一般社団法人日本食育者協会
太田 雅士氏
専門分野
私は令和4年3月末まで株式会社グルメ杵屋大阪木津市場カンパニーに勤務しており、飲食チェーンや業務向けに冷凍魚や各種加工品を集荷、販売する仕事に携わっておりました。その時に得た経験やノウハウを生かしながら復興水産販路回復アドバイザーとして、被災地の水産加工業者等の皆様に販売促進のアドバイスをさせていただいております。 今回は、前の職場でもある「大阪木津市場」で過去に3回開催された「消費地商談会IN木津」において、アドバイザーとして商談に同行した際に見えてきた、商談成立のためのポイントについて報告します。
「消費地商談会IN木津」では、そば・うどん・居酒屋・レストランなどを運営する飲食チェーンに向けた提案をサポートしました。
事前に出展メーカーと商品リストの情報を飲食チェーンの各業態のメニュー制作担当者に配布し、商談会当日は積極的に試食を勧め、後日、関心を持っていただいた商品の見積とサンプルを再度準備し、面談を重ねることで季節メニューを中心として数点の商品が採用に至りました。
バイヤーは季節感があり、なおかつ産地を謳うことができる特徴のあるものを望まれておりました。 実際の採用品目は、下記の通りです。
「消費地商談会IN木津」では多くのアイテムの採用が決まりましたが、その要因となったと思われる事柄について、いくつかご紹介します。
展示会の事後のフォローを大切にする 商談会は特に事前事後のフォローが大事なので、バイヤーに対して展示会の後に間髪なく面談を設定するように出展者へ伝えています。 その際に、商談会の時に関心を持っていただいた商品を使って試作をお願いすることで、味、原価、食材の構成など、メニューづくりに向けた課題が分かるようになり、今後の提案の方向性を明確にすることができます。
また、類似する食材を使ったメニューが以前から採用されている場合や、バイヤーやメニュー制作担当者が多忙である等の理由で商談が停滞してしまうこともあります。そのため、すぐに話が具体化せずに、メニュー化されるまでに時間を要する場合も少なくありません。中には商談会が終わった直後の11月に提案し、再来年の春メニューでようやく採用になったケースもあり、継続的に提案を行うことが必要になります。
飲食業の現場のニーズを考える 多くの飲食店が懸念するのは廃棄ロスです。例えば、ランチ用の海鮮丼の具材として、500gの大袋パックと50gの個パックのものがあったとします。500gパックのほうがグラム単価は割安ですが、開封してしまうと、その日に使い切れなければ廃棄せざるを得ないため、採算が合わない場合があります。そのため、多少コストアップしてもロスの出ない少量の個パック商品のほうが重宝されるのです。
また、同じ個パックでも、もしユーザーが1食に40g使うと想定しているのであれば、50gや100gの商品を提案しても、原価の兼ね合いもあり採用になりません。先方が求める内容や規格、価格帯について確認しながら話を進める必要があります。
今回は廃棄ロスに関する例を出しましたが、相手バイヤーや飲食店の現場での困りごとの中に商機があると思います。そのため、商談の中で「こういうことで困っている」という話を引き出して、そのニーズから提案をすることが大切です。
継続的な営業活動 メニューの導入までの道のりは長く、試作を繰り返し、プレゼンに臨み、社内での許可が下りて初めて採用になります。その間、価格や規格などの課題をメニュー制作担当者と共有し、サンプルの追加対応を迅速に行うなど、継続的なフォローが求められます。 しかし、水産加工業者の多くは人手不足が課題となっており、また、支店や支社を持たない会社も多いため、東北地域から関西圏で販路拡大を目指す場合、長期的な営業活動を行う体制作りが課題であるとも考えています。
コロナ禍で2020~2021年は商談会等が中止または規模縮小を余儀なくされましたが、今年に入り開催数が徐々に増えてきたことで、出展を検討したり、営業活動の強化を考えていらっしゃる方も多いと思います。 その際に、営業の方法や商談の進め方などお悩みでしたら、できる限りお答えさせていただきますので、ぜひ「復興水産販路回復アドバイザー」へお気軽にご相談ください。
※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。