平成28年8月17日に第18回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「東北水産物・水産加工品の魅力とその販路開拓」というテーマで水産加工業販路拡大セミナーが開催されました。復興水産販路回復アドバイザーが販路回復・開拓に向けて行ってきた取組についての紹介をしていただきました。
鳥巣氏はセミナーの講演で東北のある都市に訪れた際、ある大型ショッピングセンターに立ち寄ってみた。平日とはいえ、ほぼ人けが無く閑散としており、何台も並べられたレジはほぼクローズ。なんともさびしい光景が広がっていた。その足で被災地の直売所を訪れたところ、そこには大都市のナンバーを付けた車が多く駐車され、たくさんのお客さんで溢れていたという。お客様の目は価格優先のスーパーより、「地のモノ・特別感」のある地方の直売所に向いてきている。
地元でせっかくいい原料があってもその商品が需要とかけ離れていては売れない。 そんな中、鳥巣氏がお勧めするのは健康志向、無添加などトレンドとマッチした「ドレッシング」作りだ。これには以下の理由がある。
伊豆大島では「ゴマサバ」が獲れるがうまく活用できていないとの相談を受け、鳥巣氏は浜のお母さん方を中心に鯖ドレッシングの開発に取り組んだ。衛生面の管理方法から丁寧に指導を行い「伊豆大島 鯖ドレッシング」(写真中央にある3本)が完成。通常の冷凍サバのままだとかさばる上、持って帰りにくいため、観光で来たお客様は手が伸びないが、常温のドレッシングであれば気軽に買っていただけ、評判は上々とのこと。また、同じく伊豆大島特産の明日葉も「水洗いしてドレッシングをかけるといいですよ」と言うとどちらも買っていただけるようになったという。
1兆円規模のメーカーはもう出て来ないだろうと鳥巣氏。そして今後は3~30億円規模のメーカーが多くなるとの予想。国内マーケットがますます厳しくなる中、生き残っていくためには「エクセレントローカル」がキーワードとなる。エクセレントローカルとは、例えば野菜であれば、「自ら、あるいは契約農家と有機や減農薬で栽培し、しかもその原料を自社工場で無添加かつ限りなく手づくりした製品を自分の眼の見える範囲内で販売していく」というもの。 地域の原料を使って丁寧に作り上げ、問屋に大量に流すのではなく、自分たちが把握できる売り先に販売していくことが大切とのこと。
平成28年8月17日に第18回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて、水産物ハラル対応として、第1部は「ハラルの基本、ハラル水産物の解説、水産物でイスラム市場を攻略するためのアドバイス」を、第2部では「ムスリム向け水産物を製造する先行企業と、イスラム市場をよく知るムスリムのバイヤーによるパネルディスカッション」を開催しました。
日本人の食べ物・ライフスタイル・生活習慣に興味を持つイスラム教徒の人が多くなっている。チャンスです。特に2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから、じわじわ和食が広がっているが、ポイントは健康。和食そのものでは難しい。生活習慣病対策・糖尿病対策等としての和食が、相手のニーズとマッチしている。
味付けは、トルコ・アラブ・エジプト・マレーシア・インドネシア等、おふくろの味やそれぞれの国の特有の味付けがある。日本で販売しているままの味付けで輸出してもいいが、浸透させるためには、現地の香辛料・甘さ、形・ネーミング等工夫する必要がある。
留学生もインバウンドの訪日客も、日本の食品について隠し味等いろいろなものがあり、そのまま食べるのは不安。(日本語は分らないので)原材料表示を英語にすることが、ハラル対応の第一歩である。
・「ハラル」・・・ イスラム教徒にとって、やっていいこと。 ・「ハラム」・・・ イスラム教徒にとって、やってはだめなこと。 「ハラムなもの以外はハラル」
シャーミン氏:昭和63年に日本に来ました。「ハラルレストラン」を東京・千葉で開業。 9月より上智大学で180席のハラルレストランをオープンする予定です。貿易事業もやっていて、日本の緑茶をアブダビのフードショウに出展し、ファイナリストの賞をとりました。又、タイに会社を創りハラルチキンを輸入することを考えています。
平塚氏: 石巻でハラル対応を1社でやっているわけでなく、石巻元気復興センターというグループを作り、地域の企業が参加しチームで進めている。なぜ「ハラル」をやるかと言うと、被災し皆体力がない状況で、震災前と同じにスーパーマーケットに、大量販売していると、ますます体力不足となる。そこで、新しくて、価格競争のない分野の1つとしてハラルの分野を考え、ノンアニマル・ノンアルコールフードに取組んだ。例えば「サバだしラーメン」です。
平塚氏: 「サバだしラーメン」を開発した経緯は、ノンアルコールの麺は冷凍する必要があるが、冷凍設備を水産加工業者は持っているので、活用できる。将来、今回開発した商品をインドネシアに輸出する場合は、インドネシアのハラル認証を取得するつもり。
佐久間氏: 食品は原材料の明示が大切、これはノンアニマル・ノンアルコールフードであり、ムスリム向けと同時にアニマルフリーであり、同時に魚を食べることのできるベジタリアン向けでもある。
中川氏: 輸出上の注意点はありますか。
佐久間氏: 輸出を狙った国がどこか、厳格なハラル認証が必要なマレーシア・インドネシアを除けば、成分が表示されているので、ハラル認証が無くてもこのままでいけるのでは。ハラル認証無くてタイ等へ今のままで販売しその実績で、インドネシアにチャレンジするのが東南アジアについては、いいと思います。
