水産マネジメントサービス株式会社代表取締役
北舘 裕志氏
専門分野
私は平成26年に水産マネジメントサービス株式会社を設立し、水産加工業に関する売上促進、商品開発、品質管理、HACCP認証などのコンサルティングなどを行っています。 平成27年からは、復興水産販路回復アドバイザーとしてとしても活動を開始し、アドバイスをした企業は本業を含め延べ100社を超えます。 これまで皆さんからいろいろとお話を伺ってきた中で、クライアントが抱える問題の傾向が大きく分けて次の3点に分類されることが分かってきました。
この()部分は、私がHACCP審査時に使う表現法ですが、現実を把握するのには最適です。
①は生産規模の拡大について、既に販路や注文があり、生産効率や生産能力不足が主な問題です。抱えるリスクは、過剰投資による倒産リスクのみで、そこは費用対効果の数値化(費用便益分析)をしっかりやっていれば大丈夫だと思われます。
②は自社製品の需要把握を簡単に論ずることができないため、今回は③の「そもそも販路がない」について詳しく触れたいと思います。
「そもそも販路がない」
こういった状況は中小企業に大変多くみられます。これは、「津波により工場が流出し、再開するまでのリードタイム中に既存顧客を失った」、「福島第一原発による風評被害により出荷停止を余儀なくされ、その後に顧客を失った」というのが主な原因です。
しかし、販路を失ったすべての企業がそのままでいるわけではありません。それでは販路が戻らない企業とそうでない企業の差は何なのでしょうか?まず以下の2点を見直していくべきだと思います。
企業間というより人間同士の繋がりが商売にとって最も重要で、これが全てと言っても過言ではありません。
販路が戻らないと嘆く事業者の方の中には、一番大事な末端の顧客への営業に同行せず、荷受や商社の担当者を訪問するだけ、もしくは価格や商品規格書くらいしか提示してこなかったという方も少なくないのではないでしょうか?
商談へ行くこともなく、店舗リサーチすら行わず、顧客の競合情報すら調べずでは、良好な関係性は築けません。
今のバイヤーは報告書など事務手続きに翻弄されている場合が多く、実際に行わなくてはいけない店舗回りなどができていない状況ですので、そういった相手の事情も考えながら、「痒い所に手が届く」存在になることが大切です。メーカーとして何を補完できるか考えた先により密度の濃い人間関係が形成できるわけです。
「売れる何かを持っている」「品目、品質、価格等で秀でた部分がある」など何かで差別化できるものを持っていないと、確実に減っている国内需要の中で競合と戦っていけません。
国はその厳しい現実を踏まえ、補助事業として、魚種転換や企業連携、輸出促進という部分に力を注いでいます。これを私なりの解釈で言い換えると、
となります。 今までのやり方を見直し、補助事業等も利用しながら柔軟に変化することがこれからは大切になっていくと思います。
今回は限られた文字数ですが、その中で御社の商品が売れるようになるヒントを見つけていただければ幸いです。 復興水産販路回復アドバイザーとしてもこのようなアドバイスを行っておりますので、何か困りごとがございましたら、ぜひご相談下さい。
※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。