平成30年11月16日、塩竈市魚市場中央棟において、「伊達な商談会」に参加する企業の方々を対象に『商談力強化・販路開拓セミナー』が開催されました。 サプライヤーとバイヤーの橋渡し役を担うコーディネータと、商品のブランド構築から販売促進を手がけるプロフェッショナルをお迎えして、商談力を向上させるための心得や、販路開拓に際して、もう一度見直すべき点などについてお話を伺いました。
本日は、宮城県商工会議所連合会(仙台商工会議所)が主催する「伊達な商談会」と、復興水産加工業販路回復促進センターが主催し、毎年6月に開催されている「東北復興水産加工品展示商談会」に関するデータなどをご紹介しながらお話しします。 まず、「伊達な商談会」に関しては、3つのスタイルで展開されています。1つは仙台商工会議所にバイヤーさんをお呼びして、そこに東北6県からサプライヤーさんに集まっていただく「個別商談会」です。当日の成約率は27%、2ヵ月後には23.7%と少し下がっています。2つ目は「集団型商談会」で、複数のバイヤーさんにお越しいただく点が「個別商談会」と異なります。こちらは当日の成約率が13.7%、2ヵ月後は22.4%と大幅に伸びています。3つ目が「バスツアー型商談会」で、全国のバイヤーさんに被災地へとお越しいただき、開催地のサプライヤーさんに参加していただくという形です。成約率は当日が12.7%、2ヵ月後は18.0%とこちらも大きく伸びています。
塩釜地区の「バスツアー型商談会」の実績も抜き出してきましたが、平成26年度から始まり、29年度までの成約額が1億4千万円という数字が報告されています。こちらの表を見ますと、毎年、塩釜地区のサプライヤーの皆さまには、1億円を超える売り上げを上げていただいていることがわかります。
「東北復興水産加工品展示商談会」につきましては、平成30年で4回目の開催となりました。30年度は2ヵ月後の判定で、成約率16.8%になっています。金額は29年度が2億3,600万円、30年度の実績は31年3月にとりまとめられ、発表されることになっていますが、この「東北復興水産加工品展示商談会」について、未成立の理由を調べてみました。
最も多かったのが「バイヤー企業の商流・商品規格・ニーズに合っていない」で37件、構成比14.7%。これは大変残念な結果と申し上げるしかありません。そこで、特に言及したいのが3番目に多かった「いろいろ依頼するも反応なし。連絡なし」という回答についてです。 これは「伊達な商談会」でも未成立理由として多いものなのですが、バイヤーさんからの提案やお願いに対応できない場合は、連絡しないで終わるのではなく、「ここまではできるが、それ以上はできかねる」といった自社の状況をきちんと伝えることが、良い方向に決着するために通るべき道筋ではないかと思います。 バイヤーさんは震災復興のために貢献しようと思って努力してくださいますので、その方々のお申し出に答えないという対応は、大変残念なことだと思います。
次に、「伊達な商談会」と「東北復興水産加工品展示商談会」で、どのようにしたら成約率を上げられるのかというお話をさせていただきます。 「東北復興水産加工品展示商談会」における各商工会議所別の成約率を見てみますと、八戸商工会議所は平成30年度が28%と驚異的な数字になっています。そこで、ご担当者に成約率の高さについて伺ったところ、こんなお話を聞くことができました。バイヤーさんとの組み合わせが発表された時点で、商工会議所さんが間に立ち、サプライヤーさんからバイヤーさんへのアプローチを開始しているそうです。
例えば、サプライヤーさんが希望して商談が組まれた場合は、ご挨拶を含めて「私たちはこういった商品を提案したいのです」という話を事前にしているそうです。バイヤーさんから希望があった場合でも、きちんとご挨拶をした上で、「どういった商品をご希望ですか」と話をしているそうです。
