるよう、あまり気難しく考えないで取り組んでみてください。商品開発は「好い加減」が大切です。肩肘張らずにやりましょうということをお伝えして、終わりにいたします。

感想「商談会」を目前に控えて、今、何をすれば良いのか、「商品開発」というものを、どのように考えれば良いのかということが、実例を伴って紹介され、分かりやすく伝わったと思います。ヒット商品が生まれる過程のお話は、大きなヒントになったのではないでしょうか。「商談会」に挑む勇気が湧いてくるようなセミナーでした。

※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。