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コラム復興水産販路回復アドバイザーコラム

第2回「小さな力の商品開発(私のコンセプト)」

五日市 知香 氏
今回コラムを書いていただいた方

株式会社パイロットフィッシュ

五日市 知香

専門分野

  • 商品開発
  • パッケージデザイン

商品開発の最近のキーワードは『健康と手軽さ』だと思います。
身体に良いものを食べたい、できれば 一工程(焼く、煮る、茹でる、揚げる、もっと簡単にレンジでチン)で手軽料理を作りたい、そういう消費者が増えています。
地方発の商品には、プラス『無添加(化学調味料不使用、保存料不使用など)』を望んでいる消費者が多いと思います。
例えば「健康と手軽さ」で言うと、野菜と酢が一度にとれる「ピクルス(野菜の酢漬け)」など人気です。また「万能調味料」も人気の高いジャンルになります。「万能調味料」があれば簡単に1品出来る、万能調味料を加えることにより…味に深みが出る、美味しくなる、マンネリの味から脱出、などが人気の理由です。

私が取り組みました陸前高田市 広田湾遊漁船組合の「牡蠣のバーニャカウダ」は、広田湾の牡蠣を使った「万能調味料」です。牡蠣の原型が残らない調味料には、通常は規格外の牡蠣を使いますが、漁師さんたちの「広田湾の美味しい牡蠣を食べてもらいたい、商品をきっかけに広田湾を知っていただきたい」という想いから《広田湾の牡蠣が一番おいしくなる4月の牡蠣、そして規格外ではなく形も味も良い牡蠣》をあえて使っています。牡蠣に麹菌を付け、発酵分解し、牡蠣の旨味を凝縮ペースト状にして他の調味料と合わせています。化学調味料不使用、保存料不使用。常温で賞味期限6ケ月の商品に仕上がりました。
温めた豆乳や牛乳200ccに牡蠣のバーニャカウダを小さじ2杯入れるだけで、クラムチャウダー風のスープになります。タコや白身のお刺身にも驚くほど相性がよく風味が増します。スティック野菜のソースとしてもとても美味です。パスタやソースの隠し味としても好評を得ています。ちなみに私のお気に入りは卵掛けご飯に牡蠣のバーニャカウダを醤油代わりに乗せることです。何杯でも食べられます。

広田湾遊漁船組合のみなさん
牡蠣のバーニャカウダ
(2016年岩手県ふるさと食品コンクール最優秀賞&一般来場者人気投票1位特別賞 W受賞しました)

牡蠣のバーニャカウダを商品化するにあたり、もっとも大事にしたことは、食べ方提案をしっかりしていくというコンセプトです。
消費者は興味があっても食べ方がわからないと購入まで結びつきません。今回はポケットに入るような小さいサイズのリーフレットを作成し、《商品へのこだわり、漁師さんたちの想いが伝わり、何よりも、簡単に料理ができる食べ方》を提案しました。

一般的な流通チャネルに乗せていくという手法ではなく、生産量も少ないため、「希少価値商品」として話題優先策をとりました。パブリシティ戦略で、「地元の若い生産者・広田湾の牡蠣・希少価値」に的を絞りリリースしました。話題として発信力があり、バーニャカウダという地方の漁師がなかなか手を出さない商品カテゴリーへの挑戦は地元メディアに大きく取り上げられました。
一般的な流通チャネルに流すには、掛け値を60%以下に抑えなければならない、そのためどこにでも卸すという考えをやめて、この商品を大切に扱ってくれる店に的を絞りました。お店側も、話題になっている商品を「自分のところに声をかけてくれた」と喜んでくれ、販売にも力を入れていただいています。

商品開発をお手伝いするうえで心がけているのは、どうしたら消費者、販売者、生産者に喜んでいただけるかです。開発するだけで、あとの流れは販売者の責任としてしまうのは無責任と常に考えています。さらには、できる限り「シンプル」に、消費者が理解しやすいように商品をわかりやすくすることも大切なことだと思います。

今回は、バーニャカウダを例にしましたが、商品を開発する際の姿勢としては、どんな製品にも通じることだと思いますので、ぜひご参考になさってください。

豆乳のスープ 牡蠣の旨味が溶け出したスープは、忙しい朝にもおすすめです。
湯葉パスタ ソースとして、隠し味として…。牡蠣の旨味を活かした新感覚調味料

※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。