このように事前にすり合わせをすることで、成約率が上がっているのではないかということです。また、これまで「東北復興水産加工品展示商談会」のマッチングは、仙台商工会議所のコーディネータが手作業で行っていました。 しかし、今年から八戸商工会議所の組み合わせプログラムに倣い、PCで実施しています。従いまして、皆さんが売りたい商材や、希望するバイヤーさんの業種など、必要なデータをきちんと提供していただけますと助かります。成約率が上がることにもつながると思いますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
主に営業部門で飲料関連のブランド構築や新製品開発、インキュベーション室で販売促進の新規プロジェクトを推進し2012年から現職。日本ス-パーマーケット協会「次世代販促セミナー」講師、安曇野市観光振興ビジョン策定委員等を務める。 宮城県をはじめ東北の風評被害対策・販路開拓にも尽力されている。
マーケティングの基本は、what to say「商品自体を伝えるために何を言うのか」と、how to say「皆さんに買ってもらうためにどう伝えるのか」の2点であるといわれています。私たちの食生活は目まぐるしく変化しておりまして、少し前までは「魚を食べよう」といっていたのに、現状は食卓に魚が並ばなくなっていますし、首都圏の主婦の方々は、料理をつくらない方がほとんどです。従って、普遍的であるはずのwhat to sayの部分も変える必要があるのかもしれません。また、how to sayの部分ですが、最近ではSNSの口コミ効果で売れていくパターンが大変多いです。CMを大々的に打つよりも、SNSでじわじわ売った方がよく売れるという流れがあります。これは皆さんにとってチャンスかもしれません。
また、食生活が変化している分、自社の商品が持つ強みや弱みが本来の捉えられ方と違ってきている可能性がありますので、もう一度分析し直してみた方が良いのではないかと思います。その時のポイントは5つ。
そして、ここで一番のポイントになるのが「ストーリー」です。世の中の人たちが共感できる「美味しそうだな」、「買ってみたい」と思えるストーリーをメイキングしていただきたいと思います。
次に、それをどう磨くか。これは少し勉強していただきたいと思います。何か面白いことを聞いたり、見たりしたら、調べてみましょう。 テレビも見てください。情報が速いですし、トレンドもまとめています。そして、最も大切なのがリアルな現場を見るということです。商談などで訪れた都市で、自分たちと同じような商品がどう売られているのか、買われているのかをぜひ見てください。テレビやリアルな売り場を見て得た情報を収納する引き出しが頭の中にできると、そこからいろいろなものを引き出しながら、自社商品のストーリーを磨くことができるようになるものです。
地方は共感ストーリーの宝庫です。まず、消費者は地方の商品は「安心で安全である」というイメージを持っていますので、昨今、問題になっているプラスチックや添加物に関しては、簡易包装にしたり、添加物を再検討するなどして、できるだけクリアしておいた方が良いでしょう。
ただし、先に検討すべきは「量」の問題かもしれません。 食べ切れずに残してしますと、消費者には「損の感情」、すなわち「負の感情」として残ります。「もう少し食べたいな」と思えるくらいの量への調整を検討するのは、必要なことだと思います。 それから、「食文化」に注目してみてください。仙台せり鍋は根っこを食べること、そして、これが美味しいと思うところが食文化なのであり、ストーリーを感じるところです。このような「食文化」を売りにすると消費者の注目度は高まります。
塩釜の皆さんも、自社商品の「こうしたらもっと美味しくなる」という食べ方を、東京などの料理人さんに提示した方が良いと思います。それが冷凍しても美味しいものなら、共同配送を検討するのも良いのではないでしょうか。いわゆる「マッチング」です。「マリアージュ」といいますが、「一緒に食べると美味しいですよ」というものを一緒に配送するのです。キャス(Cells Alive System 食品の凍結融解に伴う食味低下を大幅に低減した冷凍技術)を利用すれば、発泡酒であっても冷凍して送ることが可能です。
