復興水産加工業 販路回復推進センター

販路回復・助成事業・アドバイザー 相談の申し込み

コラム連載・コラム

復興水産販路回復アドバイザーに聞く

復興水産販路回復アドバイザーインタビュー第7回「営業・バイヤー経験から見える商品開発と営業強化のポイント」

被災企業に対し、商品開発や販路開拓につながるさまざまなアドバイスをする、復興水産販路回復アドバイザー。それぞれ専門分野を持つ皆さんへのインタビューを通じ、被災企業が一日も早く復興を遂げるために必要な情報をお届けします。今回は、大手飲料メーカーや食品流通会社で豊富な営業実績を持つ、フードアドバイザーの島本一仁さんにお話を聞きました。

島本 一仁 氏

島本 一仁 氏

■プロフィール
島本一仁(しまもと・かずひと)
1979年に近畿コカ・コーラボトリング株式会社(現コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社)に入社。自動販売機や飲食店向けディスペンサーの設置を促進する部門などで、営業や支店長を務める。31年間の勤務のうち8年間、食品流通の株式会社シーアンドシーに出向。「こだわり食品事業部」でバイヤーと営業を経験。現在は和(なごみ)代表、フードアドバイザーとして活動するほか、地方自治体の6次産業化アドバイザー、プランナーなども務める。平成28年より復興水産販路回復アドバイザー。

■ 中小企業でも「協業」により市場ニーズに応えられる

――島本さんはフードアドバイザーとして食品加工会社全般に関わられていますが、昨今の水産加工会社を見ている中で気づく課題はありますか?
島本さん:震災前までは、製品を作るだけで商売が成り立っていた水産加工会社も多かったと思います。そういった会社では、営業に力を入れる必要がなかった。私が驚いたのは、売り上げが30億円以上ある会社に営業部がなかったことです。震災前はそれでよかったのかもしれませんが、今は同じようにはいきません。一旦販路が途切れてしまったところに「準備が整いましたのでまたお願いします」と言っても、昔のように注文が来るわけではないので、また一から販路を開拓する必要があります。
――営業が強みになっていない企業は、どこにその原因があると思いますか?
島本さん:新しい仕事を取ってきたときに、それをゴールとしてしまっていると、仕事が次につながりません。1回目の注文は、実質的にはただ在庫が移動しているだけです。私も食品流通会社の営業時代に、初めて納品した製品がほとんど返品されてきた苦い思い出がありますが、そのようなことは実際にあるので、新しい仕事を取ったらそこからがスタートだと思って、リピートにつなげることを考えないといけません。
――たとえばどんなことをすれば、リピートにつながっていきますか?
島本さん:私が常々言っているのは、「メーカー側の都合で作ってはいけない」ということです。ではどこを向いて作ればいいのかというと、消費者とバイヤーです。消費者が買いたいもの、バイヤーが売りたいものをリサーチしてから製造を開始しないといけません。大切なのは、物を売るのではなく、コトを売ること。コトというのは、付加価値です。たとえば原料や製法へのこだわり、ストーリー性、消費者が「これ面白いな」と思えることなど、市場のニーズに応えていくことが付加価値になります。ちなみに新製品が売れるための大事な要素として、価格設定も挙げられます。スーパーに並ぶ加工食品なら、通常は税込み380円まで。これより高くても売れるのは、美肌とか整腸作用といった、特別な付加価値がある場合がほとんどです。
――絶えず変化する消費者ニーズをよく観察しておくことが大切といえそうですね。
島本さん:そういう意味では、家庭の食卓の変化にも目を向けたほうがいいでしょう。これまで家庭の食卓では、少ない品目で量を多く用意するのが一般的でした。しかし今は、おいしいものを少しずつ、たくさん並べる傾向にあります。ここでポイントになるのが商品パッケージです。見た目のいいパッケージなら、お皿に載せ替えなくてもそのまま食卓に並べられますよね。今は料理や片付けにかける時間を減らしたい人が増えています。食材を切る、使った皿を洗う、という作業がなるべく発生しない商品が好まれるので、食卓にそのまま並べられる商品を出せればベストでしょう。ただ、中小企業ではなかなか対応できないことも多いと思います。小パックの商品を作るための設備投資が必要になりますし、人手不足という問題もあります。
――そういった中小の加工会社にはどのようなアドバイスをされますか?
島本さん:「ほかの会社に委託したらどうですか?」と提案しています。震災後の被災地では、中小の経営者さんたちが共同出資をして会社を作って協業しているケースがいくつもあります。共同出資した会社間で、「あそこにレトルト釜があるからお願いしよう」「あそこはこの加工が得意だからやってもらおう」といった形で、委託し合っているのです。こうすることで、新たな設備投資や人材の確保ができなくても、新商品の開発・製造が可能になります。委託先に発注するだけでなく、自分の会社に仕事が来るメリットもあります。中小企業が多様な消費者ニーズに応え続けるには、協業がキーワードになると思います。

