6月に行われる東北復興水産加工品展示商談会2018をより有意義なものとするために、5月8日から5月18日の間に、8会場(八戸・宮古・水戸・いわき・石巻・塩釜・大船渡・気仙沼の各会場)で、出展者に向けて展示商談会のセミナーが開催されました。 その中の一つである5月17日に大船渡会場で開催されたセミナーについて、当日の資料とともにご紹介いたします。
「地域資源作り請負人」として全国様々な地域で商品づくり、ブランド化支援、講演会を行う。全国の地域特産品作りに関するノウハウや知識も豊富で、地域資源作りの当事者との橋渡し役も務めている。自身も「涙の出ない玉ねぎ」「さがみの桑茶」などのユニークな商品を市場にだしている。
昨今、日本及び日本食への注目が高まっています。まさに今が国内外への農林水産物を発信する絶好の機会と言えるでしょう。
一方、日本では人口激減・超少子高齢化社会を迎えます。20年で10%も人口が減ると言われており、これは今の市場も少なくとも10%縮むことを意味しています。
日本の水産業は、戦後の高度経済成長期を経て、海岸の埋め立てが進行するとともに、工場廃水の排出などによる、周辺海域の環境の悪化、漁業による乱獲、海洋環境の変化による水産資源の減少や他食品との競合などによる価格の低迷などにより、漁業生産量、生産金額、自給率、主要な漁船数、漁業経営体数が半減し、漁業者数は20%にまで落ち込みました。
漁業を支える水産加工場数減、消費者離れが続いており、現在もその衰退が止まず、負のスパイラルに陥っています。それに対して抜本的な改革策の手立てが講じられていないのが実情です。
一方で、世界の動向をみると、漁業、養殖業による生産品への需要は伸び、中国、東南アジア、欧米諸国などは、和食文化の拡大などの影響で魚食への傾向に拍車がかかっています。
欧米諸国も、日本と同様に水産資源の減少や経営の悪化といった状態が続きましたが、海の憲法といわれる国連海洋法条約の採択(1982年)を契機に、自国の水産資源を国民が共有する財産と明確に位置づけました。そして、持続可能な開発と環境との調和のための国際的な行動計画などの国際的な約束を具体化するため、自国の漁業法などを数度にわたって改正し、科学的根拠に基づく資源管理の徹底、個別譲渡性漁獲割当(ITQ)制度の導入、漁船の漁獲努力量の削減や近代化、包括的な予算措置など中長期的かつ戦略的な水産政策を実行しています。
こうした政策の取り組みにより、欧米諸国はそれまでの資源悪化や価格の低下、経営の低迷といった困難を乗り越え、水産業を強い産業に変えたばかりでなく、アメリカ、アイスランドやノルウェーなど水産物の輸出国にまでなっている国もあります。
水産加工品の生産量は、消費者の食品に対するニーズが多様化する中で年々減少傾向にあり、水産加工業の経営体数は10年前と比較して約1,900の経営体が減少となっています。
また、中小・零細規模の経営基盤の脆弱な経営体が大宗を占め、従業員数4~9人の小規模階層の経営体を中心に減少傾向にあります。 水産加工業は、出荷額に対する原材料使用額の割合が高いため、製造業全体の水準、また食品製造業の水準と比較しても収益性が低くなっています。
○生産・加工・流通の関係者が連携し、バリューチェーン全体で、情報通信技術や先端技術を活用し、低コスト化・高付加価値化等を図る取組を促進
スマート水産業の実現に向けて、新しい技術を実装し、データに基づく効率的・先進的な水産業に転換が必要になるでしょう。漁業の実態を「見える化」し、国民に理解される水産施策の展開をする上でICT、IoT、ビッグデータ解析、AI等を活用し、漁業者、養殖業者、加工業者、流通業者は、今後データを共有することが近道となります。
一企業だけでビジネスが成り立てばベストですが、資源量等を考えると、今後は企業間連携へビジネスモデルのチェンジが必要になるでしょう。
行政同士の連携から、広域エリアでのマッチングに繋がっていく事例が増えています。
商談会等で接点を持ったバイヤーには積極的に情報を発信し、また自分から情報収集のために動きましょう
スマート水産業やエコラベル、広域連携等の世の中の動きを的確につかみ、先に行動をおこすことが大事です
既存の枠にとらわれず、ICT、IoT、ビッグデータ、AI等の活用でより高いレベルの水産業が今後期待できます
※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。