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コラム復興水産販路回復アドバイザーコラム

第8回販路回復への歩一歩・・

大林 正道 氏
今回コラムを書いていただいた方

株式会社 前川製作所 主事

大林 正道

専門分野

  • 流通
  • 機器導入
業務再開を果たした水産加工団地(石巻)
業務再開を果たした水産加工団地(石巻)

東日本大震災より5年有余の歳月が経過し、岩手・宮城・福島の3県で被災した水産加工施設のうち8割以上が業務を再開しています。

一方で、青森・茨城を含む岩手・宮城・福島の水産加工業者のうち売上が8割以上回復した事業所は48%と、未だ売上の回復が遅れているという状況にあります。その理由としては、「販路の確保・風評問題」が44%で最も多く、次いで「人材不足(20%)」「原材料の確保(20%)」が課題として挙げられております。<H28年3月:水産庁「水産業復興へ向けた現状と課題」から>

「販路の開拓」…その為の新商品開発等が不可欠。

「人材不足」 …募集しても集まらないため、労働条件の改善・安全な場所への寄宿舎等の確保が必要。

「原材料確保」…気象等変動(地球温暖化による生態系の基となる水域の変化等)とも相俟って水揚げ減少による原料価格が高騰。

「風評被害」 …震災当初よりは収束に向かっているが、その根は深く、現に、宮城県産ホヤの7~8割方を消費してきた韓国が、2011年の原発事故を理由に宮城など8県からの水産物の輸入を停止。今尚、再開の見通しが立たない状態が続いる。国内にあっても未だ販売先の確保が難しく、ホヤは成長して食べごろの3~4年を過ぎるころから、ロープから落ちて海を汚すため、先ごろ、生産者団体に於いて市場価格の維持等をも考慮して、やむなく約1万tものホヤが処分された。

水揚げを待つ産地魚市場(石巻)
水揚げを待つ産地魚市場(石巻)

このように販路回復を果たすためには解決しなければならない課題が山積みです。
一度、しぼんでしまった販路を復活させるということは容易なことではありません。
特に、食の安心・安全、そして風評問題等は、国内だけの問題ではないのです。
科学的に安全と証明されたことでも、人の心の中にある安心というものとは、一味違うようです。しかしながら、事実をもとに正しい情報を継続して発信していくことは、何よりも大事なことであり必要なことです。

私が所属する前川製作所では、環境に最適であること・環境と共に自然に生きることをモットーに、近年、オゾン層破壊・地球温暖化対策の為の、エネルギーの使用に伴い発生する排出量のCO2削減はもとより、省エネルギー性能に優れ、且つ、冷媒として強力な温室効果ガスに追加指定されたフロン類ではなく、格段に自然環境への負荷の少ない自然冷媒(空気・アンモニア・CO2など、元来、自然界に存在するもの)を利用した冷凍・冷蔵・空調装置等を開発しております。
現状、被災地での冷凍・冷蔵・食品工場に於いて、更なる省エネ・省電力への対応が強く求められている中、上旨、地球環境の快適化を求め、冷媒の脱フロン化による温室効果ガスの排出 0 を実現している自然冷媒を用いた高効率な装置(ニュートン「消費電力量削減率20%~41%」)の実績をもとに、多くのお客様に御採用を頂いているところです。

また、今、都民の台所を担っている東京都中央卸売市場築地市場の移転延期の問題(①安全性への懸念 ②情報公開の不足等)が、大きくクローズアップされております。築地市場といえば、世界最大級の水産物等の取扱規模をもつ消費地市場として、全国津々浦々各産地からはもとより、広く海外からの水産物等を含む受託等販売を行なっている卸売市場法に基づく公設民営型の市場(食の発信基地)です。

此度の移転延期が、またぞろ風評等係ることの無いようにと、一日も早く解決し、食の安全性が確保され、且つ、安定的な販路・売上の回復を期する市場として、生産者である被災県の生鮮出荷業者・水産加工流通業者を始め、運送事業者その他水産関連業者の方達、更には、多くの消費者の人達が信頼性を俟って、真剣な眼差しで、その行く末を案じているということを市場関係者は忘れないで欲しいと願います。

※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。