■ あきらめずに動く、わからなければ聞く

――島本さんは、フードアドバイザーになられる前は、どのようなお仕事をされていたのですか?
島本さん:31年間勤めた大手飲料メーカーでは主に営業の仕事を経験し、在職中に出向した食品流通の会社では営業に加えて、バイヤーとして仕入れにも携わりました。全国の仕入先や販売先を多数まわり、これまで通算40万人くらいの方と名刺交換をしてきました。企業の方から相談を受ければ、「あの人の得意分野だな」と顔が思い浮かびます。商売は看板も大事ですが、キーマンと直接会話することがいちばん大事なので、相談を受けた人とつなぎ合わせたいと思ったらその場で直接電話を入れるようにしています。
――島本さん自身が、多くの販路につながっているというわけですね。被災企業へのアドバイスにも、そのネットワークが活かされたのでしょうか。
島本さん:延べ300社以上の被災企業の方とお会いする中で、製造委託先を紹介するなど、メーカー同士のコラボを手掛けました。たとえば石巻市のメーカーから「たらこパウダーをつくりたい」という相談を受けたときは、製粉会社で小回りの利くところをつなげました。
――島本さんは、フードショーや催事、商談会などのイベントへの出展についても、アドバイスをされることがあるそうですが、出展を成功させるポイントのようなことはありますか?
島本さん:まずターゲットを明確にしてから、出展先を決めるべきだと思います。どのフードショーにも食品系のバイヤーがいると思われている方もいますが、イベントによっては雑貨系のバイヤーばかりということもあります。食品系バイヤーに売り込みたいのにそれでは、目的を達成できませんよね。どういうバイヤーが来るのかについても、事前に展示会や商談会の特徴をリサーチしておかないといけません。ターゲットを明確にしたら、今度は商品のレベルを上げていくことも大事。それと細かい話と思われるかもしれませんが、出展する際の必要備品がわかっていないと、イベント当日にとても困ります。セロハンテープ、養成テープ、ポスターなど当日までに準備するものをまとめた必要備品リストというものを私独自で作っていて、忘れ物を防ぐように役立ててもらっています。
――最後に、被災地で頑張る企業の皆さんにメッセージをお願いします。
島本さん:何ごともそうだと思いますが、自分で殻を破って突き進んでいくやる気が大事だと思います。人をあてにするのではなく、とにかく自分たちでできることをやってみる。その過程でわからないことがあれば、私たちのようなアドバイザーなどに聞けばいいと思います。私が被災地を見て気になったのは、前向きに取り組まれている企業がある一方で、あきらめムードの企業もあったことです。たとえば、「都市部のこういう場所に商品を展開したい」という希望があるのに、「わからないから」と言ってあきらめてしまう。それではもったいないですよね。取り組んでいる課題が多い中、大変とは思いますが、それでも積極的に動く人は成果が出ています。まずは現場に足を運んで、自分たちの商品がその場所に合っているかどうか、自分の目で確かめてみてはどうでしょう。やることを順序立てていけば、できることがもっとたくさんあるはずです。
TOP