平成27年11月25日に八戸商工会議所にてセミナー「これからの水産加工・食品加工に求めるもの」が開催されました。お客様のニーズやトレンドを一番近くで感じている百貨店のバイヤーという立場から、今後、水産加工品の開発や売り込みに役立つ情報をお話しいただきましたので、レポートします。
食品においては当たり前ですが、「おいしいもの」が求められます。ただし“おいしい”というのは味覚だけではありません。香りや色。形など「五感」で感じるものの他に、脳で知る「情報」もすべて含めて“おいしい”と思うのです。 例えば、目隠しをして二種類のマグロを味覚だけで食べ比べをしてもらうと人はその差を説明しにくいものですが、目隠しを外し、さらにその二つが「大間産生本マグロ中トロ」と「輸入冷凍解凍マグロ」であるという情報を伝えるとはっきりと判断しやすくなります。 つまり、人はものの差を判断するとき、ハダカの商品ではなく【どこの】【だれの】という付随情報が重要な要素となるというわけです。
情報が商品の個性を引き立てますが、その情報はどういうものか? 答えはお客様によって違いますので「これ」と言い切れるものはありません。そのため、常に以下のことを考え、情報を選び、お客様に与えるようにしています。
試食販売の際には業界ではテッパンですが、右のような心理をついた5つのテクニックを使っています。 店頭で販売される際や、商談の時にも使えるワザだと思うので、是非試してみてください。
売り先と一概に言っても小売、飲食店、通販など複数あります。小売も百貨店、スーパー、コンビニなどに分かれ、それぞれの地域や店舗によってカラーが違います。 よって、どういうところに売りたいのか、そこに来るお客様は他のどのお店でもないその店舗にどうしていらっしゃるかの分析が、お客様に求められる商品作りのヒントになると思います。
持論ですが、「買うモノ=お客様にとって有益なもの」であると考えます。「いいな」、「得したな」と感じていただけるような武器を持っているかが商品の魅力につながっていくと思うのです。ここでいう「武器」とは、
例えば、私たちのお客様ですと、「情報」の部分で商品の背後にあるストーリーに感銘して商品を買っていかれる方が多いです。しかしそれは「価格」であったり、デザインの良さであったりと、販売先によって重視されるものが異なりますので、ターゲットをじっくり研究して一番あった武器を揃えていってください。
モノがありふれ、揃わないものがない時代。消費者の購買動機も変化し、生活センスを上げたいだとか、非日常を日常に求めたり、通常の品質+αを望んでいます。 そんな中で選んでいただくためには「独自性」と「差別化」がキーワードになります。 さらに、競争が激しい市場なのか独占市場なのか、薄利多売なのか、高価で利幅が高くても売れる市場なのかなど、自分たちが参入していくマーケットの状況を頭に入れておくことも大事です。
商品を作るとき、原料や製法などたくさんのこだわりを持っていると思います。 その質の差は武器となるのですが、皆さんが思っている以上にその熱意はお客様に伝わっていません。 ではどうやって、お客様にこだわりを伝えてブランド化していけばよいのでしょうか?
作り手・販売側の気持ち 明確なブランドアイデンティティ
お客様の気持ち明快なブランドイメージ
ブランド化に向けて、まずは、ブランドアイデンティティ(=企業の個性要素)を明確化することです。「どのようなブランドになりたいか」をしっかりと考え、あるべき姿を作ることから始まります。
例)感動させたい、満足させたい、日常、非日常、最高品質、質より量、どの市場で(ポジショニング) ・・・
また、「下手は上図の手本」ということで、弱いブランド10か条を右に示します。自分たちの戦略に当てはまるものがないか確認してみてください。
私たちバイヤーは、全国からたくさんの「いいもの」、「おいしいもの」の提案をいただきます。その土地にしかないもの、珍しい食べ方など現場の人が知っている情報は本当に素晴らしいものばかりです。 そういった知識をお客様にも広める為、毎月発行している冊子の中でテーマを決め、商品のいいところを掘り下げてご紹介しています。
例えば「ブドウ」。 何気なく売り場に並ぶブドウですが、季節によって種類も変わっていきます。 これをカレンダーにして「はしり・しゅん・なごり」でどのように移り変わり、それぞれどんな特徴があるのかを紹介し、その「価値」を知ってもらっています。 ブドウと言えば、今は「種無し」「薄皮」「甘い」がトレンドですが、生産者からすると、「種有の方が味が濃くておいしい!」 今一度本来の美味しさを知っていただくためのきっかけとして、上の記事のように、種有のブドウに「男子ぶどう」と名付け、「本当はこういうものが旨いんだ!」という現場の声をキャッチ―なネーミングで、気張らず伝えました。 おかげさまで、売り場でも話のネタになり、お客様の評判も上々でした。
最後に 魚離れという言葉が叫ばれておりますが、食卓にもっと取り入れたい、「魚を食べたい」という意識を持っている人が多いのが事実です。 百貨店の売り場は、時代の流れとともに移り変わります。その中においても魚売り場は20年前からほぼ変わらない形態です。ここにも魚離れの原因があるのではないかと思います。 こういった部分を見直し、少しでも魚好きなお客様を増やしていきたいと考えています。
徹底的にお客様の目線に立って商品を見ることの大切さがよく伝わりました。 また、商品を取り巻く情報の伝え方も今後の大きなヒントになったのではないかと思います。 非常に有意義な情報を聞かせていただきました。
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。