令和3年11月8日に第23回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」において、「復興水産加工業等販路回復促進事業の取組状況について」というテーマでセミナーが行われました。
竹葉氏より令和3年度復興水産加工業等販路回復促進事業の取組内容について説明がありました。 概要についてはこちら(令和2年度復興水産加工業等販路回復促進事業の取組状況について)を参照ください。
令和3年11月8日、第23回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」において、「小さな力の商品開発 〜お客様に選んでいただくために」と題し、売れる商品のキーワードや商品パッケージの改善点等についてご講演いただきました。
商品開発のお手伝いをさせていただく際に、まずこれが一番大事だと思っていることが「自分たちのコンセプトをしっかりと持つこと」です。どういう「コンセプト」で商品を作っていきたいのか、想いやこだわりを持って作っていただくように、事業者さんにお話をします。そこをしっかり持っていないと、商品がなかなかいい方向にいきません。 例えば、化学調味料不使用や、地元の食材にこだわるなど、何かコンセプトを持っていただくようにしています。 一方で、「消費者が欲しい商品」を作ることも重要です。勢いで作って売れていない、ということもありますので、今、消費者はどういうものを欲しいと思っているかを考えながら作りこんでいくことを勧めています。
このコロナ禍で、売れる商品が変わってきているように思えます。今、消費者に求められている商品のキーワードというのは、①あると助かるもの、②ちょっと贅沢なもの、③家族で楽しめる「食」です。
特に需要が高まっている、「あると助かるもの」として、レトルト商品や冷凍商品があります。 レトルトで賞味期限が1,2年あるものは、やはり人気が高いし、売る方も売りやすいです。 また、これからどんどん伸びていくのが冷凍食品だと思います。冷凍食品は、漬け丼の具のように加工したものもあれば、飲食店等に向けて素材そのものを冷凍したものもあります。お刺身をそのまま冷凍したものは動きがいいと聞いています。 ただし、課題として、新鮮なまま冷凍するために急速冷凍機が必要、飲食店向けにはサイズの揃った原料の確保などがあります。
商品を販売していくにあたって、パッケージデザインはとても大事なものだと思います。 パッケージデザインを変えることによって、売り上げも変わってきます。 消費者に興味を持たせて、「買いたい」と思わせること、商品の魅力を一瞬で伝えるようなパッケージが必要になってくると思います。
実例として、以下の商品パッケージを御覧ください。
商品名は、子供でも高齢の方でも覚えられるような名前を付けるようにしています。 フルネームで呼んでもらわないとなかなかブランド化もできないと思うので、覚えやすい名前を付けるようにしています。また、できるだけ地名を入れるようにしています。 お客様との会話のきっかけになるよう、少し引っ掛かりのある商品名を付けるといいかもしれません。
消費者の皆さんは、商品の背景にある物語に共感して商品を買うと思います。物語がない商品は、一時的に売れても継続しないのではないかと思います。 大体、こういう話をすると「うちの商品は物語がないです」なんて言われますが、実際、物語の要素はたくさんあって、地域や食材の魅力、暮らしや人、商品開発のきっかけ、苦労したことなど、ちょっとしたことから大きな事柄まですべてが物語になると思います。 このことを踏まえて、商品を作る時は、自分の商品の物語が何なのかを考えてみてもらいたいです。 特に、被災されて一から加工場を作って、という方は本当に苦労されているので、その中で作り上げた商品というのは、やっぱり物語があると思います。 また、常に心掛けているのは、お客様、バイヤーさんに喜んでもらい、ファンづくりをしようという気持ちを忘れないようにすることです。 この気持ちを持ち続けるが大切であると、ご一緒する方々には伝えています。 加えて、先述しましたが、「自分たちのコンセプトをしっかり持つこと」が重要です。 そして、安心・安全は当たり前ですけれど、やはり「美味しいこと」。 最初は見た目が大事で、パッケージなどに惹かれて買っても、美味しくなければ次また買おうと思ってもらえませんので、美味しいということがとても大切なことかなと思います。
令和3年11月8日に第23回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「水産物の放射能調査について理解を深めるために」というテーマでセミナーが行われました。 放射線に関係する基礎知識や最新の水産物のモニタリング結果等ついて説明を行っていただきました。
