有限会社フードサポート
細川 良範氏
専門分野
後編では実際に小売側での売れている商品や、今後期待されるもしくは売るべき商品について私の考えをお話いたします。(前編はこちら)
小売の水産部門は大きく「鮮魚」と「塩干・加工品」に分かれます。店の規模や立地によって違いはありますが、それぞれの売上構成比は凡そ前者が55%、後者が45%であり、最近では、鮮魚の分類に寿司類が入っている所もあることから、その割合はさらに大きくなります。 水産部門において、単一の商品の売上構成比が1%を超えるものが主力商品と呼ばれます。少し特殊になりますが、北海道で展開するSM(スーパーマーケット)の数値を例にすると、鮮魚では寿司も含め16品目、塩干・加工では20品目が該当し、この僅か36品目で水産部門の売上全体の60%を超えます。供給側にしてみれば、この品目が採用されない限り大きな売上にならないとも言えます。ここで具体的な商品例を見ていきましょう。
まずは、「鮮魚」。定番のものに加え、最近は「朝獲れ・朝網」など高鮮度訴求の商品が出てきています。本当は違うのでしょうが「高鮮度=美味しい」という感性に訴えた商品の数々は売場全体の鮮度感を上げます。一方で、その為の特殊な仕入形態や物流体制が必須となり、遠隔地や規模によってはリスクが生じます。また、売場では高鮮度のうちに販売するために、午前中は丸で販売、午後からはお造りなどへの加工を行ったり、それに伴う売場変更があったりと業務負担が増えてしまいます。既存のルートと物流時の工夫により、高鮮度を訴求する方法があるはずなので、個人的にはこの手の産直は最良ではないと考えます。
次に「塩干・加工品」を見てみましょう。塩サケだけで間口4~8尺も売場が取られ、上記の表のように様々な種類が並びます。特に北海道では塩サケは水産部門の売上の14%にも及ぶため、季節や購買層に合わせ魚種の選定、塩味の強さを吟味しています。次に、塩サバですが、こってりした脂の多いノルウェー産と適度な脂の国産があり、これらを販売のターゲットとする年齢層に向け明確に分けて訴求しています。最近では「昆布醤油」や「魚醬」などを使い、変化を加えた味付も人気です。塩サバは、水産部門全体の2%強の売上となり、大きな柱の一つとなっています。また、目先の変わった商品としては『炊き込みご飯の素』があります。現行はホタテ・アサリ・イカ・エビ等が主ですが、今後は真鯛を使った『鯛めし』や、深いカレー風味や、パエリア風の炊き込みへと広がっていくでしょう。一見すると、昔と変わらない売り場に見えますが、実はそれぞれの商品がニーズに合わせ進化しているのです。
消費が目まぐるしく変わる現代において、意外にも高価な商品が支持されていると言われています。もしこの傾向が強くなれば、関東においては、フグの薄造りや鍋、ハモの湯引きや天ぷら、アナゴの蒲焼などが今後人気になってくるのではないでしょうか。このような高価な商品は、価格に見合った満足感もあり、実際に、関西以西では安定的な主力商品として確立しているので、リスクは少ないはずです。また、これらは、近年需要が増えてきている骨無し商品でもあります。骨無しばかりを売ることがいいとは思いませんが、まずは売れる物を徹底的に売っていかないと小売における水産部門の存在はますます危くなってしまうのです。 次に来るのが惣菜化商品です。レトルト商品がそれなのですが、完成度は高いものの売上には繋がっていません。理由は簡単です。魚を使った商品は原料コストが高いため、水産各社には完成品の試食販売をするための販促経費が出せないのです。消費者としては味の分からないものに手が伸びにくいもの。この点については、調味料や酒・菓子メーカー等々とコラボしない限り、試食分のリスクを回避できません。ここが販売の工夫にもなると思います。一方、骨まで食べて貰う工夫としては、未利用の魚種開発が有効であると考えます。ヒイラギ、ネブト等市場で撥ね物となっている小魚でも、唐揚げ、素揚げであれば今の若者にも必ず受けるはずです。 いくつか写真を掲載しますので参考にして頂ければと思います。
※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。