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復興水産販路回復アドバイザーに聞く

復興水産販路回復アドバイザーインタビュー第3回「中小企業に必要なマーケティングとは」

被災企業に対し、商品開発や販路開拓につながるさまざまなアドバイスをする『復興水産販路回復アドバイザー』。それぞれ専門分野を持つ皆さんへのインタビューを通じ、被災企業が一日も早く復興を遂げるために必要な情報をお届けします。今回は、スモールマーケティングオフィス合同会社代表木村俊朗さんにお話を聞きました。

木村俊朗氏

木村俊朗氏

■プロフィール
木村俊朗(きむら・としろう)
スモールマーケティングオフィス合同会社代表。1983年に食品系販売促進会社に入社。1993年にマーケティング企画会社を設立し、大手食品メーカー等のマーケティング企画に携わる。2015年、小規模事業者ならではのマーケティングに集中するために、スモールマーケティングオフィスを設立。6次産業化の推進や地域ブランドの創設を数多く手がける。2014年、水産庁より復興水産販路回復アドバイザーに任命。
(注)スモールマーケティングオフィス合同会社
https://www.smollc.info/

■ 中小企業は、大企業とは違うマーケティング力を身につけることが大事

――木村さんは、本業ではどんなお仕事をされているのでしょうか?
木村さん:農林水産関係の6次産業化や、地域ブランドを作るためのコンサルタントをしています。復興水産販路回復アドバイザーとしては、商談会の準備のためのセミナーの講師や個別のコンサルティングをしています。以前は大手メーカー、大手の小売り業者向けの企画提案をしていたのですが、自分の持っているスキルを生かしたいと思って中小企業向けの仕事に切り換えました。
――大手と中小企業では、マーケティングの仕方も異なりますか?
木村さん:全く違います。私は、すべての事業者がその企業なり、その人なりのマーケティング力を身につけることが非常に重要だと考えています。マーケティングはもともと大企業向けに出来ていることもあり、中小企業の方に拒否反応を示されることもあります。でも、大企業と同じことをしなくても良いのです。何百万円もかけてリサーチをしなくても、身近な人に食べてもらえば十分に食味のリサーチはできます。不要なものはやらず、自分達向けにダウンサイジングして、必要なことだけをすれば良いのです。
――中小企業、中でも水産加工業に必要なマーケティングとは何でしょう?
木村さん:私は農林漁業の商品は、絶対にプロダクトアウトを起点にすべきだと思っています。その土地や自社の資源・技術へのこだわりを持ち、それを生かした商品を作ることが重要です。マーケットインで商品を作れるのは大企業だけです。ただ商品を販売する時には、マーケットインのフィルターをかけ、市場のニーズにマッチさせることが必要です。例えばどんなに美味しい商品でも今の時代にそれほど大容量のものは売れないし、添加物がたくさん入っているものも売れない。シーズ(素材、技術、地域文化、歴史など生産者が持っている特別な技術や材料等)にこだわったプロダクトアウトの商品が、マーケットのニーズに合うか、きちんとチェックしていくことが大事なのです。
――商品開発の後、販路を開拓するために重要なことはありますか?
木村さん:商品開発、販路開拓などを別々に考えてはダメです。商品、価格、売場、プロモーションなどすべてがバランス良く機能しないと売上げには繋がりません。商品を作ってから販路をどうしようと考えるのではなく、商品開発をする時から、誰に、いつ食べてほしい商品かを考えることが必要です。その人がどこに買いに行くかを考えれば自然に販路も見えてきます。
大企業では商品開発部、生産部、営業部など部署が異なるため連携に時間がかかったりしますが、中小企業では、裁量権のある人が本気になれば全てを一元的に見ることが出来ます。これは中小企業の強みだと思います。
――マーケティングが必要な理由は何でしょうか?
木村さん:例えば商談会などで、多くのバイヤーさんがアドバイスをくれると思います。アドバイスはもちろんたくさん聞いた方が良いですが、それぞれのバイヤーさんには自社の都合があり、すべてのアドバイスに応えるのは中小企業には不可能です。でも、きちんとマーケティングをして自分の軸を持つと、どのアドバイスを取り入れるか取捨選択が出来るようになります。水産加工業者が自分なりの考え方、売り方を持たずに、たくさんのアドバイスを聞いても混乱してしまうのではないかと思います。