放射性物質の話をするときに必ず出てくるキーワードが、「ベクレル(Bq)」と「シーベルト(Sv)」という単位です。 「ベクレル(Bq)」は、放射能の単位で、数値が大きいほどたくさんの放射線が出ていることを意味します。キャッチボールで例えると、この場合にはボールの種類は関係しませんが、ボールをキャッチした回数になります。つまり、体内に取り込んだ(食べた)放射性物質の量ということです。 また、「シーベルト(Sv)」は、人が受ける被ばく線量の単位で、数値が大きいほど体の受ける影響が大きいことを意味します。同様に例えると、ボールをキャッチすることで受けた体への影響となります。ここでは、ボールの種類やスピード、つまり放射性物質の種類の影響も関係してきます。 これらの関係を表すと、以下のような式で表せます。 77,000ベクレルもの放射性物質を取り込まないと、1ミリシーベルトにならないとなります。 このことから、放射性物質の摂取の有無ではなく、摂取量が重要であることがわかります。
2012年に政府は、福島第一原発事故による食品(飲料水含む)からの被ばく量を「年間1ミリシーベルト以下に抑える目標」を立てました。 目標とした年間1ミリシーベルトは、放射線防護に関する専門家の集まりである「国際放射線防護委員会」によって、世界各地の自然からの被ばく量の差を踏まえ、誰でも受け入れ可能な追加被ばく量の目安として示したものです。 そもそも生活をする上で自然から放射性物質の影響を受けており日本では、それが年間2.1ミリシーベルトになります。それからさらに食事で放射性物質を摂取しても、影響を受けないとされるのが年間1ミリシーベルトという数値になります。
「厚生労働省」、「福島県」及び「コープふくしま」において、食事に含まれる放射性セシウム等から年間どの程度の影響を受けるのか、年間1ミリシーベルトを下回っているかについて調査しており、以下のような結果となっている。
このように、いずれの直近の調査でも食品中に含まれる放射性セシウム等からの被ばく量は、目標である年間1ミリシーベルトの1%(0.01ミリシーベルト)未満であるという結果となっている。
福島県の調査結果では、放射性セシウム及びストロンチウム90の摂取量は、以下の図のとおり、日本人が過去に経験した量と変わらなくなっている。
福島県産魚介類の放射性セシウムの検査は、県の公的検査に加え、漁協の自主検査も行われています。
それぞれ、国の基準値(100ベクレル/kg)及び自主規制値(50ベクレル/kg)を上回った場合は、数値が安定して下がるまではその魚種の出荷制限又出荷自粛されます。
2011年度では、検査件数の約1/3が基準値超過となっていましたが、2015年度以降では、国の基準値を上回ったのは3例でした。2017年度以降は、全検査の99%で基準値の1割以下(10ベクレル/kg以下)となりました。 魚介類の放射性セシウムが低下した主な原因は、 ①魚介類の体内から排出された ②海底土など環境からの取り込みはごくわずか であるためと考えられています。
漁協の自主検査で自主規制値を超えた回数は6回で、そのすべてで出荷制限、または出荷自粛が行われています。 消費者の方に福島県産の魚介類を安心して買っていただくためには、このように、きっちりとモニタリングし、そのデータを公表することで、水産物が安全であることを伝える取組の積み重ねで、安心が生まれると思っています。 各漁協や県でも調査していますけれども、水産庁も福島県以外の水産物も調査していますので、引き続きモニタリングをしっかり実施していきたいと考えています。
令和3年11月9日に第23回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて「いまこそ日本の水産品の輸出を世界へ!PPIHグループ基調講演とハラルビジネスの可能性」というテーマで3人の講師の方からご説明いただきました。
弊社では、海外では2006年から展開しており、現在90店舗を展開しています。新中長期経営計画として、10年間で約10倍の売上を目指しています。 現状の方針は、「サプライチェーンの構築からバリューチェーンへの発展」として、その特徴として、自社で直接貿易をしていること、また店舗にてお客様の声を聞き、商品を探していくという戦略をとっています。 日本産品の販売をする上で付加価値をポップなどにしてお客様に伝えることで、バリューチェーンへと変化させていくといった状況です。
まず、海外で日本産品・日本食材を普及していくための戦略として、次の4段階があります。 ① Eating(食べてもらう) ② Learning(知ってもらう) ③ Buying(買ってもらう) ④ Cooking(調理してもらう) それぞれの段階をカテゴリーとして設定し、当てはめることで段階的に取り組んでいます。 コロナ禍において需要の変化があり、内食需要が高まり、顧客がより良い商品を求める傾向が強くなっています。 そのため、高品質である日本食のニーズも高まっており、そのポテンシャルも高いことから、家庭用食材として価値を伝達できる商品のご提案をお待ちしている状況です。
次に、小売、流通業の使命として「日本食文化の浸透に向けて行うこと」で3点あると考えています。 ①付加価値の伝達 ②グローサラント業態の確立 ③SDGsの実践 会社の使命として「日本食を世界の家庭食に浸透させること」を掲げています。 生産者、流通業者、小売事業者ともに繁栄していくためには、持続的な取り組みが必要不可欠であると考えます。 そのため、地球環境保全の観点から施策を組み立てることが最重要と考え、SDGs活動に取り組んでいます。
