平成28年2月22日に第14回「シーフードショー大阪」にて「復興水産加工業販路回復促進事業の概要並びに支援事業の取組事例紹介」というテーマでセミナーが行われました。被災地の水産加工業者の方から販路回復・開拓に向けた取組の紹介を行っていただきました。
佐々木氏より平成28年度復興水産加工業販路回復促進事業の取組内容について説明があった。 概要についてはこちらを参照ください。
平成3年より創業している気仙沼では後発のフカヒレ加工会社である中華高橋水産。主力商品は「業務用ふかひれ」。日本のサメの8割は気仙沼で水揚げされるため地場産業となっている。 順調に事業を拡大していっていた最中、震災により、工場損傷、原発事故による風評被害などかなりの打撃を受けた。
風評被害でふかひれ等の輸出がストップした他、工場再建中で商品の提供ができないときに、サメ肉代替品が出現し、需要も激減。そして工場は何とか元通りなったあとも、今まで働いていてくれた職員が内陸部へ集団移転してしまったため、海のすぐ近くにある工場には通うことが困難となり、人手不足も深刻化した。
また、サメ1匹のうちわずか10%しか取れないヒレがサメ全体の価値のうち90%をしめており、ヒレに依存した価値の比率が非常にアンバランスであることも問題となっていた。
サメ肉に関してはすり身での流通がほとんどであった。しかしながら、価値の高い順で言うと、刺身>切り身>すり身となる。一番安いすり身の形態で流通していたのを切り身にシフトしていくことで、高付加価値化を図る取り組みを行った。
【取組1】商品開発アンチエイジング料理スペシャリストにレシピ開発を依頼し、30~40代の女性の方をターゲットに絞った「コラーゲンつみれ」を開発。またこの方が販売先とのコネクションがあり、ナチュラルローソンでの販売の機会を得た。さらに、日経ヘルスにもサメ肉の有用性についての記事も掲載され、多方向から効率的なプロモーションが出来た。
【取組成果2】水っぽさをなくすため脱水肉を開発するための機器を導入した。皮むき器を導入することで、手作業で行っていた工程が機械化され、省人化にもつながった。
気仙沼に本社を置く阿部長商店。設立は1968年、創業は1961年で、50周年を迎えた年に被災した。鮮魚の出荷業務をメインとしながら、加工業も時代に合わせて拡張し、観光ホテルも3軒経営している。水産工場を大船渡、気仙沼、南三陸町、石巻展開。水産関連では300名ほどの従業員がいる。上記4つの水産工場拠点には9つの水産施設があり、震災により、そのうち8つを失い、完全復旧には5年もの歳月を要した。震災後ホテルの事業の需要の高まりがあったことが、水産事業の復旧を支えた。従業員の中には、内陸部への避難・移住した方もいたが、その多くはそのままとどまるという決断をしてもらったので、あとは仕事を持ってくるだけという状況だったが、なかなかうまくいかずにいた。
従来原料の輸出がメインだったが原発の風評被害により輸出が出来なくなった。そういった状況の中で、加工品の需要が増え、1次加工、2次加工を増やして付加価値を付けて販売することで、販路回復を、目指すこととした。高次加工品の開発・製造を行うためには人が足りず、省人化機器や新商品開発のための機器を導入。また、
平成29年2月22日に第14回シーフードショー大阪のセミナー会場で「東南アジア・中東マーケットに向けた食材対応と味付けの工夫」と題し、復興水産加工業販路回復促進センターのセミナーが開催された。セミナー内容は「全世界で16億人がムスリムであり、日本の水産物を訪日外国人や輸出に向け避けるべき成約と市場の可能性、味付けの工夫について、実践に向けた具体的なヒント」を紹介することである。
司会 一般社団法人ハラル・ジャパン協会 調査担当コンサルタント 中川 圭吾氏
パネリスト:株式会社吉村商店株式会社山徳平塚水産東京ハラルデリ&カフェ
営業森 新也氏 代表取締役平塚 隆一郎氏 オーナーシェフモハマド・シャーミン氏
ハラルというと、ハラル認証のことが前面に意識されがちで、ついムスリムの人々の味付の好みの面等が、後回しとなるが、実際に商品を買ってもらうときには大事な要素である。本日は、どうしたら、ムスリムの人に食べてもらえるか、取組まれている方々に出席していただき、貴重なご意見を頂きたいと思います。