中川氏: シャーミンさん、レストランで使う立場では、商品についていかがですか。
シャーミン氏:実際にハラルの商品は、値段が高いのが相場で売れ行きが良くない。 そのへんを工夫してもらえば、ハラルは普及される。高いと普及しない。ムスリムとして魚へのリクエストは、味付けに「味りん」を入れていると困る。蒲鉾などは、味りんを入れないで、はちみつやスパイスなど入れると、皆食べると思います。
佐久間氏: 魚製品としては、アルコール(酒・味りん)を除いて美味しいものを開発することが大切。中途半端な味でなく、ものすごく辛いもの・甘いもの、両極端からチューニングしていったらどうでしょうか。
平塚氏: 大塚マスジド(モスク)で、石巻の製品の試食会を開催した。事前に成分等の商品案内をして30名のムスリムの方に試食してもらった。味は調整せず、そのままで出したが好評でした。
佐久間氏: 食品は味の調査が大切です。ハラル食なら、例えば、来日して日の浅い留学生を対象に試食会をして意見を聞く。又、サンプルを海外に送り、アンケート調査する等。ハラル商品の開発に当たっては、バイヤーとよく相談して商品開発すると、売れる確率が高い。バイヤーはハラルの知識が少ないこともあるので、バイヤーとメーカーがよく話し合い一緒に作ってくことが大切。
シャーミン氏:中近東と東南アジアは違う。税金も違うし、所得も違う。又、水産加工品についても味付けが、中近東と東南アジアは違う。中近東はスパイシーな味付けが好まれる。「さつまあげ」「練り物」人気がある
中川氏: 魚加工品として、ハラル認証商品が売れているものを例示します。
平成28年8月19日に第18回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「東日本大震災から5年間の放射能調査結果と基準値や放射線リスク等の説明を通じて、水産物の放射能汚染について理解を深めること」を目的に、水産庁主催のセミナーが開催されました。
本セミナーでは、放射能調査について資料を基に説明いたしますが、特に次の2点を 目的としています。
魚種別にみても放射性セシウムは減少傾向にある。水産物中の放射性セシウム濃度は着実に低下していることが確認されている。
1)国内の水産物は適切なモニタリング体制が整備されており、市場に流通する水産物の安全性を確保している。
食品の放射性物質の基準値は、「仮に国内で生産された食品のすべてが基準値(一般食品は100 Bq/kg、牛乳および乳幼児食品は50 Bq/kg)の放射性物質を含んでいて、それを1年間食べ続けても健康への影響がないと見込まれる値」を基に定められている。
平成28年8月19日に第18回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「復興水産加工業販路回復促進事業の概要並びに支援事業の取組事例紹介」というテーマでセミナーが行われました。被災地の水産加工業者やアドバイザーから販路回復・開拓に向けた取組の紹介を行っていただきました。
佐々木氏より平成27年度復興水産加工業販路回復促進事業の取組内容について説明があった。 概要についてはこちらを参照ください。
鈴木氏は愛知県で低・未利用魚を全国の飲食店等に流通させる取り組みを行っている。 売れないものを売るプロが復興水産販路回復アドバイザーとして被災地の加工屋さんに出向いた際に感じたこと、それは「やる気」が成功の分かれ道ということだ。正直なところ「こんな程度の売りにくさくらいでなぜ諦めるのだろう」と思うこともあったそうだ。 売れないのは必ず理由がある。風評?それとも販売力?それらを見極めながらの加工業者と商品開発を行っていった。 多くの企業は目の前の資源に気づいていないことが多い。また歴史がある企業であるからこそ、「ずっと売り続けられる」という自信があり、営業力が衰えてしまっていることもよくあるそう。
鈴木氏は「鴨安商店」のアドバイザーを務めていました。 その活動については後述する鴨安商店の改善への取組の紹介をご覧ください。
鴨安商店は茨城県神栖市で明治15年より創業している老舗水産加工品製造業者。 主力商品である桜干(いわしみりん干)は、天皇杯を受章しているほど商品には自信がある。 しかしながら震災による原発の風評被害でかなりの打撃を受けた。また、12名いた中国人の実習生も逃げるように母国へ帰ってしまった。また、団塊の世代の退職も重なり人数が激減。生産ラインが半分になってしまった箇所もあった。 さらに、地の魚を使うという会社のウリだったことが、逆に仇となってしまい、工場によっては売り上げが震災前に比べ大幅に低下。 このままではいけないと「復興水産加工業販路回復促進事業」を利用し、販路回復に向けての取り組みを開始した。
これらの取組みの結果、営業が営業として機能しはじめ、市場を通さず直接アプローチするという新しい切り口による販路開拓が出来た。そして、グループチャットを使って改善点等について写真をアップしながら気軽にみんなで共有・議論できるようになった。 また、機器導入そのものの効果はもちろん、導入の前後には、必然的にもう一度自分たちの工場のことを皆でよく考え、見直すこととなり、これをきっかけとして社内のまとまりが以前より強くなった。
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。