商品開発コンサルタントfoodscape(フードスケープ)代表
岩本 真理子氏
専門分野
商品を開発するにあたって重要なことは、まずターゲットと販路を想定することだと思います。 これから作ろうとしている商品は、どんな人に喜んでもらえるのか? その商品をいつ、どのように食べてもらいたいか? その人たちはどこでその商品を買うだろうか? そういった全体像をまずイメージすることが大切です。そうすることで商品の方向性が見えてきます。 その上で、販路とターゲットに合うよう具体的な商品設計を作り上げていく、という方法が確実かつ効率的です。
しかしながら、そういったマーケットインの手法とは逆に、担当者の想いが先行して開発されるものもあります。 私が販路開拓のご支援をしている商品の中にも同じような事例がありました。それは、通常商品としては扱わない若鶏が卵を産み始めて2~3週間ほどのサイズの小さな卵を使った鶏肉と卵のスープで、「一生懸命産んでくれた親鶏も、生まれてきてくれた卵も、ひとつたりとも無駄にはしたくない」そんな強い思いで開発された商品です。 今回は、このような商品について、どのように販路を広げていったかをご紹介したいと思います。
最初に会社に伺った頃は、担当者が完成した商品の売り込み先を探しているところでした。 まず、商品を試食させていただいたところ、その味のクオリティに驚きました。この完成度の高さとストーリーなどの付加価値を考えれば、きっと販路が見つかるはずだと確信しました。 しかし、ネックは商品価格が高いことです。その理由の一つは、委託加工先が地元の福祉作業所であること。これも、ここで加工してほしいという担当者の熱い思いゆえのことでした。
地元新聞にも取材していただき、地元イベントへの出店や地元ゴルフ場、キャンプ場などへのアプローチを始める中、私が勧めたのが全国ローカル缶詰専門店への売り込みです。 当初、地元ではない未知の販路への売り込みには会社の許可も得る必要があり、担当者は躊躇していました。実はこの商品開発プロジェクトは会社の本業ではなく、担当者が本来業務の合間を縫って長い時間をかけて開発したものでした。しかしダメで元々です、電話だけでもしてみたら?と背中を押し続け、ようやくサンプル送付にこぎつけました。 結果、先方に気に入っていただき、好条件での取り引きが成立しました! そして、このような実績の積み重ねが社内での評価につながり、今まで孤軍奮闘していた担当者には専任の外部スタッフが付くようになりました。
その後も地元の原材料が突如入手不可となって品種の変更を迫られるなど、幾多の困難をのりこえて、現在、前述の缶詰専門店のオンラインショップで人気商品3位にランクされています(2023年12月時点)。しかしながら、販路開拓はこれで終わりではありません。安定した量を生産、販売して会社のひとつの事業となるまでにはまだまだ長い道のりです。
ここにご紹介した例は、水産とは異なる畜産系の紹介となるとともに、商品開発・販路開拓の模範的な例とは言えないかもしれません。 しかし、担当者が粘り強く種をまき続けることで、少しずつ販路が広がっていきます。水産加工品の中にも開発者の想いがたくさん詰まった商品が数多くあると思います。そういった商品も積極的に情報発信をし、様々な販売チャネルへ挑戦していくことが、新たな販路につながると思います。
もし、事業者の皆さんの中で商品開発や販路開拓についてお悩みでしたら、できる限りご支援させていただきますので、ぜひ「復興水産販路回復アドバイザー」へお気軽にご相談ください。