石巻の水産加工業者は100%被災したため、設備等の復興に時間を要し、その間に失った販路に同じ商品を生産販売しても価格競争になってしまう。そこで、石巻の水産加工業者等が集まり石巻元気復興センターを作り、ブルーオーシャンということで、新しいことに取組んだ。その中でハラル食に行き当たり、ノンアニマル・ノンアルコールフードの開発を行った。10社ぐらいでチームを組んでハラルに取組んでいる。中川さん資料にある通り、ムスリムに人気商品はラーメンです。石巻専修大学や麺屋さんと水産加工業者が組んで「サバだしラーメン」の開発を行った。ただ我々は、ハラル認証は取っていない。石巻ノンアニマル・ノンアルコールフードというコンセプトとマークで、色々な商品開発を行っている。施設は認証を取ってはいないが、中身はハラル向けで、特にインバウンド向けが主力である。大塚マスジドでムスリムの方に試食会をしたところ好評であった。将来、輸出を目指すときには、ハラル認証の取得も考えている。
佐賀県産の鯵を使用し嬉野茶を練りこんだ皮で作った鯵餡餃子を開発した。ムスリム向け商品を開発したが一品では海外に向けボリュームがなく輸出はできない。そこでトマト・ユズ・黒ゴマの味がする餃子を新しく開発しました。すでにハラル認証取得ずみ。ハラル事業の取り組みのきっかけは、当社のメインの干物の原料の水揚げ高が減り先細りへの懸念があったため、干物以外の商材を模索した。その頃、ハラル市場が拡大している状況から、ハラル製品の新商品開発を進めた。始めるにあたっては、佐賀県支援センターや佐賀県庁等の地域との連携や支援を受け、ハラル事業に取組んだ。ハラル認証取得にあたり、工場については、メインの味りんを使う干物加工生産があるので、ハラル商品を作るエリアと壁で工場内を区切って、商品のハラル認証した。 従って、ハラル認証は工場全体ではなく、特定商品とその製造ラインで取得をしている。又、他社に先駆けハラル商品の開発を行い、マスコミ等で取り上げられ、宣伝になった。 販売までの経緯は、2011年頃から海外(東南アジア)視察を行い、2012年にFoodexJAPANやシンガポールの見本市等に出展した。インドネシアにむけ商談会に参加している。輸出のノウハウがなかったので商社や物流業者とも連携し、海外への販売に取組んでいる。我々は、ハラル認証の取得はハラル市場へのパスポートと思っている。認証取得だけで、売上が伸びるわけではない。展示会への出展や宣伝等のマーケティング活動が重要である。
私は、1987年バングラディッシュより来日して、日本料理店・フランス料理店等で修行し、その後独立し飲食店舗を構えた。 ハラル事業を始めたのは、6年前にハラルの勉強会に出たとき、ハラル・ジャパン協会の佐久間さんから頼まれたのがきっかけだった。当時は、ほとんどハラル食がなかったので、ハラルの弁当を作ってくれないかということであった。その後、2014年に、お酒も出さない完全なハラルレストラン(日本イスラ-ム文化センター認証)を赤坂に開設した。2015年、上智大学から、ハラル弁当を販売してくれないかと依頼され、最初はケータリングカーでムスリムも食べられるケータリング弁当から始めた。その時は、1日平均150~180個の弁当を売った。テレビ・新聞等のマスコミで取り上げてくれて宣伝になった。2016年から上智大学にハラルメニューのみを提供する学生食堂を開業し、1日来店数350~400人と順調である。 日本で壁になるのが、調味料で、みりん・醤油・酒である。私は味付けに、みりんの代わりに蜂蜜を使っている。ハラル醤油や、蜂蜜、ブラックペッパー等工夫して味付けするなど、ムスリムの食事のレシピの本を発行した。又、もう一つの壁は値段である。本日は、魚の加工業者が多いと思うが、魚だけで製品を作ると、原価が高くなる。例えば、野菜を加えるなどして原価を下げて、商品そのものの値段を安くする工夫が必要であると思う。
ムスリムに向けた食品開発を考えると、どうしてもハラル認証取得ありきの意識が強く、それにとらわれてしまう。その前に食品として、おいしさや味付けの工夫が大切である。ムスリムがどのような味付けを好むかと同時に、和食としての美味しさを忘れてはならない。
平成29年2月23日に第14回シーフードショー大阪のセミナー会場で、『「魚と放射能」―水産物の放射能調査について理解を深めるために』と題し水産庁主催のセミナーが開催されました。開催目的は、「東日本大震災から5年が経過し、水産物中の放射性物質は着実に低下しています。一方で、見えない放射線への不安感は払拭されず、場合によっては風評被害を引き起こしています。今回は、5年間の調査結果と基準値や放射線リスク等の説明を通じて、水産物の放射能汚染について理解を深めること」にあります。
たとえば。。。 炭素(元素記号、C) C-12 安定元素(天然) C-13 安定元素(天然) C-14 放射性元素(天然) ラジウム、ラドン温泉 Ra-226 や Rn-222 など この他、医療用放射性元素もある。
注)上記結果は、平成23年3月24日~平成28年12月28日までの検査結果を水産庁にて集計
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。