「Pan Pacific International Club」という会員組織があり、こちらは日本産品の輸出拡大に向けた関係団体とPPIHグループのパートナーシップ組織になります。 アライアンスメニューとして、専用サイトの作成、会報誌の発行、メールマガジンの配信をしているほか、輸出相談会や県産品フェアを開催しています。 県産品フェアでは、思っている以上に日本産品の需要が高いことがわかり、初めて輸出した商品も反応が良く、今まで輸出していない商品を探しています。
弊社のブランドである「DON DON DONKI」は、日本製もしくは日本市場向けの商品や、日本産品を手に取りやすい価格で提供するジャパンブランド・スペシャリティストアをコンセプトに、シンガポール・タイ・香港・台湾などの環太平洋エリアにおいて多店舗展開を進めています。 この度、既存の「DON DON DONKI」に情熱を持ってセレクションした日本の商品」および当社のオリジナルブランド「情熱価格」を中心に取り揃えた世界初の情熱価格ストアとして、マレーシアに「JONETZ by DON DON DONKI Lot10」をオープンしました。 「JONETZ by DON DON DONKI Lot10」のオープン前とオープン後の課題としては、次のようなことでした。
課題からわかったことは、安心して食べられる商品を求めていることがわかりました。 これは、ハラール商品は価格は高いから売れないということや日本の商品が流通していないから市場がないということはないということでした。 お客様が手に取りやすい価格で積極的に展開することはもちろんですが、ムスリムの方々は、価値に見合っていれば価格に関係なく購入されていきます。 また、店舗全体の人気商品の上位を見ると、生製品の中でも鮮魚の人気が高く、魚種別では、サーモン・たらばがに・本まぐろが人気となっています。特にサーモンを使用した刺身・寿司の人気が高いです。 最近、マレーシアでも珍しいハラール認証の冷凍切り身を導入したところ、とても好評となっておりました。 このことから、ムスリムの方々の消費者意識(価値)を刺激する商品を多く製造していることから、日本食はコロナ禍が収まり次第試食なども行い、日本食をムスリムの方に伝えていきたいと考えております。
日本から水産品を輸出する場合、輸入相手国にハラル認証が必要…途中段階の加工や輸送や調理がブラックボックスとなってしまうため、日本から送るものはハラル認証が必要になります。
例)しょうゆ→本醸造なら使用可能 味噌→無添加なら使用可能 酢→アルコールを添加していないなら使用可能(米酢・黒酢・赤酢など)
ハラルの勉強をすると、オーガニック・ベジタリアン・アレルギーについても知ることができることから、外国人の方々の考え方を理解できるようになり、外国の方々との交渉がうまくなります。
令和3年11月9日、第23回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」にて、ほやほや学会によるセミナーが行われ、ほやの魅力や、認知度向上・販路拡大の取り組みについて紹介していただきました。
「ホヤ」は宮城県を代表とする海産物。震災前には、全国の生産量の8割以上を占め、その多くは韓国向けに販売されていました。 震災後、原発事故の影響による禁輸措置が続き、苦境に立たされた「ホヤ」の販路を拡大するため、ほやほや学会が設立されました。東北の復興をミッションに掲げ、「ホヤ」の認知度向上と消費拡大を目指し、情報発信やメニューの考案、伝道師の育成、産地ツアー、イベント企画・実施、コミュニティ運営などを行っています。
そのほかにも、「宮城ほや協議会」を立ち上げ、生産者や加工会社とともに、「ホヤ」の取組みを進めています。
20代~40代の女性160人を対象としたアンケートを行ったところ、8割がまた食べたい、美味しいという結果になりました。 また、「ホヤ」には多様な食べ方があり、生で食べると「ウニ」、加熱すると「カニ」、乾燥品は「唐墨」の味に似ており、殻は出汁に使えます。また、最近では有名レストランでも有効な食材として多く取り入れられています。 「ホヤ」に対して「くさい」という印象もありますが、それは鮮度の悪くなった「ホヤ」であり、鮮度を保った「ホヤ」を流通させることで対応できます。
上記のお店も含めて、2020年に「冬に食べようほやフェア」を開催しました。 「ホヤ」を取り扱ってくださるお店へのインタビューを行ったところ、お店のコンセプトには共通点がありました。 地域食材や地産地消にこだわり、生産者の顔の見える素材をできるだけ使うこと。生産者の声を届けること、手作りにこだわること。 また、環境・地域課題への取組みにも関心が高いなどがあげられます。客層としては30代以上の食にこだわりのある方が多くあげられました。
「ホヤを取り扱うこと・アレンジメニューに取組んだこと」の動機としては、震災があった地域・生産者への応援の気持ちや、ホヤの食材としての面白さ・魅力、チャレンジ精神があげられました。 また、他店との差別化をはかりたい、生産者との出会いなどがありました。
ホヤについてもっと知りたい方はこちらをご覧ください
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。