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セミナーレポート「東北復興水産加工品展示商談会2019事前セミナー(八戸)」

令和元年5月20日、八戸市水産会館において、販路開拓セミナーが開催されました。その中で行われた2つのセミナーをご紹介します。
まず、青森県とヤマト運輸、およびヤマトグループの企業との連携によって構築された生鮮食品等輸送サービス「Aプレミアム」、「YNA」についての説明が行われました。
次に、復興水産加工業販路回復促進センターの支援メニューについての説明がなされました。

セミナーレポート①Aプレミアム及びYNAについて

青森県県土整備部港湾空港課
ロジスティクス推進グループ
主幹
里村 典彦

「Aプレミアムを利用した西日本や海外への流通拡大について」

青森県は、これまで生鮮品をより遠くのお客さまにお届けすることが難しいという課題を抱えていました。そこで、この課題を解決するために、ヤマト運輸の協力を得て、平成26年に「Aプレミアム」という流通サービスの構築に着手しました。「Aプレミアム」は、小ロット・多頻度のスピード輸送と保冷一貫輸送を行うもので、現在、このサービスを利用して運ばれているものの約9割を鮮魚とホタテが占めています。

平成27年からこのサービスを開始、翌日には香港に到着するという画期的なスピードを実現してまいりましたが、バイヤーさんのニーズが多様化してきたことを踏まえ、「Aプレミアム」のサービス拡充を検討し、今年3月に県とヤマト運輸(株)、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン(株)の3者で、改めて連携協定を締結しました。
それによって、中ロットの取引に対するサービス、そして海外への輸出に関するサービス内容の拡充を行いました。

今回拡充されたサービスのポイントの一つがYNA(Yamato Natural Aircargo)と呼ばれるサービスです。この内容については、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン(株)に説明をお願いしたいと思います。

ヤマトグローバルロジスティクスジャパン株式会社
貿易物流カンパニー/営業企画課
高木 翔太

ヒットのカギは「感動」と「話題性」

それでは、YNAについて、ご紹介させていただきます。

YNAは特殊梱包による生鮮食品等を高品質・低コストで国際定温輸送するサービスです。

特徴の1点目は、品質劣化率の改善を行い、温度変化の少ない輸送方法で商品の品質劣化を防ぐということです。
2点目はコスト面です。生鮮食品を送る際は、クール料金が加算される分、運賃が高くなります。しかし、YNAは専用梱包により、常温で一般貨物扱いで輸出ができるので、輸送コストを削減できます。
3点目は、物量に応じた梱包や現地ニーズに合わせた納品方法など、お客さまのご要望に合わせたコールドチェーンが提供できる点です。

従来の輸送方法とYNAの比較を示した表をご参照ください。
「航空保冷コンテナ」といわれるものが、ドライアイス蓄冷式で一定の温度を保つことができ、温度管理が徹底されているため、品質が良い状態で輸出できるものになりますが、基本的には1社で1コンテナを貸し切っていただくことになります。
従って航空運賃が高くなり、単価が高いものでないと輸送費が回収できないという課題があります。

「キープクール」というサービスですが、これは野菜や果物を輸出する際に使われています。空港では冷蔵庫で保管され、飛行機が飛んでいる間は常温保管になります。上空は低温ですから、飛行機が飛んでいる間は素材に対するダメージの心配はありません。ただ飛行機の積み下ろしの時間は常温になりますので、どうしても素材のダメージを生んでしまいます。それを解決する方法としてつくったのが、YNAというサービスです。

ずっと常温扱いですが、荷物の中の温度は一定に保たれるというサービスになっています。

実際に、第3者機関である農研機構にご協力いただいた共同輸送検証でも、品質の良さを実証することができました。

YNAは、温度帯としては10℃から20℃くらいまでを保つようなサービスです。
魚ですと、10℃以下あるいは5℃以下が良いといったご要望もあるでしょう。このようなさまざまなニーズに応えるために、現在、私たちはYNAのブラッシュアップに取り組んでいます。
また、ヤマト運輸では、羽田クロノゲート支店が食品安全の国際規格である「FSSC22000」の認証を取得しました。
物流カテゴリーでの認証取得は世界で初めてとなります。東北復興水産加工品展示商談会2019のご準備をなされる中で、また商談会の中で輸出のお話などが出た場合には、ぜひ弊社に気軽にお声がけください。販路回復のためのお役に立つご提案をさせていただければ幸いです。