次にターゲティングについてですが、セミナーに来られる方々に尋ねますと、「ターゲットは老若男女」という回答が多いのです。 しかし、それでは範囲が広すぎて、ターゲットを設定していないのと同じです。ターゲットは、狭く設定した方が広がる可能性が高いです。 例えば、AKB48は今でこそ国民的アイドルグループになりましたが、もともとは「オタク」と呼ばれる人たちが「気軽に会えるアイドル」としてデビューしました。ターゲットを絞ったことで、商品自体の特性が伝わりやすくなり、目立つ存在になったことでこれだけの人気を博したといっても過言ではありません。皆さんもぜひ、ターゲティングも再検討してみてください。
そして、次にお勧めしたいのが、強みと弱みの洗い出しです。パートさんも含む社員の皆さんに参加していただいて、ホワイトボードなどに自分たちの商品もしくは会社の強みと弱みを付箋に書いて貼り出してみてください。眺めてみると、強みだと思っていたことが弱みでもあることが見えてきたりして、新たな発見があるものです。ここに何が書かれても、社長は怒ってはいけません。良いも悪いも書いてもらうことが大切だと思います。
共感ストーリーをどう伝えるのかというhow to sayの部分ですが、今や多くの人たちがインターネットを活用し、ホームページ等を見ていますので、まず自社のホームページを持つことです。しかも、スマホ対応にしないと検索エンジンで検索した場合、上位に上がってこない可能性が高いです。
SNSでは、Twitterが最もユーザーが多いので、かなり効く媒体だと思います。Facebookはシニア層がメインで、Instagramは30代女性を中心に利用されているといわれています。仕事を持つ主婦や、子育て中の女性が多く使っているのはLINEです。LINEにはLINE@というものがあり、お客さまのLINEとつながってメッセージやクーポンの配信などが簡単にできますので、ユーザーを取り込む一つの手段になると思います。
そして、商品を「どこで売るのか」ということですが、コンビニはもはや若者のものではありません。メインターゲットはシニアです。しかし、コンビニでもデリカテッセン、いわゆる中食系はヒットしています。中でも揚げ物が売れているのは、家で油を使った料理をしたくないから。 惣菜系はよく売れていて、焼き魚も売れていますので、狙い目かもしれません。外食系も今は中間層が薄く、価格帯が高いところと低いところとに分かれています。 徹底的にコストダウンを図るか、たまに行くなら少々高くても良いお店を選ぶ傾向があります。また、きちんとした腕を持つ料理人が、一人でつくるようなお店には人が集まっています。このようにリアルな売場の情報を収集して、自社商品をどこで売るのかを吟味することが大切です。 また、ネット通販も利用者は多いです。私が教えている大学の学生に聞いたところ、大半がAmazonでしたが、ネット通販に関しては、どの会社が運営するサイトで売るべきかは判断が難しいところです。
人気と元気がある実店舗は、ドン・キホーテや丸井、イギリスの老舗玩具店ハムリーズなども、接客が行き届いていると評判の店です。そして、中国の生鮮スーパーである盒馬(フーマー)先生は素晴らしい店です。生鮮品を買うとその場で調理してくれますし、その場で食べることもできます。下ごしらえしたものを家に届けてもくれるのです。しかも、その一連のことがスマホでできて、決済もスマホで完了できるのです。これと同じような仕組みが、日本にもやってくるのではないかと私は思っています。
ここまで、いろいろと申し上げてまいりましたが、「成功」の反対は「失敗」ではありません。挑戦しなかったことこそ、失敗なのではないかと私は思っています。失敗することによって経験値が上がります。 無謀な挑戦をするのではなく、やれることをやっていくということだと思います。その中で、私がサポートできることがあれば、何かとご案内できることもあるかもしれません。ぜひ、一緒に悩ませていただければと思います。
感想 バイヤーさんのアンケート結果などが提示されたことで、商品そのものだけでなく、臨む「姿勢」も大切であることがよくわかりました。また、ターゲットを絞り込むことが、商品の特性を際立たせることになるというお話は、目から鱗が落ちるようなお話だったと思います。商談会の準備に意欲的になれる内容のセミナーでした。
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。