萬商相談
金井 毅氏
専門分野
新型コロナウイルスの影響で、出口が見えない苦境が続いている企業様も多いかと思います。コロナ禍で生活、消費など世の中の状況は一変しました。しかし、この大きな変化は企業の大小を問わず、新たなビジネスチャンスをつかむ好機と捉えることもできると思います。 そのチャンスをつかむために、まずやるべきことは、最新の技術や流行をいち早く取り込むことではなく、自社の経営戦略を固めること。今回は、自分たちの「強み」の見つけ方について書かせていただきます。まずは、その強みを分析するための3ステップを紹介いたします。
下図のように「強み」と「弱み」を全社員(パート・アルバイトの方も)で考えて、思いつくことをポストイットなどで貼ってみてください。内容は商品、会社、社員、経営、お客様など有形・無形気にせず、無礼講で構いません。出来上がったものを見つめていくと新たな発見があると思います。その中から強みを洗い出します。
あくまで私の個人的な見立てですが、多くの企業様が従来の商流に固執し、売る相手(ターゲット)を間違えていることが散見されます。コロナ禍で消費行動も大きく変わっているので、強みを見直すことにより、ターゲットを再度検討してみてください。売る相手とは「買ってくれそうな消費者」であり、その上で売り場を想定してください。「こんな売場」で「こんな人」に会ってもらいたいという思いを持つことが大切だと思います。
強みの分析とターゲットが見えてくれば、あとは「売り方」を改善するだけです。 その際には「今すぐできる事」からが基本です。ないものねだりではなく、「あるもの磨き」。陳列、レシピ、POPなどできる事はたくさんあると思います。SNSでの情報発信などは、ある意味「タダ」でできる販売戦略です。その上で、IT投資など「お金をかける改善」も検討していくべきだと思います。
簡単に書きましたが、この3ステップが肝要で、実は大変です。 復興水産販路回復アドバイザー、コンサルタントなどの外部人材の活用も検討されてはと思いますが、まずは自分事化することが大切ですので、上記のようなステップで自社についての見直しを図っていただければと思います。
強みを知る方法としては、実際の消費者からの反応を見ることも有効です。 コロナ禍以前の話ですが、良く私が実施していたのは、首都圏の人気の飲食店などでメニューとして使ってもらい、料理人さんやお客様の話を生産者の皆様に聞いていただく方法です。お店でお客様と一緒に生産者様がメニューを味わうことで、自社の商品の「強み」や新たな発見をすることができ、既存の商流での強化と新たな売り方へのヒントを見つけることができます。
売場で販売してみるのも良いのですが、一歩進んで「食べ方」提案の重要性を実感いただくことができると思います(小売りもお酒とのマリアージュを求めています)。
また、意外な強みが「地元の食べ方」です。 “地元や本場ではどのような食べ方をしているか”という提案は効果絶大だと思います。 たとえば、「朝採れのワカメのしゃぶしゃぶ」を紹介したところ、一気に購買につながりました。 以前、売場と生産地をリモートでつなぎ、食材の良さ・食べ方を訴求した売り場を作りテスト販売をした際には、コロナ禍でなかなか遠出ができないことも起因していると思いますが、画面を通じた「生の情報」「生産者の言葉」にお客様からも反応をいただき、販売を促進させることができました。 この手法はコロナ後の実演販売モデルともいえると思います。出張経費なども掛からないのが味噌です。
このほかに、「地域」という強みもあります。 先の事例は水産加工品ではありませんが、岩手・江刺の複数のリンゴ農家が協力して様々な品種をひとつの箱に詰め合わせたアソートパックを販売したところ非常に好評でした。 自社商品のアソートで良いのでは?と思いがちですが、消費者からすると、色々な生産者の商品を一度に食べ比べすることができる商品は魅力的です。そのため地域の生産者が連携することでこれまでにない新たなビジネスチャンスが生まれると思います。
また、コロナ禍で「安心」「安全」「保存」というニーズの高まりによって、冷凍ニーズが増大していますが、それ以上に技術の向上により「美味しさ」「鮮度」の担保ができるようになったことで、ビジネスチャンスが拡大しており、最新冷凍技術は水産加工業の大きな武器になると実感しています。
ここまでいろいろとお話をしてきましたが、何か「ピン」と来るものがあれば、是非「動いて」みてください! 何かありましたらいつでもご相談に乗りますので、「復興水産販路回復アドバイザー」へお声がけいただければと思います。
※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。