ハラルに関する基本的な知識および、ハラルマーケットに対応するための水産加工品に必要なポイント、顧客のニーズ等についてのセミナーが平成27年11月6日に仙台で行われました。 年々増加を続けるイスラム圏からの訪日外国人観光客向けのインバウンドマーケットを販売機会と捉えた、販路拡大のノウハウ等の説明もあり、盛りだくさんなセミナーとなりましたので報告します。
イスラム教徒の人々はムスリムと呼ばれており、ムスリムは、神だけに帰依しており、神に許されている:ハラル、または、神に禁じられている;ハラム かどうかに注意して、食を選びます。 日本に滞在するイスラム教徒は、約20万人(全体の0.1%)で、また訪日旅行者数は約40万人(全体の3%程度)となっています。訪日旅行者には、日本で提供される物は食べられないとの認識があります。 神に禁じられている食品は、
となっています。それ以外の許されている食品は、野菜、果実、穀物、きのこ、牛乳、卵、魚介類などです。 なお、醤油等で自然発酵した食品は食することができます。
東南アジア諸国の経済成長による海外旅行の増加により、2013年の訪日外国人数は1,036万人となりました。このうち、イスラム教徒の多い東南アジア6カ国からは、過去最高の115万人が訪日しています。
東南アジアには24,239万人(イスラム人口の14.9%)のイスラム教徒がいて、東南アジアは生産拠点としてだけでなく、巨大な消費市場として期待されています。2020年の東京オリンピックでの訪日イスラム旅行者(予測では100万人)及び在住者(約20万人)に向けた外食、お土産などを含めた食市場の需要は約1,600億円が見込まれています。
現在、世界的な日本食ブームが起きています。ハラルマーケットへの進出について、和食は食材そのものがハラルであるものが多いことから、外食産業の進出が進んでいます。 そのためには、試食調査やアンケート等で現地が求める商品、売れる商品等の調査やマスコミを利用したPRが必要不可欠です。また、ビジネス講座やセミナー等を通して、現地の情勢、販売経路等の現地情報を把握することが必要です。
日本でハラルレストランを経営していた時に、国会よりハラル蕎麦、上智大学等に弁当の注文がありました。そのため、国の機関、大学等では多くの需要があります。 また、中東では、アルコール類を飲まないため、お茶を良く飲みます。アブダビでの食品展示会に鹿児島茶を出品したところ大変人気がありました。日本からは1,200万円程度の輸出となっていますが、今後更なる需要が期待されます。 その他、ハラルレストランで提供している食材はいろいろありますが、ハラルマーケットにおいては、豚、酒、みりんを除けば提供できるものは増えます。
主にアラブ首長国連邦のドバイ、レバノン等の日本食レストラン向けにハラル商材を輸出しています。輸出に伴うハラル認証は、必ずしも必要でなく、今のところスムーズに輸出することができています。特にマグロ、ブリ、サーモン、カニ、ホタテはイスラム圏の皆様から好評で需要も多くなっています。 しかしながら、養殖ブリの餌に豚由来のものが入っていることが多いため養殖ブリのイスラム圏への輸出の際は、餌の証明書を求められることがあります。証明書の発行は困難な状況なので少し苦労しています。
ホテルメトロポリタン仙台のレストランでは、ハラル認証を取得し、イスラム教徒向けにハラル料理を提供しています。 日本料理を提供する際も、ハラル用調味料を使用し、素材にも配慮しながら調理しています。その一例として、イスラム圏の皆様の食べられるマグロを使用した肉団子が特に好評となっています。 日本料理は「五つの味」と「五つの色」により構成されており、舌と眼で楽しんでもらうことができ、イスラム圏の皆様に好評です。
現在、新たな巨大水産物消費のマーケットとして注目されているハラル圏についての情報が詰まった有意義なセミナーとなりました。販路開拓の一つの手段として、海外への水産加工品の輸出を考えている方にとっては良い情報が集められたのではないでしょうか。
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。