セミナーレポート②復興水産加工業等販路回復促進事業について

全国水産加工業協同組合連合会
常務理事
提坂 猛

復興水産加工業等販路回復促進事業を含んだ直近の水産庁の事業について概略をご説明させていただきます。

実績のある専門家が相談を受付

まず、復興水産加工業等販路回復促進事業とは、東日本大震災によって被災した被災地の水産加工業の販路回復に向けて、専門家による水産加工業者等への個別指導、セミナー等の開催、被災地の水産加工業者等が行う販路の回復・新規開拓の取組等を支援するものです。
実施主体は日本水産資源保護協会、大日本水産会、東北六県商工会議所連合会、そして私ども全国水産加工業協同組合連合会(以下、全水加工連)の4機関で構成される復興販路回復センターコンソーシアムで、事業の内容は復興水産加工業等販路回復指導事業(以下、指導事業)と水産加工業等販路回復支援事業(以下、支援事業)、この2本の柱に分かれています。

まず指導事業についてですが、内容は以下のように5つに細分化されています。

①アドバイザー指導事業
販路回復に取り組もうとする加工事業者の方々に対して、適切な助言ができる専門家を予め復興水産販路回復アドバイザーに任命した上で、被災地の加工業者に対する助言・指導が積極的に展開されています。事業全体の「入り口」と思ってください。復興水産販路回復アドバイザーは、さまざまな分野で豊富な実績をもつ専門家であり、74名の方に在籍いただいています。相談費用は一切かかりませんので、ぜひご活用ください。
②セミナー等開催
29年度は28回、28年度は38回、27年度は29回実施しました。被災地を中心に各地の事業者向けに、さまざまなテーマを掲げてセミナーを開催しています。
③東北復興水産加工品展示商談会
毎年、仙台国際センターを会場に開催しています。国内外のバイヤーを一堂に集めて、青森・岩手・宮城・福島・茨城の加工業者等によるブース展示、セミナー、個別商談会が行われます。今年は6月25日・26日の両日、開催されます。
④情報共有化事業
復興水産加工業販路回復促進センターのホームページで、情報の発信を行っています。アドバイザーへの相談についても、このホームページからアクセスできます。
URL http://www.fukko-hanro.jp/
⑤被災地水産物流利用促進事業(講習会、セミナーによる風評被害対策)
被災地の商品に対する不安を払拭するために、事業者が被災地水産物の安全性や消費地ニーズを学ぶ講習会と、そこで学んだことを実践するためのセミナーを、特に被災地の情報が届きにくい西日本を中心に開催しているものです。

区切りを迎える支援事業

次に、支援事業です。これまでに失われた販路の回復、あるいは新規創出のために、加工機器の整備や新商品の開発、マーケティング調査などに必要な経費について支援するものです。
対象となる経費は以下の通りで、これらの取組に対して3分の2の補助率で支援をすることになっています。

  • ①新商品開発等のために必要な加工機器の導入経費、資材費等
  • ②販路の回復・新規創出のために必要な機器、資材等
  • ③労働力不足、経営改善に不可欠な省人化等のために必要な機器
  • ④冷蔵庫保管経費及び倉庫等保管経費
  • ⑤原料調達に必要な運送経費
  • ⑥マーケティング調査経費
  • ⑦コンサルティング経費
  • ⑧商談旅費、展示会出展経費等
  • ⑨新商品開発支援経費
  • ⑩その他、販路回復等の取組の実施に必要と認められる経費

支援を受けるために必要な手続きとしましては、まず復興水産販路回復アドバイザーの個別指導を受けていただく必要があります。その上で、何に取り組みたいのかを提案書にまとめていただきます。

一つ、採択事例をご紹介しますと、(株)ディメールさんは、震災後、販路回復に取り組んでもなかなか実を結ばないという状況の中、「個食性、簡便性、即食性が今後の流れとしてある」とバイヤーさんから示唆されていました。
しかし、当時の設備では対応が難しいという課題を抱えていました。
そこで、当支援事業を活用し、示唆に則した個食トレイパック等の製造を行うため、深絞り真空包装機等を導入し、コンビニエンスストアへの提案も強化して、目標を上回る実績を上げるに至っています。

また同社の「梅酢しめざばスライスハーフ」は、全水加工連が主催する品質審査会「第27回全国水産加工品総合品質審査会」で、農林水産大臣賞を受賞、個食対応のハーフシリーズとして好評を得ています。

直近の水産庁の情報について

最後に、水産庁の今年度予算で実施される「バリューチェーン改善促進事業」についてお話しします。水産バリューチェーンとは、水産業を構成している生産と加工、流通の総合体と思っていただければ良いと思います。

この事業の内容は
(1)バリューチェーン連携推進事業
(2)流通促進・消費等拡大対策事業
(3)水産物輸出倍増環境整備対策事業

の3つに分かれています。生産と加工、流通が連携し、水産バリューチェーン全体で生産性を向上させる取組を一体的に支援するというもので、3者が一体になった取組が要件です。協業化、連携といったことがカギになると思います。

全水加工連としましても、今後、組織を挙げて取り組んでいく課題として検討してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

感想生鮮食品の海外等遠方への輸送に関する情報および復興水産加工業等販路回復促進事業の内容について、最新情報をまじえて紹介していただきました。これらの情報を生かして、同商談会に向けた準備を進めていただければと思います。

※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。