企業レポート 被災地で頑張る加工屋さんをご紹介します
第12回茨城県川崎水産有限会社
午後1時。その日の朝、鹿島港(茨城県鹿嶋市)で水揚げされたばかりのシラスが工場に届くと、従業員たちが一斉にトラックの周りに集まりました。その中心にいるのは、川崎水産(茨城県北茨城市)社長の川﨑賢藏さん。シラスと氷の詰まった青いコンテナに手を入れ、シャリッという音を立てながらひとかき。ほんの数秒で何かを確認した川﨑さんは、そのコンテナを横にいる従業員に渡して、また同じように次のコンテナの確認作業に移りました。
▲ この一瞬が商品価値を決める真剣勝負
▲ 水揚げされたばかりのシラスの山
川﨑さんが確認したコンテナはトラックから降ろされ、何らかのルールに基づいて次々に分けられていきました。見た目はどれも同じシラスが入ったコンテナ。いったい何をしているのでしょうか。作業を終えた川﨑さんに聞いてみました。
「ここでシラスの大きさや色を見て、種類ごとに分けているんです」(川﨑さん、以下「」内同)
シラスは「小さくてグレー」と決まっているが……?
「漁をしている船が、同じ日に、同じ場所で投網をしても、時間帯が違えば魚の大きさも色も微妙に違います。それをそのまま加工して出荷するよりも、ある程度、大きさも色も揃えて出荷したほうが商品価値が高まるんです。今日は量が少ないので5種類に分けました。本当はもっと細かく分けたいくらいなんですが、早く加工しないと鮮度が落ちてしまう。制限時間がある中で見極めていくには5~10種類くらいが限度なんです」
川﨑さんは原料の種類分けの段階ですでに、シラスが製品になる姿をイメージしているといいます。
Aグループに分けるか、Bグループに分けるか、その中間で悩むこともあるといいますが、それでも数秒で判断を済ませます。瞬時の勘や判断力が求められるうえ、シラスの商品価値を決める責任まで負う仕事。川崎水産でこの作業をするのは、川﨑さんかこの日は買い付けで不在だった息子さんと決まっているそうです。
この日、工場に運ばれたシラスはトラック1台分。
それでも合計108個のコンテナ、総量およそ2.5トンという量になります。
多い日はこれが4台分、運ばれてきます。