■ お客様に好きになってもらうための努力がマーケティング

――実際にどうすればマーケティングが可能なのでしょうか?
木村さん:よくブランディングなどと言いますよね?パッケージをキレイにデザインしてネーミングすればブランディングと思っている人も多いと思いますが、それは誤解です。商品は、水産加工業者が作りますが、ブランドを作るのは消費者です。ブランドは一言で言ったら、「お客様に好きになってもらう」こと。恋愛と一緒で、好きになってもらうには、自分の魅力を相手に伝えなくてはいけません。好きになってもらって始めて、自分の顔と名前が相手にとってブランドになるのです。マーケティングは、「商品の魅力を」「食べてもらいたい人に」「伝える」ことです。この3つだけが出来れば良いのです。
――3つの中で重要なものは何ですか?
木村さん:一番大事なのは商品の魅力です。商談会で使われるFCPシート(注1)がありますよね?
FCPシートの「商品特徴」こそが、商品の魅力です。商談会に向けて義務的に書いて文章がおざなりになっているケースが見られますが、あそこに200文字で自分の商品の魅力を文章化してください。200文字はしゃべれば30秒です。ここに真剣に向き合うだけで、商品の魅力が格段に伝わります。
「誰に食べてもらうか」というのはターゲットです。よく「30~40代の健康に気を遣う富裕層の女性」などと書いてありますが、そうではなく「あそこの奥さん」と具体的に決めましょう。そうすると、「あの家は子供が大きいから夕飯は旦那さんと2人だけ、となると、ボリュームはこのくらいで味付けは・・・」と具体的に考えられます。「多くの人」ではなく「この人」と明確にするのが大事です。

(注1)「FCP展示会・商談会シート」は、出展者の「伝えたい情報」と、バイヤーの「知りたい情報」を1枚にまとめることで、効率的に商談を進めることを可能にした統一シートで、商談会のための商品紹介シートのスタンダードとなっている。
参照URL:農林水産省 FCP展示会・商談会シート
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/fcp/syoudan_sheet/
――プロモーションに関しては、どう考えれば良いですか?
木村さん:自社商品を売り込みたいと考えすぎると、頭の中が魚ばかりになってしまいます。でも実際の食卓にはご飯があって、主菜、副菜、汁物など色々なものが並びます。主菜も肉だったり、魚だったりします。その食卓のどこに、どんな位置づけで自分の商品を置いてもらうかを考えなくてはいけません。例えば丸々1匹の味付きサンマの真空パックだと、買いに来た人はどう使おうか悩むかもしれません。そこでお皿に載せた食卓の写真などで食べ方提案するだけで、「これは副菜に使えそう」などとイメージしやすくなるんです。
私が手掛けた事例でも、ブイヤベースが成功したことがあります。ブイヤベースを家で食べたことがあるのは100人に1人くらいです。でもスーパーで鮮魚のブイヤベースセットとブイヤベースの素、野菜などをボジョレーヌーボーに合わせ試食販売をしたら300セットを完売しました。今まで作ったことがない、食べたことがないような商品でも売り方はあるんです。このように商品開発からプロモーションまで、お客様に好きになってもらうための努力のすべてがマーケティングといえます。
――最後に被災企業の方々にメッセージをお願いします
木村さん:被災して工場再開までに販路を失ってしまったということは、それまで売っていたものが、他社や他の商品でも代替が利く商品だったということです。今までは市場中心の流通で仕方がなかった部分もあると思いますが、「これからは違う」と頭を切り替えることが必要です。
また、あまりマクロで考える必要はないと思います。魚離れと言われますが市場が何百億円減少しても自社がプラスになればいい。それにはお客さんとの接点を絶えず考えることだと思います。
商談会で商談がまとまった段階のみで喜んではいけません。商品と消費者が出会うのはそこから先です。あなたの商品を買ってもらうことが一番肝心なのです。
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